ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

契約社員は期間途中で解雇できない!

2017-12-23 12:59:31 | 労務情報

 「2018年問題」(脚注※1参照)を控え、多くの会社では、有期雇用従業員(いわゆる「契約社員」はもとより、いわゆる「パートタイマー」も大多数はこれに含まれる)の在り方を見直したことだろう。

 ところで、有期雇用契約に関しては、特に期間途中における解約について、一部に誤解されている向きも見られるので、ここで再確認しておきたい。

 有期雇用契約では、その期間途中における解約は、基本的には、雇われる側(労働者)が自ら退職することも、雇う側(会社)が解雇することも、どちらも許されない。
 とは言うものの、有期雇用従業員から本人の都合で退職したいと申し出が有った場合に、これを会社が認めないのは、現実的には難しい。それは、本人の意に反する労働を強制することになってしまう(日本国憲法第18条「苦役からの自由」および労働基準法第5条「強制労働の禁止」に抵触する)からだ。民法第628条に言う「やむを得ない事由」の有無を問う余地も無い。
 他方、会社が期間雇用従業員を解雇する場合には、労働契約法第17条により「やむを得ない事由」が、こちらは厳格に求められる。どのような場合が「やむを得ない事由」となりうるかは、裁判所は「整理解雇の4要素」(脚注※2参照)に準じて判断している(福岡高決H14.9.18等)ので、会社にとってはかなりハードルが高いと言える。

 これは契約社員に限る話かと思いきや、いわゆる正社員を新規に採用する際にも問題になることがある。
 例えば、雇用契約を「無期雇用。ただし3か月間の試用期間あり」とする代わりに、「3か月間の有期雇用。大過なく勤務したらその後は無期雇用」という条件で締結するようなケース。
 なるほど、後者のような契約ならば、その3か月が経過した時点で正式採用しないことが、前者の「試用期間付きの無期契約」よりも容易と考えられるかも知れない。しかし、反面、その3か月の間に従業員本人の問題で雇用を継続できなくなったとしても解雇しにくくなることは承知しておかなければならない。
 有期雇用契約はこのようなリスクも含有していることを理解し、安易に用いるのは避けたいものだ。


※1
「2018年問題」=2013年4月1日以降に開始した有期雇用契約は通算5年を超えると労働者が申し込めば無期雇用契約へ転換するため、それへの対応を企業が迫られている問題


※2
「整理解雇の4要素」= (1)人員整理の必要性、(2)解雇回避努力義務の履行、(3)被解雇者選定の合理性、(4)解雇手続の妥当性、の4項目。「整理解雇の4要件」とも呼ばれるが、すべて該当しないと認められない“要件”ではなく、これらを“要素”として総合判断に用いることから、近年では「整理解雇の4要素」と呼ばれることが多くなっている。


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