昭和生まれの老翁の面白話。第25話 「脱税王」
叔母の弟は小さな町工場を一人でやっていました。仕事は電気製品の部品の試作品の制作をしておりました。ロットは少ないのですが、単価が高く、かなり儲けていました。私が見て驚いたのは彼が他人名義の預金通帳を十数冊持っていたことです。積むと7~8セcmくらいありました。今は他人名義の通帳を持つことはほとんど無理ですが、その頃はいたって簡単に他人名義の通帳をつくることが出来た時代でした。それで、儲けた金を他人名義に分散して、かなりの財産を持っていましたが納税を逃れていました。それを知る人からは「脱税王」と言われていました。ところが叔母の弟のその息子は関西の有名私立大学を出て、大阪国税局に勤めました。父親を知る人たちは息子に「他人の脱税を取り締まるのではなく、お前の親父を捕まえろ」と言っていました。親父は息子に「脱税のやり方を教えろ、教えろ」と迫ったのですが、さすが、国税局の職員、親父に脱税の仕方は決して教えませんでした。
今週の一花 シレネ ‘桃の妖精’
シレネ ‘桃の妖精’