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9条安全保障論(連載第17回)

2016-09-08 | 〆9条安全保障論

Ⅵ 恒常的軍縮政策

一 防衛救難隊の創設

 統合自衛隊を軸とした「過渡的安保体制」は、文字どおり「過渡的」な体制であり、9条が未来時間軸として示す未来的非武装世界の実現へ向けた不断の軍縮政策が並行的に展開されなければならない。その点、現行の陸海空三自衛隊を合わせた総員25万人近い体制は、海上―航空部隊を中核に少数精鋭の陸上特殊部隊を含めた統合自衛隊に再編することで、半分近くまで削減することが可能であり、これが「過渡的安保体制」の出発点となる。
 その際、削減(実質的な廃止)の主たる対象となるのは、現行体制では最大の15万人に及ぶ陸上自衛隊である。陸自削減に当たっては、一部は陸上特殊部隊に移管するとして、残余は前回見た「国際平和維持待機団」及び今回取り上げる「防衛救難隊」に転換することができる。

 従来、自衛隊は災害救難を本来任務としてしないにもかかわらず、災害救難に動員され、成果を上げてきたことが、自衛隊の社会的な認知・評価につながってきたことは、否定できない。特に2011年の東日本大震災時、10万人に及ぶ自衛隊員を救難活動に投入したことは、しばしば美談的に称賛されてきた。
 しかし実のところ、総員の半数近い隊員が本来任務を離れていたことになり、防衛上は極めて危険な機能低下状態にあったことも直視しなければならない。そこで、自衛隊とは別立ての救難活動専従組織として、「防衛救難隊」が構想されるのである。
 ここに「防衛救難隊」とは、自衛隊並みの軍事的なレスキュー技術を備えた特別な救難隊であり、言わば現行自衛隊の救難機能だけを独立させたものと考えることができる。その管轄は自衛隊とは別立てながら防衛省が担当するので、「防衛救難隊」をその名称とする(以下、防救隊と略す)。そのため、防救隊は防衛そのものに従事することはないとはいえ、その最高指揮官も自衛隊と一括して内閣総理大臣とするのが簡明であろう。 

 防救隊は、自治体消防や警察のレスキュー隊では対処し切れない大規模災害等の発災時、内閣と被災都道府県知事の合意に基づいて派遣され、現地で救難活動に従事する。また有事に際しても、抗戦任務を優先して市民の避難・救難が後手に回りやすい自衛隊とは別働で自衛隊並み技術を持つ防救隊が自衛隊と連携しつつ避難・救難活動に専従することは、市民の生命・身体の保護に寄与するであろう。
 防救隊の規模は予備隊員を含め、現行陸自に匹敵する12‐13万人程度とし、医官や看護官から成る医療衛生部隊も備え、派遣現地では避難所等での第一次的な医療・看護活動にも従事する。また重症者を集中治療する目的で、各地に救急医療専門の防救隊病院機構を設立し、平時から高度救命救急病院として運営することも考えられてよいだろう。 


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