東アジア歴史文化研究会

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偏向テレビから民主主義社会を守る道〜小川榮太郎『徹底検証 テレビ報道「嘘」のからくり』から

2017-12-18 | 日本をダメにする勢力
国際派日本人養成講座より転載

放送法を無視して偏向報道を繰り返す確信犯的テレビ局をいかに正すか。

■1.「一つの条文が独裁に繋がってしまった」

冒頭から、画面にはヒトラーが演説する場面が映し出された。メインキャスターの古舘伊知郎氏が次のように語りだす。

・・・専門家の間ではドイツのあのワイマール憲法の『国家緊急権』。この教訓に学ぶべきだという声がかなり上がってきているのも事実であります。その国家緊急権を悪用する形で結果ナチの台頭があった。

古舘キャスターは、ヒトラーの演説の映像を背景に語り続ける。

でもヒトラーというのは軍やクーデターで独裁を確立したわけじゃありません。合法的に実は実現しているんです。実は、世界一民主的なはずのワイマール憲法の一つの条文が独裁に繋がってしまった。そしてヒトラーはついには、ワイマール憲法自体を停止させました。・・・じゃあ、ヒトラーはどうしたんだ、と。実は使ったのはワイマール憲法の第48条、『国家緊急権』というやつなんです。

こうして、番組はヒトラーの独裁を生んだ「国家緊急権」と、自民党改憲草案の「緊急事態条項」を重ね合わせていく。テレビ朝日の『報道ステーション』が平成28(2016)年3月18日に放送した特集「憲法改正の行方…『緊急事態条項』・ワイマール憲法が生んだ独裁の″教訓」の冒頭シーンである。

■2.「令状なしで怪しいと思われれば拘束をされる」

番組では、続けて「内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」という条文を紹介して、「ワイマール憲法研究の権威である」ミハエル・ドライアー氏(イエナ大学教授)の次のような見解を紹介する。

この内容はワイマール憲法48条(国家緊急権)を思い起こさせます。内閣の一人の人間に利用される危険性があり、とても問題です。・・・特に(議会や憲法裁判所などの)チェックが不十分に思えます。このような権力の集中には通常の法律よりも多くのチエツクが必要です。議会からの厳しいチェックができないと悪用の危険性を与えることになります。

番組は改憲草案の一部を表示して、内閣総理大臣が緊急事態を宣言すれば、「法律と同一の効力を有する政令を制定することができる」「財政上必要な支出その他の処分を行い」等々、首相にどれほどの権限を与えるかを説明する。

「日本を代表する憲法学者の一人」とされるコメンテーターの長谷部恭男氏も「場合によっては令状なしで怪しいと思われれば拘束をされる、そんなことになるということも理屈としてはあり得るということになります」とコメントする。

これでは、いかにも自民党の改憲による緊急事態条項で日本にも「安倍ヒトラー」が生まれ、暗黒の独裁国家への道が開かれてしまう、と普通の国民なら思ってしまうだろう。

■3.アメリカのニュース番組との違い

ニュース番組でメイン・キャスター自身が特定の意見を主張し、しかも同じ意見だけのコメンテーターが登場する、というスタイルは、筆者がアメリカで良く見ていたニュース番組とは全く異なる。

アメリカのニュース番組では、たとえば議院で対立している法案などに関して、与党、野党から1人ずつコメンテーターが登場し、それぞれの主張をする。画面が左右に二分されて、双方が並んで映し出される、という構成もよく使われる。ニュース・キャスターはあくまで行司役である。まさにディベート(対論)の形である。

議論が激してくると、双方が同時に発言して、収拾がつかなくなる事も多々あるが、時間が来るとキャスターが議論を要約して、「こういうあたりが両者の意見が対立するポイントですね」と視聴者に自ら考えるべき点を提供して終わる。

この『報道ステーション』の「緊急事態条項」報道が、アメリカのニュース番組の対論形式でされたらどうなるか、誌上シミュレーションをしてみよう。自民党側からは安倍首相に登場いただいて、ミハイル・ドライアー氏や長谷部恭男氏と対決して貰おう。

■4.「あなたは第98条3項も見て言ってるのですか」

ミハエル・ドライアー氏が「(議会や憲法裁判所などの)チェックが不十分」とした点に関して、安倍首相は「あなたは第98条3項を見て言ってるのですか」と言って、次のようなパネルを見せる。

第98条3項 ・・・(国会で)不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、・・・当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。

このパネルを見せながら、安倍首相は反論する。

この条項はなぜか先ほどの紹介では隠されていましたが、ここにあるように国会が議決すれば、緊急事態宣言は解除しなければならないのですよ。しかも100日以上続けようとしたら、さらに国会の承認を得なければならない。こういう点を隠して、チェックが不十分だなどと言うのは、おかしいでしょう。この条項を踏まえた上で、どこがどう不十分なのか、明らかにしてください。

安倍首相の反論で、視聴者はこういう大事な項目を隠したまま「チェックが不十分」などというミハエル・ドライアー氏の主張は、そのままでは信じられない、と気がつくだろう。そして、「議会などによるチェック」がどうあるべきなのか、今の自民党案では不十分なのか、諸外国ではどうなっているのか、と考える。

こういうディベート形式なら、建設的に議論を深めることができて、視聴者も勉強になる。これは主権者たる国民に物事をよく考えさせて、民主主義の基盤作りに貢献する方法である。

逆に実際の『報道ステーション』のように、一部の情報に目隠しされたまま「チャックが不十分」だなどと信じ込まされるのは、シナや北朝鮮など全体主義国にふさわしい洗脳手法である。

■5.「知っていて隠しているなら、詐欺じゃないですか?」

長谷部恭男氏の「令状なしで怪しいと思われれば拘束をされる」という発言に対しても、安倍首相はこんなふうに反論する。

第99条3項では『基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない』と謳っています。だからそんな事は禁じられています。ミハエル・ドライアー氏と同様、あなたも法案の中で、自分の主張に都合の悪い部分は隠して、あり得ない事態を言い立てている。あなたは「日本を代表する憲法学者の一人」と紹介されたが、法案全体を読まずに空想的な主張をしているならそんな資格はないし、知っていて隠しているなら詐欺じゃないですか?

長谷部恭男氏がどんな返答ができるのか見物である。いずれにせよ、こういうディベートを通じて、視聴者はどちらの主張がより納得性があるかを判断していくのである。

■6.「ヒトラーばりのプロパガンダではないでしょうか」

さらに安倍首相ならメイン・キャスターの古舘氏に、次のような舌鋒を浴びせかけるかも知れない。

この番組の冒頭で、ワイマール憲法の「国家緊急権」が独裁に繋がってしまったと、古舘さん、あなたは言いましたね。そして、自民党の緊急事態条項も同じだと言いたいようですが、ちょっと待ってください。そもそも緊急事態条項は世界中の憲法で103か国、特にこの30年間に制定された憲法では全ての国が採用しています。もし、緊急事態条項がヒトラーを生むというなら、世界中がヒトラーだらけになっているはずです。しかし、実際にはそうなっていない。あなたはなぜ、こういう事実を隠すのですか。

それでも我々自民党案の緊急事態条項がヒトラーを生むと言うなら、世界中の憲法の緊急事態条項と自民党案の、どこがどう違っているのかを論証すべきでしょう。そういう議論をするなら、我々の案をもっと良くするアイデアも得られるかも知れない。それもせずに、自民党案がヒットラーを生むように見せかけるのは、それこそヒトラーばりのプロパガンダではないでしょうか。

安倍首相の舌鋒は、さらに鋭くなる。

そもそもメイン・キャスターのあなたが、我が党の緊急事態条項を否定する側について番組を構成するというのは、たとえば、サッカーの試合で、審判役が相手側についているようなものです。それじゃあ八百長試合じゃないですか。

さらに言えば、もともとの番組構成では、私も登場できず、自民党側は何の反論の機会も与えられなかった。いわば、相手チームのいないフィールドで、あなた側は好きなようにシュートして、さも得点を上げたように見せかけていただけじゃないですか。そんなのはゲームですらない。あなたもニュース番組のキャスターなら、放送法くらいは知っているでしょう。その第4条にはこうあります。

 二、政治的に公平であること。
 三、報道は事実をまげないですること。
 四、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

あなたの番組作りは、これらすべてを無視している。それこそヒトラーを生み道ではないでしょうか。

■7.罰則のない放送法

古舘氏の「名誉」のために言っておくと、放送法を無視した番組作りは、テレビ朝日の『報道ステーション』だけでは無い。小川榮太郎氏の『徹底検証 テレビ報道「嘘」のからくり』を読めば、同様の事例がこれでもかと言うほどにでてくる。

小川氏は、放送法がこれだけ無視されている理由を、罰則がないからだと指摘する。小川氏は米、英、仏、独、韓国の放送法と比較し、これらの国では、訂正放送命令や課徴金、放送免許停止又は取消の処分すらあり得る事を示している。さらに、イギリスを除く4カ国では、刑事罰を課されることもあるという。氏は結論づける。

今、日本にどうしても必要なのはテレビを政府から守ることではなく、テレビの一方的な電波独占から、国民の知る権利を守る制度的保障なのです。「電波独占」というのは、国民の財産である、限られた電波を、現行テレビ局が異常な低価格で使って、稼いでるからである。

現在、テレビ局全体の電波利用料負担は総計で34億4700万円。それに対し営業収益は3兆円を超える。電波の仕入れコストは、営業収益のわずか0.1%ということになる。

このことから、小川氏は電波オークションの実施を提言する。競争入札によって業者の入れ替わりを原理的に可能とすることで、好き放題の偏向報道への歯止めにもなる。現在、先進国で電波オークションを行っていないのは日本だけだそうだ。

■ 8.偏向テレビ報道を正す道

しかし現在の放送法に罰則を加えたり、電波オークションを導入するよう改正することは、左傾新聞と偏向テレビからの猛反対を呼んで相当な時間とエネルギーを要するだろう。

そこで、小川栄太郎氏はすぐに打てる手として民間による「コンシューマー運動」を提案する。テレビ局は企業をスポンサーとする広告収入で成り立っている。氏は番組のスポンサー企業に、偏向報道ぶりを調査報告する、と宣言した。するとただちにTBSと朝日新聞が激烈な抗議の声を上げた。スポンサーへの働きかけをいかに恐れているか、の証左である。

小川氏の提案は穏健なものだ。しかし、現代では企業の品質責任はサプライヤー企業の選択・監督にまで及ぶ。毒入りの食材を外部購入して、顧客の食中毒を起こしたレストランは、そんなサプライヤーを使った責任を追求される。その責任を認めなければ、不買運動の対象にもなる。

同様に、偏向報道を垂れ流して、我が国の民主主義にダメージを与えているテレビ局を広告に使っている企業も、その社会的責任を問われなければならない。そういう反社会的企業に対して、消費者が団結して「買わない権利」を行使することは正当である。

近年のインターネットの発達は、その力を国民に与えた。この兵糧攻めこそ、放送法違反を繰り返す確信犯的テレビ局を正す近道だろう。

(文責 伊勢雅臣)

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