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ミステリ感想-『犬坊里美の冒険』島田荘司

2006年10月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
弁護士の卵・犬坊里美が初めて手がけた事件は不可能犯罪!?
雪舟祭のさなか、衆人環視の境内に、忽然と現れ、忽然と消えた腐乱死体。残された髪の毛から死体の身元が特定され、一人のホームレスが逮捕された。
しかし死体はどこに消えたのか。被告人の頑なな態度はなぜなのか。
自ら担当を名乗り出た犬坊里美が、涙を力に変え不可解な事件に挑む。


~感想~
御手洗・吉敷シリーズと比べれば、筆致は圧倒的に軽い。検察の捜査はあまりにずさんで、絵に描いたような冤罪っぷりは無理がありすぎる。だがそれらはあくまでも、物語を解りやすく見せるためのもの。
新たなるシリーズ主人公として立ち上がった犬坊里美は、なにかといえばすぐに泣くし、捜査は遅々として進まないあげく、恋に捜査に観光にと忙しい。語尾はあいかわらず間延びして、緊迫感も伝わらない。だが、読み進むうちになぜか応援してしまうのが島田マジック。
軽妙な物語に見合って(?)真相は一歩間違えばバカとしか言いようのないトンデモトリック。とはいえこれを軸に法廷ミステリをしっかりと組み上げ、隠された動機や事情にさらりと悲哀を仕込むのはあいかわらずの巧さ。
あからさますぎるハッピーエンドもご愛敬。御手洗抜きでこれだけのミステリを見せてくれたらもう脱帽するしかない。
イラッときたらはまってる証拠です。


06.10.26
評価:★★★☆ 7

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