昭和生まれの老翁の面白話。第21話 土葬、酒乱、幽鬼の世界
現在では死者は火葬を薦められて、土葬するのにはいろいろの手続きが必要であり、条例で禁止されている市町村もあります。しかし、以前、地方の山村ではまだ、土葬が多かった昭和初期の話です。
友人から聞いた話です。彼の実家は滋賀県北部で京都府の境にある寒村に先祖伝来の杉山を持っていました。「杉材は洋材の輸入で売れず、しかし、山の手入れはしなければならないので、特に夏場は大変だ」と言っていました。その杉山のある村落での話です。
ある葬儀で土葬がありました。墓穴を掘り、遺体を埋め、そこを土饅頭型にし、木の墓碑と卒塔婆を立てます。そこに死者が生前好きだった酒を土饅頭にかけて霊を弔いました。
墓での弔いが終わり、遺族が帰って無人になった夕方、ある人がたまたまその土葬をしたところを通ったそうです。そこでその土葬の前にひざまずいている男を見たそうです。見た人は最初、ギョッとしましたが、その男が亡くなった人を憐れみ、悲しみ偲んでいると思ったそうです。ところがよく見ているとその男は手拭いに酒を含んだ土を入れ、それを絞って、垂れる土で濁った酒を飲んでいたそうです。幽鬼の世界です。その男は酒好きというより、酒乱でその土地では知れていたと言います。
老翁の話いかがでしょうか?感想等ありましたらお寄せください!
今週の一花 ポピー ‘ブラックマジック’
ポピー ‘ブラックマジック’。これほど黒い花は見たことがない。これから流行りそうな花です。