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「中国が北朝鮮を攻撃する」というシナリオの現実性(宮崎正弘国際ニュース早読み)

2017-10-21 | 中国の歴史・中国情勢
状況は完全に変わった。「中国が北朝鮮を攻撃する」というシナリオの現実性
米国はミサイルの集中攻撃、陸上戦闘は中国と韓国にまかせる?
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習近平にとっての対北朝鮮認識は「不愉快」「仮想敵」である。いまや「友好国」とか「血の友誼」とかの両国の絆を顕した古色蒼然たるスローガンは死語になりつつある。習近平が前々から強調してきたのは「われわれは朝鮮半島の安定を望んでいるのであって、政権の安定を望んでいるのではない(つまり金正恩体制は潰しても構わない)」という文言だった。

いよいよ最終的な意思決定の段階に来て、党大会の政治報告では意図的に北朝鮮への言及がなかった。「これから何をするか」は明らかにしないということである。

第一に金正恩は五月の「一帯一路」フォーラム初日にミサイル実験をおこなって、九月のBRICSフォーラムの初日にも核実験を強行して習近平の晴れ舞台に泥を塗った。習近平の怒りが収まる筈がない。この二つの国際フォーラムには世界数十ケ国から元首が出席していたのである。

第二に国連の経済制裁を実践するに際して、旧瀋陽軍区のダミー企業が北朝鮮との深い利権で結ばれている事実が習近平の権力基盤を揺さぶってきた。失脚させた徐才厚、郭拍雄の残党が軍の内部で不安な動きを示した。もし有事となれば、この習近平に楯突いてきた軍を戦争最前線におくることが出来る。

第三に3700キロ射程のミサイル実験の成功を、日本のメディアはグアムが射程に入ったと騒いだが、ぐるりと向きを変えると、全中国が射程に入ったということである。つまり北朝鮮は中国にとっても国家安全保障の根幹を揺るがす脅威となってしまった。中国から見れば、これは裏切りである。

第四が核拡散の怖れである。北朝鮮はVXガスも、ミサイルも見境なく物騒な国々に売ってきた。もし小型核に成功し、これを幾つか生産して、ISやアルカィーダへ売却する怖れもさることながら、中国にとってはウィグルの過激派への売却という事態をもっとも恐れている。

ウイグル自治区にはIS残党がカザフスタン経由で潜入した気配もあり、平和的解決をのぞむ「東トルキスタン」独立運動ばかりではなく、過激セクトが混在しており、危険なシナリオがあれば、その芽のうちに摘んでしまわなければならないだろう。

かくして中国の保護国だった子分が親分を軍事的脅威で強請るという事態がシナリオに加算されるようになったわけで、中国は自らの北朝鮮攻撃の可能性を熟慮し始めた。

すでに北朝鮮の富裕層は、この変化を肌で感じはじめた。レジュームチェンジとなれば、富裕層も粛清の対象となるだろう。富裕層の一部はすでに中国の丹東、瀋陽への脱出を始めており、マンションを購入し始めたという情報が錯綜している。

トランプ政権の狙いは金正恩の体制転覆が最終目標ではない。核兵器の管理である。これが米国の心配事の一番であって、北朝鮮の核兵器の拡散をなんとしても防ぐ必要がある。その点では中国と協力する余地が十分にあるわけで、あるいは既に密約が成立しているとも考えられる。

▼ソ連崩壊時の核兵器管理はどうだったか

ソ連が崩壊したときのことを思い出したい。ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンに分散されていた核兵器を、旧ソ連の中核ロシアが一元管理することが絶対の条件だった。米国はそのために協力を申し出て、とりわけウクラナイナに配備されていた核兵器をロシアへ移動させた。

また旧ソ連の核兵器管理システムコンピュータは米国が受け持ち、とどのつまりロシアの核戦力は米国の「統治下」にあると分析する軍事専門家がいる。

このソ連崩壊の大混乱の最中に軍人と組んだ凶暴なマフィアがウランを持ち出して、売りさばこうとしていた。
西ドイツの警察が囮を仕掛けて、バイヤーに化け、ロシアからのウランの一部を押収した。当時、ハリウッド映画が、ソ連の核兵器の闇マーケットをテーマとして作品を量産したものだった。

中国の核兵器管理は陝西省の峨々たる山脈に無数のトンネルを掘って大規模な地下要塞をつくり鉄道で繋いで、円滑にミサイル発射基地へ移動できるシステムを完成させている。

ところが、四川省大地震の際に露呈したのは秘密都市とされた核兵器製造の町が壊滅、パラシュート部隊などが緊急に出動して被災者救出より先に核兵器もしくはウランと思われる箇所にコンクリートを幾層にも流し込んで埋める作業だった。

▼パキスタンの核拡散の恐怖も去ってはいない

パキスタンの核兵器と米国の関与は不明瞭な点が多い。1975年に帰国したカーン博士は核兵器開発をはじめ、日本から大量の部品、関連材料を輸入したことは判明している。カーンは核の闇市場を形成し、その技術を北朝鮮に供与した。パキスタンの核開発の費用はサウジアラビアが負担した。

パキスタンは国際世論から囂々たる非難を浴びたため、カーン博士はスケープゴーツにされたが、だからといってパキスタン国内で処分されてはいない。

具体的にはパキスタンが濃縮ウラン技術と遠心分離器を北朝鮮に供与し、バーターで北朝鮮はノドンミサイルを提供した。

ブッド政権下で、核開発は開始されたが、ブッド首相(当時)は「軍はアンタッチャブル。わたしは何も知らなかったし、軍から情報提供はなかった」とインタビューに答えた。

ムシャラフ政権下で北朝鮮との交流は深化し、イスラマバードと平壌間を軍用機が飛び交った。
 
米国が懸念したのはパキスタンの核兵器がタリバン、アルカィーダ、ISなどイスラム過激派に流れることである。米国議会報告では「管理はしっかりしており、いまのところ懸念材料は薄い「としているが、状況の変化次第でどうなるか分からない。

したがってパキスタンの核兵器管理に関して米国はパキスタンと密約を交わし、有事の際にはアメリカの特殊部隊が潜入し、核兵器管理を優先順位のトップにおくとしていると嘗てアメリカ人ジャーナリストがすっぱ抜いたことがある。

こうみてくると、中国は北朝鮮有事の際、まっさきに核施設に突入して、核兵器の管理のための作戦をとることになるだろう。だから状況はすっかり変わっているのだ。

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