金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(どうしてこうなった)13

2024-02-18 10:00:00 | Weblog
「ここで何をしておる」
 荒げた物言いで、恰幅の良い男が本営に入って来た。
供回りは六名、それらは近衛の制服。
恰幅の良い男は貴族の装い。
男の態度から推し量ると近衛の文官、それも高位の。
これは、・・・誰っ。
俺を手伝ってくれている侍従からの耳打ち。
「近衛の長官です」
 ほほう。
近衛の最高位にあるのは二名。
文官の頂点である長官。
武官の頂点である元帥。
その二頭体制で近衛軍を動かしていた。
国軍、奉行所共に同様の体制。
これは武力を持つ組織の共通の、制御する為の仕組みとも言えた。

 俺は長官を手招きした。
「こちらへどうぞ、僕が説明します。
・・・。
僕はダンタルニャン佐藤伯爵です。
今回、王妃様から口頭で、イヴ様の警護を命ぜられました。
本来ならイヴ様の警護だけで、この様な事には関わりません。
ところが、管領がイヴ様を取り押さえようとした。
これは異常事態、いえ、非常事態とも言えます。
にも関わらず、近衛も国軍も動きがない。
おかしいですよね。
そこで僕がお節介を焼いている訳です」

 俺は手で椅子を指し示したのだが、長官は鼻息が荒い。
着席を拒否し、上から俺を見下ろした。
「子供がふざけるな、直ちにここを解散しろ。
王宮を含めた内郭は近衛の管轄だ、我等が受け持つ」
 長官は言い終えると僕を睨み付けた。
僕は相手には合わせない。
優しい物言いを心掛けた。
「管領の暴走を傍観していた貴方方には任せられません。
信用がならないのです。
早い話、管領に協力したのではないか、そう思っています。
理解して頂けたら直ちにお引き取りを。
・・・。
王妃様が帰られたら呼び出しがあるでしょう。
それまでは謹慎していて頂きたいのですが」

 長官の供回りの者達の表情が変わった。
自覚しているようだ。
俺や長官から視線を逸らした。
しかし、長官は違った。
テーブルに両手をつき、俺を威嚇した。
「貴様、何様のつもりだ」
「はあ、俺様ですが、何か」
 長官が真っ赤になってテーブルを叩いた。
バンッ。
「ふざけるな」と。
 ついでに額の血管が破れれば良かったのに。
惜しい。

 遅れて、俺を手伝っている者達の多くが咳込む。
肩が激しく揺れ動き、書き物の手が止まった。
笑いを堪えているとしか思えない。
何が・・・、どこが受けたのだろう。
 それはそれとして、俺は長官への対処法を考えた。
俺を手伝っている武官達は近衛に所属する者達。
彼等には荷が重いだろう。
となると、・・・。

 俺はうちの護衛に命じた。
「この男を捕えろ。
抵抗すれば怪我させても構わん。
間違えて殺しても、それはそれで仕方ない。
この程度ならお替わりは幾人も居る」
「「「はい」」」
 良い返事だ。
躊躇いがない。
俺の背後に控えていた三名が一斉に動いた。 

 うちの執事長、ダンカンが薦めた屋敷詰めの騎士三名。
ユアン、ジュード、オーランド。
普段の訓練の様子は見知っていたが、実戦でも中々のもの。
隙のない立ち回りを見せた。
指示役はユアン。
「ジュードは供回りを牽制。
オーランドは長官を捕えろ。
俺は控えに回る」
 ジュードが腰の長剣を抜いて、長官の供回りの者達に剣先を向けた。
彼等を剣先と視線で牽制した。
警告も忘れない。
「邪魔すれば斬る」

 オーランドが素手で長官に立ち向かった。
長官は文官ではあるが、武芸は貴族としての嗜み。
平民に比べれば、ある程度は動けた。
腰の長剣を抜こうと、手を伸ばした。
 それを見たオーランドだが、恐れる様子は微塵もない。
懐に飛び込んでショルダーアタック。
勢いのままに頭突き。
長剣を抜く暇を与えない。
面食らう長官の顎に、腰を綺麗に回転させて肘打ち。
極まった。
長官はその場に崩れ落ちた。
気絶のようだが、オーランドは容赦がない。
身体に蹴りを入れて転がし、俯せの頭を踏み付けた。

 控えのユアンは、長官とその供回りの者達、その双方を視界に入れ、
長剣を抜いて遊撃として備えた。
が、機会は巡って来なかった。
残念感一杯で、オーランドに指示した。
「身柄を確保しろ」

 俺は三名に命じた。
「ここには生憎、貴族用の牢がない。
代用として表の庭木をそれとする。
表の庭木に縛り付けろ。
出来るだけ太い庭木だ。
失礼のない様にな」
 口からすらすら出た。
意味が分からない。
たぶん、疲れもあるのだろう。
俺は俺が怖い。
額に手を当てた。
そんな俺を見兼ねたのか、
控えていた執事のスチュアートに言われた。
「少々お休みになっては」
 周りの者達の俺に注ぐ目色も似た様なもの。
残念だが、俺は頑張り過ぎたようだ。
でも休む前に、決着を付けよう。

 俺は気を取り直した。
表に運び出される長官を余所眼に、長官の供回りの者達を見回した。
彼等は大人しいもの。
職分で長官に従っているだけなのだろう。
そんな彼等に尋ねた。
「君達のうちで最も上位の者は」
 互いに顔を見合わせた。
そして、結果として一人に視線が集中した。
武官上がりの様な厳つい顔と体躯。
その者が口にした。
「階級は少将です。
長官に執務室の取り纏めを命ぜられています」
「それでは君を臨時で、長官代理に任命する。
これより近衛全体を取り纏めて欲しい」
 周りの大人達は理解が早い。
指示なしでもテキパキと仕事をした。
任命書を発行し、彼の補佐として、侍従の一人を付けた。

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