マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

栃木県(01、実力)

2008年09月16日 | タ行
 白地図で都道府県名を当てるクイズで、栃木県の位置を当てるのは難しい部類に入るのかもしれない。宇都宮市も全国の県庁所在地の中で存在感が高い方とはいえないだろう。おまけに近年は「足利銀行の経営危機以来、景気の悪い栃木」というイメージが独り歩きしている。

 とんでもない。栃木は首都圏より北の東日本(北関東甲信越、東北、北海道)の中で唯一今世紀に入っても人口が増え横ガている県なのだ(2000~2005年の国勢調査で0.6%増)。宮城県や茨城県といった大どころが人口減少に転じた中、健闘ぶりが光る。

 栃木は工場もがんばっている。2000~2005年の工業統計を比較すると、工業出荷額増加率は9%にのばる(全国7位、東日本17都道県で1位)。

 工業従業者数は4%減だが、それでも減り方は小さい方から数えて4位(東日本1位)。港も空港も持たないが、日産グループなど加工組み立て型産業が多数立地。国際競争力を示す労働生産性も12位と全国上位にある。

 人口増加率が特に高いのが県北の那須地域。電気機械関連工場の旺盛な立地が続く。那須岳のすそ野には豊富な湯量と泉質を誇る温泉が点在し、サービスのよさでリピーターを集める施設が増える。新幹線の那須塩原駅から首都圏への遠距離通勤者はそれほど増えていないが、当地に菜園つきのセカシドハウスを構え、週末住民になる首都圏居住者が増えつつある。

 はやりの「KY」だが、「空気読めない」ではなく「空気読みすぎ」と訳したい。「栃木はどこも不況」という「空気」に、安易に付和雷同するのはやめていただきたい。

  (地域経済アナリスト藻谷浩介、協力・日本政策投資銀行地域振興部)
  (朝日、2008年04月26日)
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