カヤックと過ごす非日常

大人は水辺で子供に返ります。男は無邪気に、女はおバカに。水辺での出来事を通してそんな非日常を綴っていきます

936.びわ湖の漕ぎ納め? ー ジャングル探険

2019年12月02日 | Weblog

話は少し前に遡るが、いつもの事として、忘れないうちに記録しよう。

このところ、カヤックの日は不思議なほどに天気がいい。その前の日は雨、その次の日は風という天気の隙間に入り込める。 天気ばかりは、日ごろの進が良くても思いのままにならない。 しかし今回は全員の精進が良かったのだろう、小春日和の暖かな漕ぎ日和となった。そんな日の記録。

 

今日はクラブのメンバーでびわ湖のジャングル漕ぎ。今回のメンバーは6人。シーカヤックあり、リバーカヤックあり、釣り用シットオンあり、ファルトあり、FRPあり。カヤック見本のようにバラバラな艇種が並んだ。おまけに漕力や経験の違いもあり、そんな一団がワイワイにぎにぎと漕ぎに行ったのは紅葉のジャングル。

 穏やかなびわ湖。日本一大きいびわ湖だが、出艇地から一番近い対岸までは11キロ。今日の天気なら楽勝のちょい漕ぎで渡れる。沖の白石も多景島もほんのひと漕ぎだよ、と誘っている。しかし、今日目指すはデルタ地帯のジャングル。 まずは本川をちょいと覗く。

 びわ湖に注ぐ安曇川。大きな流れ、小さな流れ、滲んでいる流れ。たくさんの水が川を作ってびわ湖に注ぐ。今日はサギの姿が見えない。出張中だろうか。さかのぼればもっと先まで行かれるのだが、ここはジャングルではない。それでは、とまたびわ湖に戻る。

 小さな水路に入ると、それなりにジャングルっぽくなってくる。しかしまだここは本命ではない。水草が茂っている頃にはパドルで漕ぐと言うより、草を掴んで引っ張りながら前に行く。と言う苦行となるのだが、今はそこそこに優しい水路だ。だんだん紅葉の木々が現れ始める。

 アカメカシワの黄色、ナンキンハゼの赤、ヤナギの緑。あとは名前のわからない木々が1,2,3,・1,2,3,と色づきを比べるように並び、見事に青い空によく映える。

突然スプレースカートにバチバチ、バチバチと何かがぶつかってきた。わ、わ、これは何だろう。

 天ぷら鍋に水を振ったように跳ねまわっている。2匹、3匹、・・ おっ、写真、写真、と慌てている間も大ジャンプをしてじっとしていない。逃げたものもいたが、久しぶりに飛び入りのお客さんだった。唐揚げにいいサイズだったがもっと大きくなってまたおいで、とびわ湖に返した。 その日まで、今日の日の、この恩を覚えているだろうか。

 ジャングルへの入口はいくつもある。ここはヨシが広がり、ジャングルとしては初心者向け。

 ここは中級者だろうか。そこそこの枯れ穂をかき分け、そこそこの枯れ枝をくぐる。

 こんな所に来るのはかなりの上級者。そこそこのクモの巣を払い、そこそこの浮き枝を乗り越え、そこそこの澱みに滴を浴び、ついにこの水路はここが行き止まりのようだ。では次の水路に行ってみよう。

次の水路のかけ橋のように、大きな砂州ができている。びわ湖に出て砂州の外側を行けば難なくジャングル入りができるのだが、「来れるものなら来てみろ」的に、かろうじて水路がつながっている。そうたきつけられて、おめおめ引き返すようなメンバーではない(そんなメンバーもいたが)。 枯れ枝を折り、体を二つ折りにかがめ、ライジャケをイバラに引っかかれ、それでも果敢に進んだ先に砂州の内海がある。

 いつだったか、この砂州が完全に繋がり、海跡湖のようになっていたことがあった。砂州にカヤックを横付けし、降りてカヤックを運び、また内湖に浮かんだ事があった。

ある時は、辛うじて砂州に切れ目があり、そこから入った。またある時は、浅い砂州を「面倒くさい」と言うメンバーに圧され、泣く泣く素通りした事もあった。

砂州は、いつもあるとは限らない。大水や大波や大風や、自然界の力仕事でできたり消えたりする。たまたま出会った運を大切にしたいと思う。

 砂州の辺りは複雑に分岐して、益々ジャングル度が上がる。この辺りはナンキンハゼの紅葉が見事な水辺が続く。今年は紅葉が遅いようだか、晩秋から初冬にかけてのグラデーションがカヤックを楽しませてくれる。そう言えば、以前、キツネを見たのもこの辺りだった。  

浅いジャングル、水位が上がれば枝をくぐれず進めない。水位が低ければ泥にうずまって進めない。さて、今日はどこまで行かれるだろう。

 次第に水は澱み、水草が行く手を阻む。ここが今日の終点か。昔は河川の氾濫がよくあり、このジャングルもそのたびに澱んだ水がびわ湖に流れ出て、水がきれいになったが、今は滅多に氾濫もしなくなったので、澱んだままになった、とのこと。

今回は、私が案内役の予定だったが、いつものように「サッチモさん」におんぶに抱っこだった。 いやぁ、ジャングルと言ったらサッチモさんでしょ!

ジャングルを後にして元の岸に戻る途中、振り返れば比良の山々がシルエットに浮かぶ。漕いだのは暖かい日だったが師走に入った今日は、雪かも知れない。

次にびわ湖に浮かぶのは来年だな。良いびわ湖だった。この一年も、良いびわ湖が楽しめた。来年のびわ湖もきっと、良いびわ湖に出会えるだろう。その日ぬまで、暫しのお別れをした日だった。

   びわ湖に、人に、  ありがとう。