梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

介護職研修と介護崩壊!?(その8)

2024年05月11日 06時01分37秒 | Weblog
今回も、崩壊しない介護に向けて介護職不足の打開策はあるのかのテーマです。が、視点を変えます。介護職を増やす努力ではなく、介護を受ける高齢者を減らす話しに切り替えます。前回取り上げた新聞記事、『介護現場「ご近所」で支える』にヒントがありそうです。

支える主役はアクティブシニアと呼ばれる元気な高年層。深刻化する介護現場の人手不足を穴埋めするのは、食事の配膳やシーツ交換など間接業務で外部の動き手で、資格・経験が不要の業務を手助するシニアの存在です。アクティブシニアが増えることは、介護に頼らない元気な高齢者を増やし、介護職(既存人材)の奪い合いではなく、介護職の「足る」を促す動きに繋がっていくと思いました。

アクティブシニア人口が確実に増えているのは、調査で明らかになっています。『「70歳以降働く」最多の39%』日経新聞が行った、郵送世論調査の結果です。日経新聞が年に一度行っている調査(日経リサーチが全国の18歳以上の男女を無作為に抽出して実施)で、去年11月は6回目とのこと。働き方・社会保障に関する質問で、何歳まで働くつもりか尋ねたところ、70歳以上の回答が39%で調査開始以来最も高かったようです。

何歳まで働くかの内訳は、「60~64歳」は11%、「65~69歳」は27%、「70~74歳」が21%、「75歳以上」が18%。また、自分の将来のどのようなことに不安を感じるか複数回答で聞いたところ、「生活資金など経済面」が70%に上り、18年から22年の調査は「健康」がトップで、入れ替わった。仕事を継続する選択にいたる背景の一つとみられる、と分析しています。因みに介護の不安は、三番目で50%です。

「経済」「健康」「介護」は、若い世代にはまだ漠然としているでしょうけれど、将来の不安の関心事であることは確かです。逆にシニアにとって、生活資金など「経済」で働かざるを得ない現実だとしても、働くことは「健康」に留意することであり、「介護」から遠ざかる要因になると考えられます。

高齢者の活発な求職動向は、ハローワークの数字にも表れています。65歳以上のシニアがハローワークで職を探す有効求職者は25万人と、10年間で2.2倍に。ハローワークで仕事を探す人は徐々に高齢者にシフトしています。有効求職者を年齢別にみると、01年から18年は25~29歳が最多でフリーター対策など若者の雇用先確保が重視されたが、現在は65歳以上が逆転した。とのデータがあります(欄外の表参照)。

一方で高齢者就業に足枷があります。高齢者は稼げば年金支給減額、「意欲をそぐ月収48万円の壁」があります。どんなことなのか、その説明です。公的年金は一定の所得がある人の給付を減らす在職老齢年金制度がある。2023年度は厚生年金を含む収入が月48万円になると、超える分の支給額が半分に減る。金額カットのケースもある。

この制度の対象が次第に増えている。厚労省によると21年度末の対象者は65歳以上のケースで、49万人で、働く受給権者の17%にあたる。1965年に導入された時の狙いは、働く人も一定額の年金を支給することだった。年金を払うための制度だったが、21年度末には年金を「もらえない額」が4500億円まで膨らんだ。以上がこの制度のあらましです。

この制度への賛否はあるでしょう。しかし65~69歳の就業率は5割を超え、今や年金受給年齢になっても働く人が多数派になりました。働く高齢者は所得税を納め、社会保険の制度の財源を負担します。働く意欲をそぐ年金減額は、社会保障の担い手を細らせているようにも見えます。

シニアの就業を後押しするような発言があります。日本老年学会は、「高齢者ドライバー、中止前に代替え手段検討を」と提言します。「高齢運転者と危険運転を同一視するような差別的イメージは誤り。社会全体で多面的な取り組みを推進する必要がある」と強調。その上で「ゼロリスクにできる限り近づける科学的根拠を示し、免許更新の際などに適切な運転技能の判定が必要」、そして「運転中止前に、自身で運転する以外の代替手段を検討すべき」、との主張です。

つまり高齢だから安易に免許証を返納するのではなく、運転の代替え手段を十分検討しないと、いずれ自らの行動範囲まで狭めてしまう、との警鐘だと捉えます。運転を中止した高齢者は、継続した高齢者と比べて要介護状態になるリスクが高かった、との報告もありました。正にアクティブシニアが増えれば介護職不足は軽減・回避されるの真髄です。 ~次回に続く~


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