小金沢ライブラリー

天祢涼→飛鳥部勝則→新刊 ~SCP-1432

ミステリ感想-『黒と愛』飛鳥部勝則

2018年02月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
亜久直人は幽霊に怯える友人に頼まれ、心霊番組のロケハンに同行し、奇傾城を訪れる。
悪魔的な趣味に彩られた城内で、撮影隊の一人が密室で首を切られて殺される。
犯人は復員兵の幽霊なのか?


~感想~
全作読んでないがたぶん作者の集大成。
冒頭1ページ目、いきなり瀕死の少女が軒先に転がるが、家主の男は意に介さず帰って寝ようとするホットスタートを切る。
その後も隙あらば幽霊や怪人が顔を出し、伏線かどうかも怪しい怪異譚が次々と語られ、登場人物はたいがいが一人や二人は殺しているだろう狂人揃い。
密室殺人の犯人はあっさり指摘され、すぐさま犯人視点で過去編が始まり、やべえ少女と互角以上にやべえお友達らの超やべえ日常が語られ、現在に戻るとお待ちかねの現物が全員集合しバトルロワイヤルを繰り広げる。
終盤にはどんでん返しというか、はっきり言えば「台無し」な展開が4回くらい重なり、ただでさえ飛鳥部勝則を読もうという鍛えられた読者をさらにふるいに掛けるような、全く手加減なしのイッツ・ア・飛鳥部ワールドで終始ニヤニヤしながら読んだ。

あの「堕天使拷問刑」よりもさらに作者の趣味を全開にした変態小説……いや怪作だが、豪快なトリックあり、巧みな誤導ありとミステリとしてももちろんのこと優れている。
さらには先に刊行された「ラミア虐殺」の姉妹編でもあり、後日談としても楽しめる。しかもこの両作はとある特殊な構成から、どちらを先に読んでも双方でネタバレを踏んでしまうという面白い関係にあり、個人的には「ラミア虐殺」を先に読むことを勧めるが、「黒と愛」を先に読んでも全く問題はないだろう。どちらも入手困難なのは問題であるが。

ミステリ的には「堕天使拷問刑」に軍配を上げるものの、やりすぎ具合と個人的な好みでは「黒と愛」の方がだが、どちらも甲乙つけがたいところ。ともあれ作者のファンならば絶対に読むべき渾身の一作である。


18.2.22
評価:★★★★ 8
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9/27のNXT #413  皆まで言うな

2018年02月21日 | 今週のNXT
オニー・ローキャン ×-◯ ラーズ・サリバン
(スパインバスター)

ローキャンはガチビンタやアッパーカットでサリバンをふらつかせるがダウンは奪えず、場外への走り込んでのプランチャも受け止められ、豪快なスパインバスターで仕留められた。

サリバンは試合後もローキャンを襲おうとしたがダニー・バーチが駆けつけ無事に逃がした。


ヘビーマシーナリー(タッカー・ナイト&オーティス・ドーゾビッチ) ◯-× デミトリアス・ブロンソン&パトリック・スコット
(コンパクター)

ブロンソンは元NFL。スコットはプロレスwikiにはレオン・スコットと書かれていたが別人。
マシーナリーが弄んだ挙句にコンパクターで押しつぶし、ナイトが二人まとめてフォールした。


リヴ・モーガン ◯-× ヴァネッサ・ボーン
(コードブリーカー)

ヴァネッサのラフファイトに苦しめられたリヴだが、最後は8割くらいコードブリーカーな新必殺技で快勝した。


カシアス・オーノ ◯-× ファビアン・アイクナー
(ローリングビッグブート)

デビュー戦のアイクナーはクルーザー級クラシックにも参戦したイタリアン。
パワー系の見た目からは想像もつかない身軽さで、宇宙人プランチャで観客の心をつかむと、ロープからロープへ飛び移ってのムーンサルトや、見た目通りの怪力も披露。
だがここはオーノに一歩及ばず、新必殺技?で蹴り倒された。


・カイリ・セイン特番デビューへ

メイ・ヤング・クラシックを優勝したカイリ・セインこと宝城カイリが、次回特番で行われるNXT女子王座決定フェイタル4ウェイ戦へ出場することが発表された。


エリック・ヤング ×-◯ アダム・コール
(ニープラス)

特番でやってもいいような豪華カードが実現。
他の試合が押したのか残り放送時間が7分無い中でゴングが鳴り、ヤングはアダム・コール・ベイベーを皆まで言わせず殴り倒し、両者譲らず互角の戦い。
最後はトップロープに上がったヤングが、リングに横たわるコールではなく場外で乱闘するセコンドたちにプランチャで飛びかかり全員をなぎ倒すも、リングに戻った瞬間に飛び膝蹴りを叩き込まれ、コールに軍配が上がった。
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9/20のNXT #412  意外!それは髪の毛ッ!

2018年02月20日 | 今週のNXT
ジョニー・ガルガノ ◯-× ティノ・サバテリ
(ガルガノ・エスケープ)

前回ガルガノを圧倒して見せたリディック・モスの相方と対戦。
サバテリはビンタや突き飛ばしで挑発してガルガノの隙を作り、数少ない持ち技で攻め立てたものの、挑発に夢中でスーパーキックを被弾すると必殺技で絞め落とされた。
ヒール組なのに前回のモス戦に続き、セコンドが一切手出ししないのはなぜだろう。


レイシー・エヴァンス ×-◯ ビアンカ・ブレア
(アーリウープ)

未勝利同士の一戦。ぱっと見フェイスのビアンカがヒールに振る舞い、痴女みたいな衣装のレイシーにラフファイトを展開。
ビアンカは大柄なレイシーを軽々と担ぎ上げ、レイシーはそれなりの打撃を披露。
最後はビアンカが地面に着くほど長いお下げを振り回して腰を鞭打ち、ビッグショーが使っていたアーリウープで叩きつけ初勝利を挙げた。


・アリスター・ブラックが初演説

これまでインタビューにすら登場しなかった(と思う)ブラックがスーツ姿で現れマイクアピール。
そこにベルベティーン・ドリームが割り込み喧嘩を吹っ掛けた。


ノー・ウェイ・ホセ ×-◯ ラーズ・サリバン
(スパインバスター)

遺恨決着戦だがホセはサリバンからダウンすら奪えず、トップロープからのダイビング・ヘッドバッドを被弾し、高々と抱え上げてのスパインバスターでとどめを刺された。


タイラー・ベイト&トレント・セブン ×-◯ ボビー・フィッシュ&カイル・オライリー
(STO+ドライビングエルボー)

師弟タッグはセブンが長時間にわたり捕まる苦しい展開。オライリー組はスーツ姿でセコンドに付いたアダム・コールを交えて連携を繰り出し、交代したベイトにもオライリーがブレーンバスターで担ぎ上げたところにフィッシュが脳天蹴りを浴びせる絶対痛いけど地味なツープラトンを喰らわせるが、ロープに逃げられる。
セブンはオライリーをハーフボストンクラブに固めるが、コールがエプロンにいたベイトを蹴り倒すと万事休す。
最後はオライリーのSTOにフィッシュのドライビングエルボーを合わせるツープラトンでセブンが仕留められた。

試合後、ドリュー・マッキンタイアが現れるとコールら三人は逃げ出したが、SAnitYに待ち伏せされ手痛い報復を受けた。
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ミステリ感想-『希望が死んだ夜に』天祢涼

2018年02月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
巡回中の警官が首を吊った女子中学生の遺体を発見。現場から逃げ出そうとした同級生の冬野ネガは殺害を自供するが、動機は黙秘する。
捜査一課の真壁は、生活安全課の女性刑事の仲田とともに捜査を命じられ、冬野ネガが貧困に喘いでいたことを知る。成績優秀で人気者だった被害者と、内気で孤独だった彼女の接点とは?


~感想~
終盤、ミステリとしてはいたって正しいのだが「葬式組曲」のアレのような、ある意味で台無しな展開に吹いた。それを伏線に使うなそれをww 確かに書いてたけども!
ミステリ的にはよくある真相と結末なのだが、それをこの設定と物語で描いてしまうとこんなことになってしまう。察するに余りある、最悪に最悪を重ねたような結末を迎えたあるキャラには、作中人物ながらさすがに同情を禁じ得ない。事件は終わっても関係者の人生は続く。たとえそれがどんなに残酷な結末でも。いやあ、どうなっちゃうんだろうね、この先の人生。

各種ランキングには全く引っ掛からなかったが、おそらく読者の心には何年経とうが何かが確実に引っ掛かるだろう作品である。


18.2.17
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『いくさの底』古処誠二

2018年02月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ビルマのある村に駐屯した日本軍。
村長と親交のあった指揮官が、その夜のうちに何者かに殺される。
将校待遇の通訳として同行する依井は、のどかに見えた村の裏に潜む闇を探る。

2017年このミス5位


~感想~
メフィスト賞でデビューし、二作目で本ミス6位、三作目で本ミス4位に輝き将来を嘱望されるも、出版社と何かあったのか著作を残らず改題して他社から文庫化し、それ切りミステリからも離れ戦争小説ばかり書いていた作者が、久々にこのミスにランクイン。
だがあの古処誠二がミステリ(寄りの)作品を書いた!という喜びは大きいが、個人的にはそこまで楽しめなかった。
というのも動機に関わるある事柄が、ろくにこの時代に知識がなく、逆に戦国時代や三国志に詳しい身からすると、これはそれほど大ごとなのだろうかと疑問に思えてしまったり、知識が乏しいのを棚に上げて、そういうことなら先に言っておいて欲しかったと思えてしまい、肝心要の場面で大きく首を傾げる事態になってしまったのだ。
とはいえ完全にこちらの知識不足による失態なので、文句を言うのは筋違いである。
実にミステリらしいトリックが仕掛けられているのだが、それがこの時代ならではの、この時代ならば有り得ただろう物語として成立しており、これまで作者の戦争小説を追いかけてきたファンならば、おそらく十全に楽しめることだろう。


18.2.13
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『ぼくらの時代』栗本薫

2018年02月12日 | ミステリ感想
~あらすじ~
栗本薫は22歳、某マンモス私大の3年生。アルバイト先のTV局内で発生した女子高生連続殺人事件を、ロック・バンド仲間の信とヤスヒコと解決しようと挑むーー。当時の若者たちの感覚や思考を背景に、凝った構成と若々しい文体によって、シラケ世代とミーハー族の心の断面をえぐった江戸川乱歩賞受賞作。
※コピペ

1978年乱歩賞、文春1位、東西ベスト(1985)94位、本格ベスト38位


~感想~
あらすじには伊坂幸太郎「重力ピエロ」に冠された「スタイリッシュ・ファミリー小説」くらい恐ろしい惹句が並んでおり、実際に「○○チャン」「どうすンだよォ」「何もねェのョ」「なんなのョ」という恐ろしい口調のキャラが約一名いるし、おっさんとガキが憎悪と感情剥き出しで青臭く罵り合う場面もあるが、ミステリとしてはなかなかの佳作であった。

まずTV収録中に客席で背後から刺されるという衆人環視下の密室じみた事件が起こり、つかみは抜群。
後半にも堅牢な密室が現れ、どちらも解かれてみればシンプルきわまりない、ゆえにわかりやすくも納得の行く真相であり、事件全体を貫く動機は大概だが、事前にミステリ界で一、二を争いかねない壊滅的に酷いダミーの動機が出てくることもあり、それよりはだいぶマシであった。
とんでもないネタバレのある文庫版解説ではその新鮮(らしい)な筆致を褒められているが、2018年現在からすると言うまでもなく古臭い文章であり、総じて古き良きミステリの域は出ないが、そこは未来の超売れっ子作家の栗本薫、読んで損するはずもない、誰しも一定の満足感は得られるだろう佳作である。


18.2.10
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『サハラの薔薇』下村敦史

2018年02月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
考古学者の峰はエジプトの墳墓から石棺を発見するが、中のミイラは古代人ではなく死後数ヶ月ほどの死体だった。
盗掘団の仲間割れの結果かと思われるそのミイラも盗難に遭い、失意のままパリに移動しようとした峰の乗る飛行機が墜落。そこは見渡す限り砂の大地が広がるサハラ砂漠であった。


~感想~
他の作家の作品と比べるのは愚の骨頂ながら「ここ十年で最高の徹夜本」とか「まるでハリウッド映画」などと煽られると、どうしても高野和明「ジェノサイド」を真っ先に思い出し比べてみたくなってしまうのだが、結論から言うと「ジェノサイド」のボロ勝ちであった。

とはいえ佳作ではある。展開は目が回るほど早く、砂漠でのサバイバルあり、銃弾の飛び交うアクションあり、エロいヒロインとのロマンスありと、たしかにハリウッド映画を意識したような冒険活劇で、一介の考古学者に過ぎず、屈強な若者でもない主人公が銃撃されても「たかがメインアームをやられただけだ」と意に介さず元気いっぱいに戦い続けるのは不自然ながら、サバイバルの同行者は全員が秘密を抱え一癖も二癖もあり、物語の裏には陰謀と社会派なテーマが潜みと、最後まで読者を引きつける。
十年、いや二十年に一作レベルの「ジェノサイド」と比べるのはさすがに酷だが、一息に読ませる力のあるエンターテイメント作品であろう。


18.2.7
評価:★★★ 6
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SCP-1281~1290

2018年02月06日 | SCP紹介
SCP-1281 - The Harbinger (さきがけ)
海王星軌道で発見された機械生命体。他の星から13億年前に宇宙へ旅立ったと思われる。メッセージを託し活動停止し、担当博士は過度の感情移入により処罰された

SCP-1282 - Reverse Were-Rabbits (人間兎)
5羽の兎。満月の夜に屋外にいると人間の猟師に変身し、重点的に兎を狙い狩りをする。特につがいの相手や自分の子供を狙う傾向にある。猟師になっている間、5羽はお互いの正体を認識出来ず、兎の時の記憶は保持していないと見られるが、兎に戻った際に一部の記憶が残るのか鬱状態に陥る

SCP-1283 - Radio Panic (ラジオ・パニック)
1930年代の古いラジオ。電力が無くても起動し15分以上聴くと、両親や配偶者といった最も信頼を寄せる人物からの呼びかけが聴こえる。「●●を覚えている?」という何気ない問いかけから始まり、次いで悪い予言とそれを回避するための方法が指示される。いずれも脈絡の無い内容だが聴取者はそれを無条件に信じ込み、半ばパニック状態になりながら指示に従う。指示を達成すると落ち着き、パニック時の推論能力が上昇するが、達成出来ないと極度の混乱に陥る

SCP-1284 - The Moon's Child Bride (月の幼き花嫁)
「我が君の花嫁」を名乗る少女。満月の夜に月光を浴びると四肢が分離して兎に擬態した生物となり、周囲の生物を捕食する。重量が6.2kgに達すると分裂して2体に増え、8体のうち1体が元の身体に戻り、自身を食べさせ四肢を再生させる。少女は「我が君による花嫁の為の饗宴」と話し、初潮を迎えると出血が止まらなくなり失血死する。その後、人口1000人未満の農村で暮らす2~5歳の女児1名が新たな「花嫁」となる

SCP-1285 - The Wooden Movie Prop
未翻訳

SCP-1286 - Sad Man (サッドマン(悲しい男))
核爆弾ファットマンのレプリカ。不機嫌な顔の男が描かれ、ダクトテープで貼り付けられたスピーカーを通して喋る。人が接近すると自身が爆発しなければならないことを訴え身体を揺する。周囲の人々の目は引き付けられ、激しい恐怖を感じる

SCP-1287 - Closure (かなしまないで)
触れた人物の同意を得て失踪者に変化させる石碑。その人物は失踪者としての人生を歩み始め、失踪者の家族等はそれに疑問を覚えない。石碑内部から発見された製造者と思われる人物の死とともに能力は失われた

SCP-1288 - Timely Encouragement
未翻訳

SCP-1289 - Charon's Obol (カロンのオボルス銀貨)
起源不明の古びたコイン。不定期に跳ね上がり空中で高速回転する。地面に落ち表が出ると、世界に影響を与える人物の生を示し、裏が出るとその死を示す。またその人物を象徴する言葉が新たに現れる

SCP-1290 - Imperfect Teleporter (未完成テレポーター)
試作型のテレポーテーション装置。コロンビアからシンガポールへ物体をテレポート出来るが、速度を保持したまま瞬間移動するため、シンガポールの装置には秒速930mで東へ直進しながら現れ甚大な被害をもたらす
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ミステリ感想-『ワイングラスは殺意に満ちて』黒崎緑

2018年02月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
高級レストラン「フィロキセラ」のワインセラーで発見された評論家の死体。
その日の夜に雑誌取材のため訪れる予定だった被害者が、なぜ?
警察はソムリエの富田香ら従業員に疑いの目を向ける。

1989年文春10位、サントリーミステリー大賞 読者賞


~感想~
今やミステリ作家としてよりもWWE愛好家として著名で、いつの間にかWWEも離れゴルフ愛好家になっている作者のデビュー作。
登場人物はいずれもユーモアミステリの住人で、殺人事件よりもワインが割られたことを嘆いたりと、ギャグというか軽口が延々と繰り広げられ、そこにワインや料理のうんちくがちりばめられており、肩の力を抜いて気楽に読める。
ミステリとしては探偵不在で敵失によって妥当な犯人が明らかになるのが残念だが、そもそもこの新人賞はドラマ化を前提としたものであり、笑いあり恋あり殺しありの2時間サスペンス原作としては十全の出来栄えであることは疑いない。

また作品自体はいたって普通ながら、文庫版解説の有栖川有栖が絶好調で、端的に言って超キモく、ある意味で一読の価値があることも付記しておく。


18.2.1
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『肖像画(ポートレイト)』依井貴裕

2018年01月30日 | ミステリ感想
~あらすじ~
人気ミステリ作家の片倉弥冬の別荘に招かれた多根井理と富岡秀之。
弥冬の姉妹はそれぞれ音楽と絵画に才能を示し、亡き末妹の史織はその全てに秀でていたという。
まるで史織の亡霊が肖像画から抜け出したように、不可解で陰惨な連続殺人事件の扉が開く。


~感想~
あるミステリの技法の限界に挑んだような意欲作。
その技法が何かを明かすと即ネタバレになってしまうのだが、ただでさえ「名前くらいは聞いたことあるかも?」というマイナーな技法の、その限界に挑むという苦行じみた試みはもはや職人芸に近く、ミステリマニアなら必読とすら言えるだろう。
また技法自体はマイナーながらその内容はごく単純であり、精密機械のように張り巡らされた伏線の山と、怒濤の伏線回収にどんでん返しの嵐は、マニアならずとも楽しめるはず。

ただし小説としての完成度は著しく低いと言わざるを得ない。
ただ伏線を張るためだけに交わされる会話は超不自然だし、ボンクラと評されていたはずのある人物の記憶力はギネス級になっており、警察は度重なる殺人事件にも関わらず一通りの捜査を終えるや総員撤収してしまい、次なる犯行を未然に防ごうとする意志が全くない。見張りを置け見張りを。
解決編の怒濤の伏線回収は素晴らしいが、あんまり推敲していないのか余計な説明や繰り返しが煩雑だし、聞き手の富岡が謎の頭痛に苦しむのも意味不明。

だがそういったツッコミは本格ミステリにおいては野暮というものだし、依井貴裕に我々が求めているのはこういう作品である。
例によって入手困難だが、図書館や好事家の手を借り、ぜひ純度120%の濃縮本格ミステリの超絶技巧をお試しあれ。


18.1.29
評価:★★★☆ 7
コメント (2)
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