2022.02.11
【中国】疑惑判定と中国当局の茶番続出の北京冬季五輪
北京五輪が開催されていますが、判定などをめぐってさまざまな疑念が出ているのはご承知のとおりです。スキージャンプ混合団体では高梨沙羅選手をはじめスーツ規定違反が続出し、スノーボード女子パラレル大回転では、審判の8人中6人がドイツ人という珍しい状況のなか、ドイツ選手と戦った竹内智香選手が不可解な判定で途中棄権扱いとされるといったことが話題となっています。
もちろん中国がからむ競技でも疑惑続出です。ショートトラック1,000メートルでは、韓国やハンガリーの選手が次々と失格となり、一度も1位を獲得していない中国人選手が金銀メダルを獲得。また、ショートトラック2,000メートル混合リレーでも謎判定で他国が失格して中国が優勝するなど、徹底的に中国有利な判定がだされたということで、韓国は「氷上種目のボイコットを検討」する事態までに発展しました。
もともとこの北京冬季五輪は、いろいろな疑惑が絶えない大会でした。中国は新型コロナ対策として、選手などに対してスマートフォン専用アプリで毎日の体温の登録が義務付けられていましたが、日本政府は情報漏えいの懸念があるため、帰国後、速やかにアプリ削除するよう警告しました。きわめて異常なことです。
テニスプレーヤーの彭帥氏の性暴力疑惑についても、IOCのバッハ会長が面会して「身の安全と行動の自由」をアピールしたものの、国内向けCNNがその関連ニュースを報じると突然放送が遮断されるなど、どう考えても「自由ではない」実態が明らかになっています。
また、前回のメルマガ「卑怯な中国。IOCまで使って台湾に北京五輪開閉会式の参加を強要した黒い思惑」で述べたように、台湾は開会式に参加を余儀なくされましたが、入場の際、中国国営テレビはわざわざ「中国台北」と呼び、貴賓席の習近平の映像に切り替えました。まさに、懸念していた通りになってしまいました。
その開会式ですが、日本国内では昨年の東京五輪と比較して、中国の演出を絶賛する声も少なくありませんでした。しかし、それはあまりにアンフェアな見方だと思います。東京五輪の開閉会式では、関係者がさまざまなスキャンダルで辞任、解任されるということが、開催直前まで相次ぎました。たしかに問題はあったかもしれませんが、では中国はどうなのか。
今回の総合演出を手掛けたのは、映画監督のチャン・イーモウ氏です。しかし、そのチャン・イーモウ氏も、これまで不倫や隠し子といったスキャンダルで騒がれた人物です。コン・リーやチャン・ツィーと不倫関係が取り沙汰され、また、複数の女性と関係を持ち、7人の隠し子がいるともいわれ、一人っ子政策に違反してきた疑惑もありました。もしもチャン・イーモウ氏が東京五輪の演出監督だったとしたら、過去の不貞を週刊誌などが暴いて、きっと引きずり降ろされていたことでしょう。
しかし、中国ですから、党中央が決定したことは絶対に正しいことであり、覆りません。もちろん、党中央の決定した事項に水を差すようなスキャンダルは絶対に報じられません。報じた方が罰せられるからです。
チャン・イーモウ氏は、2008年の北京オリンピックでも開閉会式の総合演出を担当していました。開会式での歌の口パク疑惑、さらには56の少数民族の子供を登場させたものの、実はそれらはすべて漢民族だった「やらせ」だったと判明し、批判が起こりました。
にもかかわらず、中国政府は今回もチャン・イーモウ氏に総合演出を任せたわけです。
その一方で、2008年の北京オリンピックのテーマソングを作詞した有名な作詞家・林夕氏は、今回は担当していません。それもそのはず、林夕氏は香港人で、ここ数年の中国共産党の香港支配強化に反発し、香港の民衆デモを支持し、そして現在は台湾に移住しているからです。香港にいたら、逮捕されていたかもしれません。
自由を求める人は中国を離れ、中国共産党に忠誠を誓う「愛国者」が今回の北京冬季オリンピックを演出したという構図です。そして人民には真実は知らされません。
東京五輪では、開催に反対する団体や活動家がデモを行い、開会式でも会場前でシュプレヒコールを叫んでいました。民主主義国である日本では、こうした開催反対の世論にも気を使う必要がありました。しかし、中国では開催反対の声などありません。声を上げた途端に逮捕です。実際、香港の社会活動家の古思堯氏は、開会式にあわせて中国政府の香港の出先機関へ抗議活動を計画していたものの、それを察知した当局に逮捕されてしまいました。しかもその容疑は「国家政権転覆煽動罪」です。
東京五輪のとき、反対者の多くは、政権批判も込めたデモやシュプレヒコールを展開していました。また、メディアもそれを煽っていました。しかし中国であれば、それらはすべて「国家政権転覆煽動罪」で逮捕です。
中国の開会式に賛辞を送る人たちは、この1年間、どれだけ中国で自由の声が弾圧されてきたのか、そのことに少しでも思いをはせていただきたいと思います。
開会式では聖火リレーの最終ランナーをウイグル人の選手にやらせていましたが、明らかに国際社会に対するアピールでした。ところが、そのウイグル人選手は、すべての選手が取材エリアを通る必要があるという規定がありながら、取材ゾーンには姿を見せなかったということです。
明らかに都合の悪いことは徹底的に封じ込めようという中国当局の思惑が見て取れます。さまざまな疑惑の判定が起こるのも、中国ならではなのでしょう。
女子のアイスホッケー日中戦では、中国側の応援席から「保衛黄河」(黄河を守れ)という抗日ソングが流されました。これは日中戦争時に旧日本軍から黄河を守れと呼びかける曲で、「山々叢中にも抗日英雄は少なくない」と歌われます。これは明らかに五輪憲章違反でしょう。試合は1-2で中国が僅差で勝利しましたが、中国のネットでは「抗日に成功した」という書き込みが見られたそうです。
しかし日中戦争時、日本軍の進撃を食い止めるため、黄河を決壊させ数十万人の住民を溺死させたのは、蒋介石率いる国民党軍でした。国民党軍はこれを日本軍の仕業だとでっち上げましたが、実際は、被災した中国人の救出にあたったのが日本軍だったというのが歴史の事実です。黄河と人民を守ろうとしたのは日本側だったのです。
中国当局は過去の史実も現在の事実もすべて自分に都合よく覆い隠したまま、五輪を利用して茶番を繰り広げています。頑張ってきた各国の選手たちが、中国の政治ショーの犠牲にならないことを祈るばかりです。