1、「を」は主として格助詞だが、それにもいろいろな意味があります。それは辞書に書いてあります。
格助詞以外にも終助詞や接続助詞もあるようです。
しかし、ここでは他の助詞を使うべきではないかと思われる所に「を」がやたらに使われているのではないかということを問題提起します。
思うに、これは英文法で他動詞の目的語は「~を」と訳すと教えられていることを浅薄に理解した結果ではないでしょうか。
正しい用例
1, 印度更紗の窓かけを洩れる太陽は(谷崎『痴人の愛』3)
2, 誰も、ふたりを気にとめるひとはいない。
(1999,2,19、夕刊小説『ダブル』)
感想・ここは「誰も二人に気を止める人はいない」もあると思います。
3,1900年には、年間150台が生産されていたが、ロールス・ロイスが登場するのは、1904年を待たなければならない。
(伴野朗『霧の密約』107回)
感想・「1904年を待たなければならない」でいいと思います。
疑問のある用例
★「に」と言うべき所を「を」と言っている例
1-1, 農民たちが~摩擦音をことばの前後に付けるのを、学者たちは気づくべきであった。(井上やすし『私家版日本語文法』)
感想・「前後に付けるのに気づく」ではないでしょうか。
1-2, このときになって、ようやく、義清(のりきよ)は気がつい ていた。
あの、筝の音(ね)に魅(ひ)かれるようにして、地を這い、集まってきていたものたちが、いつの間にか筝の音の止むのと共に見えなくなっていることを。
(夢枕獏「宿神」)
感想・最後の「を」も「に」ではないでしょうか。「~に気がつく」ということは、「~に気(注意)がくっつく」ということだと思います。
2,〔或る女子アナはその手記で〕パジャマを着せられたことを憤慨し、アニメキャラクター衣装の超ミニスカートに泣きそうになったと告白する。(2001,05,08,朝日)
感想・「着せられたことに憤慨し」ではないでしょうか。
3,厳しい冬を堪える。
感想・「厳しい冬に耐える」ではないでしょうか。
4,首相は7日、記者団に対し、外相を注意したことを明らかにした。(2001,11,08,朝日)
感想・「外相に注意した」ではないでしょうか。
5,記して学恩を感謝する(『週刊読書人』1994,06,10)
感想・「学恩に感謝する」ではないでしょうか。
6,4月上旬に発表される日銀の短観を注目しており(1999,3,20,朝日)
感想・「短観に注目しており」ではないでしょうか。
7,その少女とは~で会い、胸などを触って1万5000円を支払い (2001,05,21朝日)
感想・「胸などに触って」ではないでしょうか。最近はセクハラ事件やワイセツ事件の報道が多いですが、それを読んでいますと、「女性の体に触る」は1割以下で、ほとんどが「女性の体を触る」となっています。
8,両親に結婚を反対された二人が(2001,5,26,NHK)
感想・「両親に結婚に反対された」ではないでしょうか。
9,なぜ日本による中国支配を米国が反対したのか
(2001,06,07,朝日, 入江昭)
感想・「中国支配に米国が反対した」ではないでしょうか。
10,このレースを勝ったのは堀井学で、35秒55だった。
(2001,08,13, 朝日)
感想・「このレースに勝った」、あるいは「このレースで勝った」ではないでしょうか。
11,教員たちを奢ったりしたのもその為であったのだ。
(筒井『文学部唯野教授』)
感想・「教員たちに奢ったり」ではないでしょうか。
12, 38歳の桑田真澄は巨人を自由契約になったうえで、米国でプレーすることを決めた。(2006年11月07日、朝日、西村欣也)
感想・昔は「米国でプレーすることに決めた」と言ったと思いますが。
★「が」と言うべき所を「を」と言っている例
1, 札幌の都市そのものを気に入った(1998,11,28, 朝日)
感想・「何々を気に入った」は今では当たり前で、誰もおかしいと思わなくなったようです。少し用例を挙げます。
2,エバンスさんは高校の日本語教師歴10年。観光旅行で日本を気に入り、帰国後に日本語を勉強した。(2001,05,14, 朝日)
3, 走馬充子を好きだ(『百年の預言』143 )
4,恋人のことを、ほんとうは、わたしはずいぶんと好きだった。
(川上弘美『センセイの鞄』)
★「の」と言うべき所を「を」と言っている例
1,残された家族は息子を英雄視されることに戸惑い
(2002,01,25,朝日)
感想・「息子の英雄視されることに」あるいは「息子が英雄視されることに」ではないでしょうか。
★「は」と言うべき所を「を」と言っている例
1,極端な例外を別として(NHK.R.02年6月号テキスト)
感想・「極端な例外は別として」ではないでしょうか。
★「と」と言うべき所を「を」と言っている例
1,わたしたちは現在、こういう考え方に対して即座に否を言うことができる。(竹田青嗣『意味とエロス』)
感想・「否と言う」ではないでしょうか。
2, 秋山がそこで行っているのは、正宗白鳥、小林秀雄、中村光夫といったこれまでの日本近代批評の中軸の築いてきた文学史的常識に、ノーを言うことである。
(朝日、2007年01月29日、加藤典洋)
感想・「ノーを言う」だろうか、「ノーと言う」だろうか。
格助詞以外にも終助詞や接続助詞もあるようです。
しかし、ここでは他の助詞を使うべきではないかと思われる所に「を」がやたらに使われているのではないかということを問題提起します。
思うに、これは英文法で他動詞の目的語は「~を」と訳すと教えられていることを浅薄に理解した結果ではないでしょうか。
正しい用例
1, 印度更紗の窓かけを洩れる太陽は(谷崎『痴人の愛』3)
2, 誰も、ふたりを気にとめるひとはいない。
(1999,2,19、夕刊小説『ダブル』)
感想・ここは「誰も二人に気を止める人はいない」もあると思います。
3,1900年には、年間150台が生産されていたが、ロールス・ロイスが登場するのは、1904年を待たなければならない。
(伴野朗『霧の密約』107回)
感想・「1904年を待たなければならない」でいいと思います。
疑問のある用例
★「に」と言うべき所を「を」と言っている例
1-1, 農民たちが~摩擦音をことばの前後に付けるのを、学者たちは気づくべきであった。(井上やすし『私家版日本語文法』)
感想・「前後に付けるのに気づく」ではないでしょうか。
1-2, このときになって、ようやく、義清(のりきよ)は気がつい ていた。
あの、筝の音(ね)に魅(ひ)かれるようにして、地を這い、集まってきていたものたちが、いつの間にか筝の音の止むのと共に見えなくなっていることを。
(夢枕獏「宿神」)
感想・最後の「を」も「に」ではないでしょうか。「~に気がつく」ということは、「~に気(注意)がくっつく」ということだと思います。
2,〔或る女子アナはその手記で〕パジャマを着せられたことを憤慨し、アニメキャラクター衣装の超ミニスカートに泣きそうになったと告白する。(2001,05,08,朝日)
感想・「着せられたことに憤慨し」ではないでしょうか。
3,厳しい冬を堪える。
感想・「厳しい冬に耐える」ではないでしょうか。
4,首相は7日、記者団に対し、外相を注意したことを明らかにした。(2001,11,08,朝日)
感想・「外相に注意した」ではないでしょうか。
5,記して学恩を感謝する(『週刊読書人』1994,06,10)
感想・「学恩に感謝する」ではないでしょうか。
6,4月上旬に発表される日銀の短観を注目しており(1999,3,20,朝日)
感想・「短観に注目しており」ではないでしょうか。
7,その少女とは~で会い、胸などを触って1万5000円を支払い (2001,05,21朝日)
感想・「胸などに触って」ではないでしょうか。最近はセクハラ事件やワイセツ事件の報道が多いですが、それを読んでいますと、「女性の体に触る」は1割以下で、ほとんどが「女性の体を触る」となっています。
8,両親に結婚を反対された二人が(2001,5,26,NHK)
感想・「両親に結婚に反対された」ではないでしょうか。
9,なぜ日本による中国支配を米国が反対したのか
(2001,06,07,朝日, 入江昭)
感想・「中国支配に米国が反対した」ではないでしょうか。
10,このレースを勝ったのは堀井学で、35秒55だった。
(2001,08,13, 朝日)
感想・「このレースに勝った」、あるいは「このレースで勝った」ではないでしょうか。
11,教員たちを奢ったりしたのもその為であったのだ。
(筒井『文学部唯野教授』)
感想・「教員たちに奢ったり」ではないでしょうか。
12, 38歳の桑田真澄は巨人を自由契約になったうえで、米国でプレーすることを決めた。(2006年11月07日、朝日、西村欣也)
感想・昔は「米国でプレーすることに決めた」と言ったと思いますが。
★「が」と言うべき所を「を」と言っている例
1, 札幌の都市そのものを気に入った(1998,11,28, 朝日)
感想・「何々を気に入った」は今では当たり前で、誰もおかしいと思わなくなったようです。少し用例を挙げます。
2,エバンスさんは高校の日本語教師歴10年。観光旅行で日本を気に入り、帰国後に日本語を勉強した。(2001,05,14, 朝日)
3, 走馬充子を好きだ(『百年の預言』143 )
4,恋人のことを、ほんとうは、わたしはずいぶんと好きだった。
(川上弘美『センセイの鞄』)
★「の」と言うべき所を「を」と言っている例
1,残された家族は息子を英雄視されることに戸惑い
(2002,01,25,朝日)
感想・「息子の英雄視されることに」あるいは「息子が英雄視されることに」ではないでしょうか。
★「は」と言うべき所を「を」と言っている例
1,極端な例外を別として(NHK.R.02年6月号テキスト)
感想・「極端な例外は別として」ではないでしょうか。
★「と」と言うべき所を「を」と言っている例
1,わたしたちは現在、こういう考え方に対して即座に否を言うことができる。(竹田青嗣『意味とエロス』)
感想・「否と言う」ではないでしょうか。
2, 秋山がそこで行っているのは、正宗白鳥、小林秀雄、中村光夫といったこれまでの日本近代批評の中軸の築いてきた文学史的常識に、ノーを言うことである。
(朝日、2007年01月29日、加藤典洋)
感想・「ノーを言う」だろうか、「ノーと言う」だろうか。