ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

劇症型溶血性レンサ球菌感染症

2015-09-04 11:11:50 | 健康・医療
最近テレビなどで、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の話題が時々取り上げられています。この原因菌を「人食いバクテリア」などと表現し、これが恐ろしい病気であることをあおっているような気がします。

そこで今回は溶血性レンサ球菌の話をしますが、やや不思議なことがあります。微生物は私の専門ではないのですが、こういった微生物をやっつける薬を作ることを、25年ほど前にやっていました。したがってそのターゲットである微生物も、ある程度は知っておかなければならないわけです。その中にこの溶血性レンサ球菌も入っていたのですが、この顕微鏡写真でわかるように、球状の菌がいくつもつながって鎖のようになっています。そこで名前は溶血性連鎖球菌となっていたのですが、最近はこの連鎖をカタカナで書くようになりました。不思議なことといってもなぜカタカナになったかという、どうでもいいことです。

我々はこの菌を溶連菌という略称で呼んでいましたが、今でもこの略称は使われているようです。さてこの溶連菌ですが、いわゆる常在菌という、通常どこにでも存在し、多くの人の喉などの呼吸器に住み着いている菌です。ですからこの菌が体内に入っても、ほとんど何の症状も出ず、ごくたまにのどが痛くなったりする程度の菌です。

ところが昔から、この菌が傷口などに入り、異常繁殖を始めることが知られていました。これが劇症型感染症です。これは本当に激しい症状になり、微生物学的にはあり得ないほどのスピード繁殖してしまうのです。一旦劇症型になると、例えば足の先から始まると、1時間に10 cmというスピードで壊死が広がり、抗生物質などの投与も間に合わないようです。治療法も対症療法しかなく、壊死した部分を切断するという方法しか効果がないようです。当然この溶連菌は、常在菌として知られる溶連菌とは異なるはずということで、いろいろ比較研究も行われましたが、病変部位から分離した菌は、通常の溶連菌と全く差がないようです。

なぜこのような異常繁殖が始まるのかも、研究されているはずですが、あまりよく分かっていないようです。これはあまり確実な情報ではありませんが、劇症型感染症の研究が進まないのは、一つには患者数が少なく、データがあまり集まらないこと、また実験動物にこの溶連菌をいろいろな形で接種しても、劇症型感染症が発症しないなどがあるようです。

これはあくまで昔私が知っていた内容ですので、最近の研究でもう少しわかってきているのかもしれませんが、テレビの報道で見る限りでは、まだ不明のままのような気もします。但し発症確率は、たぶん日本だけではなく、大部分の人がこの溶連菌には感染しており、そのうちの2~300人が劇症型になるだけですので、宝くじに当たるより低い確率といえます。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿