金色銀色茜色

生煮えの文章でゴメンナサイ。

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昨日今日明日あさって。(幼年学校)71

2018-09-23 07:47:12 | Weblog
 女児三人が落ち着いた頃を見計らい、代表してシンシアが俺に言う。
「ごめんなさいね、駆け付けるのが遅くなってしまって」
「謝られても困るよ。
まず、謝られる理由からして分からない」
「そうよね。
・・・。
私達三人はそれぞれのお店の御主人に、
お嬢さま方の警護を依頼されていたの。
なのに、駆け付けるのが遅くなってしまった。失敗ね」
 彼女達は冒険者として冒険者ギルドに所属していた。
ただし魔物討伐系の仕事は行わず、
ひたすら街中の仕事に従事する冒険者であった。
家庭教師や商店の帳簿整理、国に提出する書類の仕上げ等々、
仕事には事欠かなかった。
「魔物の討伐は苦手と聞いていました。
それでも引き受けたんですか」
 シンシアに代わってルースが答えた。
「苦手なんだけど、戦えない分けじゃないのよ。
これでも魔法学園の歴とした卒業生。
卒業試験の魔物討伐は立派に遣り遂げたわ。
ただ、野営が嫌いなだけ。
どう、ご希望なら私のファイアボールをお見舞いしてして上げようか」
 彼女達は魔法学園の同期生であった。
魔物討伐を終えて卒業すると三人揃って国の招聘に応じた。
当然、魔法使いとして国軍に配属された。
当初から士官待遇なので文句はなかった。
が、年を経るに従い、様々な不満が溜まってきた。
その最大なのは人事面。
足利氏の長期支配の弊害か、依怙贔屓・汚職が跋扈していた。
貴族の子弟だと昇進が早い、金銭で階級が売買されている等々。
我慢の末、三人は一緒に退役し、現在に至っていた。
「せっかくですけど、ファイアボールはご遠慮申し上げます」
 するとシビルが笑って言う。
「あらルース、振られちゃったのね。
それじゃダン君、私のアースボールなんてどうかしら」
「それも結構です。
ねえ、仕事しませんか」みんなを見回した。
「仕事・・・。終わっているわよね」シンシアが応じた。
「まだ息してる奴がいます。
虫の息ですから危険はないでしょう。
それを二人一組で回って仕留めて下さい。
ついでに討伐証明部位を刈り取って下さい。
角は二本で一組扱いですよ。
・・・。
俺は周辺の警戒を続けます」
 ようく見ると、のた打ちまわるゴブリンが見受けられた。
これは俺の弓の命中精度の問題点だろう。
「そういうことか。ゴブリンは常時討伐扱いだったわね。
分かった」シンシア。
 話し合って、組み合わせは師弟コンビ、と言うことになった。
勿論、家庭教師と担当する教え子だ。
三組が散開してゴブリンを仕留めて回る。
結構な数、悲鳴が上がった。
ついでに討伐証明部位の刈り取りの声。
こちらでは女児達の悲鳴が上がった。
ゴブリンの討伐部位は角なので、頭部から切り取る際、
手際が悪いと皮膚も一緒に削り取る事になるので悲惨なことに・・・。
 俺は警戒しながらゴブリンを見下ろした。
他よりも一回り大きい固体だ。
たぶん、ゴブリンリーダーだろう。
こいつの角は俺が切り取らないと立場上、拙いだろう。
弓を虚空に仕舞い、換わりに短剣を取り出した。
女児達が知れば卑怯呼ばわりされるかもしれないが、
俺はEPを付与することにした。
身体強化。
他人の魔法を分析して取得したものではなく、
田舎で行っていた気の精錬を応用したものだ。
剛と柔を意識して全身にEPを巡らした。
実感、全身の筋肉にピリッと痛みが走った。
「新たなスキルを獲得しました。身体強化☆」脳内モニターに文字。
ついでに短剣にも、ちょっとだけEPを付与。
そして短剣を振り下ろした。
サクッサクッ。
「魔卵を持ってます」脳内モニターに文字。
鑑定君の精度が上がった。
ゴブリンをスキャンした画面に切り替わった。
内臓の端にくっついていた。
切り開いて取り出すしかない。
腹部に刃先を突っ込んだ。
ズブッ。
 俺は張ったままの水の盾に気付いた。
ウォーターシールドを頭の高さに張ったままだった。
意外と長持ちするではないか。
魔法使い三人の指摘がないことから、
俺のEPの方が高位にある、と理解した。
慌てる事でもないが解除。
途端、消える手応え。
 疲れたような表情で女児達が戻ってきた。
両手で持ちきれないのか、討伐部位の角を胸元に抱えていた。
手袋や胴当てが血で汚れているが、慰めの言葉は掛けない。
これが冒険者の仕事なんだから・・・。
俺は虚空から風呂敷を取り出し、それに刈り取った角を置かせた。
17匹だから角は34本。
魔卵が三個。
小さなゴブリンにしては、これは大収穫と言うべきだろう。
なにしろゴブリンは肉質が悪く、他の部位も低評価。まさしくFランク。
売れるのは角と魔卵の二つだけときた。
ところが、その二つが調剤の素材として高評価、
高値で買い取って貰えるのだ。
「さあ、最後の仕事だよ。頑張ろう」
 俺の言葉に家庭教師の三人が頷くが、女児三人は不審そうな顔。
それを見て取ったシビルが説明した。
「平地で魔物を討伐したら穴に埋める決まりなの。
血の臭いに誘われて大量に魔物が集まる懸念があるからね。
ただし、山や森で討伐したら、そのまま置き捨てにしても問題ないわ。
穴掘りしている最中に魔物に襲われちゃ、元も子もないでしょう」
 土の魔法スキルのあるシビルは残って、近くで穴掘り。
俺は警戒続行。
他の五人でゴブリン運搬と分かれた。
 俺は不満そうなキャロルに約束した。
「これが終われば今日は、じゃがバターだ。残ってればだが」
 茹でたジャガイモにバターを乗せたものだが、
バターは入手困難な一品。
平民には贅沢品。
それでも常に入手しているスイーツ店があった。
途端に女児達の動きが良くなった。
 少し離れた所でシビルが呪文を唱え始めた。
土の魔法。穴掘り。
17体もあるので、それ相応の大きさの穴が必要と考えてのことだろう。
丁寧な仕事ぶり。
小さいが魔方陣まで足下に現れた。
次の瞬間、地面の雑草ごと土が除去され、広くて深い穴が出現した。
「土の魔法の分析が終わりました。
EPで再現可能です」脳内モニターに文字。




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