ごっとさんのブログ

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分子のコントロールに向けての大きな一歩

2017-05-29 10:41:46 | 化学
分子一つひとつの動きをコントロールするのは難しいが、分子の制御に向けて一歩ずつ科学者たちは歩みを進めているという記事が出ていました。

ところがこの記事は、アメリカの国立標準技術研究所(NIST)の科学者たちが、単一の分子を制御するための初期の課題を解決したという文章があるだけで、その内容は全く出ていません。たぶん量子化学などのやさしく書くことが非常に難しい分野で、説明のしようがなかったのかもしれません。

しかしこの記事にはなかなか面白い文章が入っていましたので、そのまま転載します。
「元素周期表や難解な専門用語、球状の発泡スチロールとエンピツで作られた模型_。それらに慣れ親しんでいるにもかかわらず、実際のところ化学者たちは分子について何もわかっていないに等しい。」これは我々の現状をうまく言い表しています。

若干補足しますと、分子模型は発泡スチロールなどではなく、ちゃんとその原子の形状を表した玉と、エンピツではなく原子間距離を表したスティックで分子模型を作っています。私もこの分子模型セットは持っていますが、平面に書かれた構造式を立体的な模型にすることによって、分子が分かったような気になっていただけかもしれません。

この分子を制御するということが具体的にはどういうことなのか、この記事を読んでもわかりませんでした。

実際の化学反応というのは、分子同士の衝突(接触の方が良いかもしれませんが)によって起こります。通常の反応液という溶媒に溶けた状態の化合物は、それ自身が比較的激しい運動をしています。

さらにこの分子運動を活発にして衝突しやすくするために、撹拌という物理的力を加えています。この撹拌するという操作は、分子を動かすというより反応系内を均一にしておく意味の方が大きいかもしれません。

分子運動というのは温度に比例しますので、場合によっては加熱したり、逆に反応が生じることによって発熱する場合は、水や氷、ドライアイスなどで冷却することもあります。化学者はこの程度のことで、分子をコントロールしている気になっていたのかもしれません。

有機合成反応というと難しいことをやっていると感じるかもしれませんが、実際はかなり簡単な操作をしているだけです。また色々な条件も「大体」というのが基本であり、例えば反応温度も室温というのが多いのですが、エアコンがあるとはいえ夏と冬ではかなり異なりますが、あまり気にしたことは有りません。

分子制御からずれてしまいましたが、私の専門の有機化学的なことは初めて書いた気もします。少し有機化学の紹介的な内容を入れてみようかとも思っています。