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壊憲記念日

2015-05-03 | 時評

今日は憲法記念日と呼ばれる祝日であるが、今年以降、もはや「憲法記念日」は存在しないと思うべきだろう。手始めの今年は「憲法記念日」改め「壊憲記念日」だ。

今年は先般の日米首脳会談を機に安保ガイドラインが改定され、それに合わせた集団的安保関連法制の制定も予定されている。これにより、すでに形骸化が進んでいる憲法9条は他の憲法条項に先んじて事実上廃止となるに等しい。

伝統的な護憲運動も今年を最初の山場と見て、安倍壊憲政権と“対決”し、護憲のシュプレヒコールを強めるだろう。筆者はそうした伝統的な護憲運動の意義を否定するものではない。同時に、そうした運動の限界性も認識している。

現在の安倍政権は衆参両院で圧倒/安定多数を掌握する独裁―と言って悪ければ―独占政権であるから、断片化した野党や議会外の異議申し立てに耳を傾ける意思などないことははっきりしているからである。

このような状況下では、糾弾の身振りよりも分析と予測が効果的と考える。まず今年は壊憲元年である。“解釈”の名において、最大標的である9条を事実上廃止する。現行憲法最大の目玉である9条が壊されれば、まさに失明に等しいダメージが現行憲法に加わる。

しかし、このまま直ちに文字通りの9条改定に突き進むことはないだろう。正式の改憲は今年以降、年単位で以下のような大きく二つのフェーズに分けて進行されると読む。

フェーズ1は、改憲手続規定(96条)の緩和と「新しい人権」(環境権やプライバシー権)の追加である。これを最初の突破口とするのは、「新しい人権」の追加については、世論調査でも比較的賛成者が多いからである。

改憲手続規定の緩和はフェーズ1から来ると予測するが、その理由は、最大の山場となる9条改定を含む次のフェーズ2で改憲手続規定の緩和を抱き合わせると、フェーズ2では否決される恐れがあるからである。

フェーズ2で、おもむろに9条改定と人権広汎制限条項等の論争的な改定に手を付ける。フェーズ1は部分改憲であったのに対し、フェーズ2が「本番」の全面改憲である。それだけに改憲戦略にとっても正念場であるが、フェーズ1で改憲手続規定が衆参各院過半数+国民投票に緩和されているので、少なくとも国会は通りやすい公算で、関門は国民投票だけとなる。

以上のような二段階改憲戦略のポイントは、フェーズ1の「新しい人権」という餌で国民を釣って、改憲本番であるフェーズ2に誘い込もうという仕組みである。

この罠を避けるためには、フェーズ1の餌に食いつかないことである。入り口のフェーズ1で否決されることは、改憲戦略にとってかなりのダメージとなり、しばらくは改憲を発動できなくだろう。


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