マキペディア(発行人・牧野紀之)

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階級

2006年11月01日 | カ行
 1、階級とは特定の社会の人間集団を経済的な関係から考察し区分けしたもののことで、そのうちの根本的なものである。階級の下の分類に対しては階層という言葉がある。

 2、階級が純粋に現れるようになるのは資本主義社会であり、そこでは個人は経済力に応じて自由に自分の所属階級を変えることができる。

 3、身分とは主として封建社会の人間集団の分類であり、それは政治的・社会的な特権と結びついている。つまり人間の(人格的)平等、法の下での平等を前提しない社会のものである。個人は生まれによって身分が定められていて、身分を変えることは難しい。

 4、『社会科学辞典』(新日本出版社)は身分を「奴隷制や封建社会の秩序を維持するため人為的に固定化された社会的地位」とし、「根本的には階級関係に帰着する」としているが、目的を入れたりすること及び人為的という表現は不正確だと思う。「根本的には階級関係に帰着する」というが、「帰着する」とは「同じ」ということか、それともその「根本」に何かが加わっているのか、加わっているとするならそれは何かを論じていないのも拙いと思う。

   用例

 (1) 個々人は他の階級に対して共同の闘争をしなければならない限りでのみ一つの階級を形成するが、その他の点では諸個人は競争の中で再び互いに敵として対立する。他方、階級は逆に個人に対して独立的なものとなる。その結果人々は自分たちのこれらの生活条
件をば予定されたものとして見出し、自分たちの生活上の地位及びこれと共に自分たちの人格的な発展をば階級から指定されたものとして受取り、階級の下に包摂されてしまうのである。
  (マルクス『ドイツ・イデオロギー』、古在訳79頁)

 (2) 経済的諸関係はまず最初に国民大衆を労働者に転化させた。資本の支配はこの〔労働者に転化させられた〕大衆において共通の地位、共通の利害を生み出した。かくしてこの大衆は既に資本に対しては一つの階級〔自体的階級、潜在的階級〕である。しかし、自分自身に対してはまだ一つの階級ではない。我々がその諸局面をいくつか描写したにすぎない所の闘争の中でこの大衆は団結し、自覚的な階級〔顕在的階級〕になっていく。その大衆が守ろうとする利害が階級の利害となる。しかるに階級と階級との闘争は政治闘争である。
  (マルクス『哲学の貧困』第2章第5節)

 (3) ここで身分とは封建国家の身分、すなわち特定の制限された諸特権を持つ身分という歴史的な意味である。ブルジョアジーの革命は身分をその諸特権と共に廃止した。ブルジョア社会は階級しか知らない。従ってプロレタリアートが「第4階級」と呼ばれたのは全く歴史と矛盾したことであった。
 (マルクス『哲学の貧困』のドイツ語版第2章第5節へのエンゲルスの原注)

 (4) ここには階級と身分の区別の「一つ」が正しく指摘されている。すなわち、或る階級と他の階級との区別は法律上の特権にはなく、実質上の諸条件にあるということ、したがって近代社会の諸階級は法律上の平等を前提しているということが、それである。
(中略)
 ここには、ヨーロッパおよびロシアの歴史上で身分と階級とを区別するもう1つの標識が正しく指摘されている。すなわち、身分は農奴制社会の属性であり、階級は資本主義社会のそれである、ということが。(中略)身分とは反対に、階級というものは、個々の人間が或る階級から他の階級に移ることをつねに完全に自由に放置している。
 (レーニン『ナロードニキの空想計画の珠玉』、『全集』第2巻、458-9 頁)