『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』の著者リンダ・グラットンさん(1955年生まれ)は、英ロンドン・ビジネススクールの教授で、人材論、組織論の世界的権威です。世界で最も権威ある経営思想家ランキング「Thinkers50」では2003年以降、毎回ランク入りを果たしています。2013年ビジネス書大賞を受賞したベストセラー『ワーク・シフト』や『Glow』など一連の著作は20カ国語以上に翻訳されました。
2016年11月に発刊された『ライフ・シフト』では、先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」が到来すると予測し、これまでとは異なる新しい人生設計の必要性を説きました。日本では本の発売と同時期に、「人生100年時代」を小泉進次郎が使用したことで広く浸透しました。2017年9月には首相官邸に首相安倍晋三を議長とする「人生100年時代構想会議」(推進室)が設置され、グラットンさんはそのメンバーに唯一の外国人として招聘されました。
2018年6月には「人生100年時代構想会議」から、幼児教育無償化の加速、待機児童問題の解消、介護職員の処遇改善、学び直しの支援、高齢者雇用の促進などからなる「人づくり革命基本構想」が発表されます。安倍首相は、「人生100年時代を見据えた経済社会システムの大改革に挑戦するのが人づくり革命」であると述べました。
しかし2021年11月、岸田内閣はこの「人生100年時代構想推進室」を廃止しました。理由は「岸田文雄内閣の政策を進めるためだ」と、松野官房長官は説明しています。「政策の修正や転換ではなく、事業は担当省庁で引き続き実施される」とのことでした。確かに、幼児教育無償化の加速、待機児童問題の解消などは、今日まで続行されています。
しかしながらグラットンさんが説いた肝心の主張は浸透せず、「人生100年時代」は、言葉だけが一人歩きしているようにも思われます。喉元過ぎればではありませんが、政府もまだ先の話しと切り替えてしまい、我々も実際そうなったらどうするか(今の16歳が2人に1人が100歳を超える)の想定をしていません。NHKの番組で紹介されなかった、グラットンさんの『ライフ・シフト』でのメッセージとはどのようなものか。ごく一部ですが、以下となります。
長寿化は社会に一大革命をもたらすといっても過言でない。人々の働き方や教育のあり方も、結婚の時期や相手や子どもをつくるタイミングも、余暇の過ごし方も、変わる。国(政府)に求められることもあるだろうが、最も大きく変わることが求められているのは個人だ。あなたが何歳だろうと、今すぐ新しい行動に踏み出し、長寿化時代への適応を始める必要がある。
寿命が延びれば、働く期間が長くなり、貯蓄の重要性も高まる。しかし、仕事とお金の面だけを見ていては、人間の本質を無視することになる。長寿がもたらす恩恵は、基本的にはもっと目に見えないものなのだ。そうしたお金に換算できない、つまり無形の資産に光を当てたい。お金に換算できないが、無形の資産に投資するお金はある程度必要になる(有形と無形のバランス)。無形の資産には非常に多くのものが含まれるが、長寿化との関係を基準にこれらを三つカテゴリー分類してみた。
一つ目は生産性資産。人が生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素のことだ。スキルと知識が主たる構成要素であることは言うまでもないが、ほかにもさまざまな要素が含まれる。
二つ目は活力資産。大ざっぱに言うと、肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などが該当する。活力資産を潤沢に備えていることは、よい人生の重要な要素の一つだ。
最後は変身資産。100ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる。そのために必要なのが変身資産だ。自分についてよく知っていること、多様性に富んだ人的ネットワークをもっていること、新しい経験に対して開かれた姿勢をもっていることなどが含まれる。
本は11章ありますが、以上の内容はわずか1~2章のものです。私はこの無形の資産の中で、変身資産に興味をもちました。これからの私にとって何か新しいことをやるとしても、これは必要だと感じました。 ~次回に続く~
リンダ・グラットンさん
2016年11月に発刊された『ライフ・シフト』では、先進国では2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる「人生100年時代」が到来すると予測し、これまでとは異なる新しい人生設計の必要性を説きました。日本では本の発売と同時期に、「人生100年時代」を小泉進次郎が使用したことで広く浸透しました。2017年9月には首相官邸に首相安倍晋三を議長とする「人生100年時代構想会議」(推進室)が設置され、グラットンさんはそのメンバーに唯一の外国人として招聘されました。
2018年6月には「人生100年時代構想会議」から、幼児教育無償化の加速、待機児童問題の解消、介護職員の処遇改善、学び直しの支援、高齢者雇用の促進などからなる「人づくり革命基本構想」が発表されます。安倍首相は、「人生100年時代を見据えた経済社会システムの大改革に挑戦するのが人づくり革命」であると述べました。
しかし2021年11月、岸田内閣はこの「人生100年時代構想推進室」を廃止しました。理由は「岸田文雄内閣の政策を進めるためだ」と、松野官房長官は説明しています。「政策の修正や転換ではなく、事業は担当省庁で引き続き実施される」とのことでした。確かに、幼児教育無償化の加速、待機児童問題の解消などは、今日まで続行されています。
しかしながらグラットンさんが説いた肝心の主張は浸透せず、「人生100年時代」は、言葉だけが一人歩きしているようにも思われます。喉元過ぎればではありませんが、政府もまだ先の話しと切り替えてしまい、我々も実際そうなったらどうするか(今の16歳が2人に1人が100歳を超える)の想定をしていません。NHKの番組で紹介されなかった、グラットンさんの『ライフ・シフト』でのメッセージとはどのようなものか。ごく一部ですが、以下となります。
長寿化は社会に一大革命をもたらすといっても過言でない。人々の働き方や教育のあり方も、結婚の時期や相手や子どもをつくるタイミングも、余暇の過ごし方も、変わる。国(政府)に求められることもあるだろうが、最も大きく変わることが求められているのは個人だ。あなたが何歳だろうと、今すぐ新しい行動に踏み出し、長寿化時代への適応を始める必要がある。
寿命が延びれば、働く期間が長くなり、貯蓄の重要性も高まる。しかし、仕事とお金の面だけを見ていては、人間の本質を無視することになる。長寿がもたらす恩恵は、基本的にはもっと目に見えないものなのだ。そうしたお金に換算できない、つまり無形の資産に光を当てたい。お金に換算できないが、無形の資産に投資するお金はある程度必要になる(有形と無形のバランス)。無形の資産には非常に多くのものが含まれるが、長寿化との関係を基準にこれらを三つカテゴリー分類してみた。
一つ目は生産性資産。人が生産性を高めて成功し、所得を増やすのに役立つ要素のことだ。スキルと知識が主たる構成要素であることは言うまでもないが、ほかにもさまざまな要素が含まれる。
二つ目は活力資産。大ざっぱに言うと、肉体的・精神的な健康と幸福のことだ。健康、友人関係、パートナーやその他の家族との良好な関係などが該当する。活力資産を潤沢に備えていることは、よい人生の重要な要素の一つだ。
最後は変身資産。100ライフを生きる人たちは、その過程で大きな変化を経験し、多くの変身を遂げることになる。そのために必要なのが変身資産だ。自分についてよく知っていること、多様性に富んだ人的ネットワークをもっていること、新しい経験に対して開かれた姿勢をもっていることなどが含まれる。
本は11章ありますが、以上の内容はわずか1~2章のものです。私はこの無形の資産の中で、変身資産に興味をもちました。これからの私にとって何か新しいことをやるとしても、これは必要だと感じました。 ~次回に続く~
リンダ・グラットンさん