梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

企業統合とM&A(その4)

2024年02月03日 05時52分28秒 | Weblog
⑵ 資産取得・処分 ~前回の⑵からの続き~
わが社を訴えた信用金庫は、S社に融資をする補償として千葉工場の土地を担保提供させていました。金融機関からしたら、一般債権者だけでS社の売掛債権を回収・配当してしまったのは「けしからん」との主張です。しかし我々一般債権者は金融機関のような担保は無いので、自力で回収するしかありませんでした。金融機関を一般債権者に入れてしまうと、その担保土地の売却処分の時間ロスも生じます。

うがった見方をすれば、金融機関は官僚的な仕事をするところですので、不作為を許せない体質なのでしょう。債権回収は全額でなくとも、その努力の足跡を残し、申し送りをするのも、与えられた任務なのかもしれません。今だから、冷静に判断すればそのような考えも容認できます。それはともかく、お互いの主張は裁判で戦うしか方法はなかったともいえます。そして、当該信用金庫と対決することになりました。

裁判の決着は、和解でした。信用金庫側から逸失債権に対しての損害金が提示され、わが社がある範囲で応じる形で和解金を払いましたが、この接触が後に生かされます。裁判から半年後、千場工場はわが社の営業所として運営していたところに、その信用金庫から土地を売却したいがどれくらいの評価が出来るのか、わが社に打診がありました。他にも当たっていた様子ですが、売りあぐねていたのです。八街にある千葉工場は、第三者からしたら二束三文に近い土地であり、わが社が溶断事業をしているから活用されていたのです。

結果は、今回はわが社の指し値がほぼ通ります。賃料は発生するも仮計上で実質金銭の支出はないものの、わが社が取得することも考えていたところです。わが社はS社に土地代金を支払い、S社から信用金庫へ入金する方法で、金融担保は解除され、わが社の名で登記するに至りました。

その後紆余曲折はあったものの、千葉工場は浦安営業所に集約することになりました。今回の事故が起こる数年前、わが社は長く居た葛西の土地を売却し浦安に土地を購入し、主に販売用の鋼板在庫を置く専用倉庫を新築していました。徐々に鋼板販売も落ち込んで来ていた時期でもあり、スペースも確保されて、八広工場は浦安にいち早く集約していました。千場工場を浦安に移転して、一か所で結束し、鋼板販売と溶断加工する事業体制が出来上がりました。新たに浦安に土地を求めなかったら、これは実現していなかったことになります。

しかし問題は、八広工場は借りていた建屋を返すだけでしたが、移転で空き家になってしまった自社所有の千葉工場です。他者へ賃貸はせずに、売却することに決めました。そう決めたものの、簡単に転売できるものではなく、件の信用金庫の苦しみをここで思い知らされます。そこでメインの取引先銀行に相談したところ、グループで不動産を仲介する会社があるとのことで、紹介を受け相談することにしました。

「簡単に事は運ばないかもしれません。条件が合わずに、場合によっては数年掛かるケースもあります」と、言われます。仲介手数料は成約して発生するとのことなので、わが社でも独自に売り手を探すことにしました。私の知り合いに話したところ、数カ月経って、買ってもいいとの会社が現れました。こちらの希望価格から先方の値引き要請をのんで成約(口頭)しますが、後に一方的に破棄されました。先方の言い訳は、新たな事業計画が頓挫したとのことでした。

仲介業者と面談して一年後、突然連絡が入ります。買い手が出てきのです。新木場で在庫を抱えて、新たな倉庫を探していた材木屋さんです。相手の価格条件を引き出すと、なんと最初に成約しキャンセルされた金額より、高くなっていました。つまり、そこに断られて大正解だったのです。不動産の売買は一対一のその場限りの勝負で、後から選択して遡及できません。結果は良しでしたが、先に成約していたら。今回、貴重な経験をしました。

資産取得での出金は、信用金庫への係争費用と和解金ということになります。一方資産処分での入金は、土地の売買譲渡益(安く買い高く売れた場合の差益)です。正確には、材木屋さんへ売った代金と信用金庫から買った代金との差額から、更に譲渡益課税と土地仲介手数料を差し引き、その残りが正味の入金となります。私の記憶では、出金と入金はほぼ同額だったと思います。損害も儲けもなかった。これが土地資産取得・処分の結末となります。   ~次回に続く~
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1 コメント

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ひるがえる千年錦の御旗 (グローバルサムライ)
2024-03-05 15:59:48
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタインの理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズムにんげんの考えることを模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。なにやら多神教的というか日本らしさようななにかによって。

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