尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「アウトレイジ 最終章」と北野武映画

2017年11月01日 22時48分35秒 | 映画 (新作日本映画)
 北野武監督の「アウトレイジ」シリーズ最終作の「アウトレイジ 最終章」が公開されている。作品的にはどうなのかなと思うところも多いけど、北野武監督の長年の活動に敬意を表して書いておきたい。「お笑いタレント」だと思っていた「ビートたけし」が、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」で俳優としてもすごいとビックリしたわけだが、ひょんなことから監督業にも乗り出し世界的な評価を受けるに至った。だけど、20世紀末の「キッズ・リターン」(1996)、「HANA-BI」(1998)が最高傑作で、21世紀になって作られた映画は作品的にも興行的にも今一つだった。

 まあ個人的には「DOLLS」や「アキレスと亀」などけっこう好きなんだけど、北野武監督がアートっぽく取ると興行的にこける。じゃあ「座頭市」(2003)や「龍三と七人の子分たち」(2015)なんかがいいかというと、僕にはやはり不満が大きい。そんな中で作られた「アウトレイジ」(2010)、「アウトレイジ ビヨンド」(2012)、「アウトレイジ 最終章」(2017)三部作は、多分この手の大型バイオレンス映画として、北野監督としてもだが、日本映画としても最後になるのかもしれない。

 〝Outrage”っていうのは、辞書を見ると「非道」「無法」あるいは「侮辱に対する激怒」って書いてある。もともと弱小暴力団の組長だった大友(ビートたけし)が使われるだけ使われて、最後には暴発していくという筋立ては共通している。「アウトレイジ」ほぼ関東最大の山王会の内部抗争を描いている。大友は死んだのかと思うラストシーンで終わるけど、「死んだはずだよ大友さん」だった。

 「アウトレイジ ビヨンド」になると、山王会に対して関西の花菱会が登場し、そこに警察の仕組んだ仕掛けで大友が登場する。この複雑な構図と殺害方法のバラエティで一番面白いと思う。やはり2014年のキネ旬ベストテン3位に選ばれただけのことはある。(まあ一作目も過小評価だったのではないかと思うが。)韓国系マフィアの大物、チャン・テソン(張大成)という人物が大友の後ろ盾として登場していた。「ビヨンド」のラストはえっと驚くものだったけど、その後はチャンの庇護のもとに入っていた。

 今回の「最終章」は済州島のリゾートで余生のように暮らしていた大友だけど、そこにトラブルが起こる。花菱会系列の花田ピエール瀧)が買春した女を傷つけてしまい、大友たちが出張ることになる。金で解決したはずが、花田はカネを払わず大友の部下を殺してしまう。日本に帰った花田は、相手が実は大物フィクサーのチャンにつながると知り大慌てで大金を持って東京へ向かう。それ以後、花菱会の内部抗争を描きながら、日本へむどった大友たちの復讐を描いていく。

 でも、まあやり過ぎと言いますか、もう最後だからか、ライフルを乱射するなどやり放題。「先の読めない」がウリだけど、もう前の2作を見てるから案外先が読める。花田という人物はシャブと振り込め詐欺で大儲けしてるとかで羽振りがいいけど、性欲を抑えられない人物でそれがアダになる。そこらへんも面白いと言えば面白いんだけど、やり過ぎ。花菱会の新会長は前会長の娘婿の元証券マンという設定はありえないでしょ。大友と手下の市川(大森南朋)だけが武器も豊富で無傷に復讐していく。

 だから前作に面白さは及ばないと思うんだけど、まあこの手のバイオレンスに拒否感がなければ楽しめる映画。北野武ももう70歳。それほど「体技」を披露できないのはやむを得ない。話がうまくできすぎなのは、エンタメ映画だからいいんだけど、達者な役者をそろえてる割りには演技合戦にならない感じだった。皆が期待しちゃうし、本人も大変だろうけど、僕は監督初期の「あの夏、いちばん静かな海」(1991)「ソナチネ」(1993)の頃の「静かで、変で、個人的な映画」に回帰して、好きなものを好きなように作って、まだまだ活躍して欲しいと思う。
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