尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「ブレードランナー 2049」を見る

2017年11月12日 21時26分41秒 |  〃  (新作外国映画)
 「ブレードランナー 2049」を見た。これは見逃せない。ずいぶん前の前作「ブレードランナー」(1982)が大好きだったから。SF映画では「エイリアン」「ターミネーター」など、続編の方がヴァージョンアップして面白かった映画も多い。一体今回はどうなんだろう?

 「ブレードランナー」は、とにかく新しいものを見たという感じがした。1978年に「スターウォーズ」と「未知との遭遇」が公開され、SF映画も一般向けにヒットする時代になっていた。でも「ブレードランナー」はちょっと違っていた。アメリカでも日本でも公開当時はあまりヒットしていない。その後、だんだん熱狂的なファンが「発見」していって、代表的なカルト・ムーヴィーになっていった。僕は当時学生だったから、そもそもロードショーではほとんど見てないけど、名画座で何回か見たと思う。

 そういう意味では「ブレードランナー 2049」も一回見ただけで評価しちゃいけないのかもしれない。今回の映画に関しては、毀誉褒貶半ばというか、むしろ失敗という感想も多いのではないか。僕も全然とまではいわないけど、まあそれほど面白くはない感じがした。(そういう場合、僕は記事を書かないことが多いんだけど、この映画に関しては前作のファンは失敗作でも見に行くわけだから、書くことにする。)壮大な物語やセット、特撮なんかは見応えがある。

 でも最大の問題は長いこと。前作は116分、今回は163分。これはかなり長い気がする。エンタメ映画は2時間にまとめてくれないと、どこかで話がダレてくる。それと前作と時間が空きすぎて、話のつながりがちょっと判りにくい。世界的に観客層が高いという話だけど、前作に強い思いれを持つ世代には受けるということなんだろう。「エイリアン」も最近続編が作られたけど(未見)、続編を作りやすい映画とそうじゃない映画がある。設定の謎に面白みがある「ターミネーター」みたいな場合、前作を覚えている期間に続編を作ってくれないと困るわけである。

 前作は2019年のロス。人類のほとんどは宇宙に移住し、都市は高層のビルが立ち並んでいる。その世界では「人造人間」である「レプリカント」を奴隷として使っていたが、レプリカントは製造から時間が経つと感情が芽生え、人間に反乱を起こすようになる。それで「4年間」という寿命が定められたが、それを無視して人間世界に紛れ込もうとするレプリカントが相次いだため、警察に専任捜査官「ブレードランナー」が作られる。そして細かいことを省略して、ブレードランナーのデッカード(ハリソン・フォード)が秘書だったレイチェルと逃亡して前作が終わる。

 その意味では前作は謎を残して終わっているわけだが、今作にも終わりごろにハリソン・フォードが登場して前作の続きになってくる。でも、それまでの大部分は「新レプリカント」として「旧レプリカント」の「処理」を行うK(ライアン・ゴズリング)が謎を追う話になっている。その謎を追い続けていくと、デッカードとレイチェルの謎が浮上する。ここで取り上げられている問題、レプリカントに生殖能力があるのかという問題がかなり難しい問題で、一見するだけでは理解が大変な展開になっている気がする。

 大体、レプリカントはよく出来ていて、人間と見た目で区別ができない(という設定)。だから俳優がそのまま演じられるわけだが、そこで「あの人は実はレプリカントではないか」という問題が出てくる。その疑心暗鬼が映画の見どころにもなっていた。一方、今回は問題が高度化して、生殖の可能性という話になると、それは行き過ぎのような気がしてしまう。今回の話に関しては細かく書かないけど、なんだかどうでもいいような気が途中からしてくる。まあ僕だけかもしれないけど。

 思えば、前作の面白さは、近未来的な都市空間、特に日本語の看板が乱立するフシギなセットが大きかった。特に日本のファンはそうだったんじゃないだろうか。それ以後、このような映像に僕らは慣れてしまったことから、今回あまり新鮮味を感じないのかもしれない。環境破壊で荒廃した世界に住む人類という設定は、今じゃむしろありふれたものになってしまった。何しろ、前作の時点ではオーウェルの「1984年」どころか、アーサー・C・クラークの(映画ではキューブリックの)「2001年」も来てなかったのである。2019年なんか、果てしない遠くにあった。もう再来年ではないか。

 前作の監督リドリー・スコットは製作総指揮の一員に回り、監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ(1967~)が務めた。フランス系カナダ人監督で、今年公開された「メッセージ」などSF映画でも手腕を発揮している。書かなかったけど、SF映画としての面白さでは「メッセージ」の方が上回っているだろう。
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