kabu達人への道

マスコミで深く触れられることのない投資の裏側や
投資にあたっての疑問など赴くままに綴っていきます。

逆風

2022-04-03 11:39:37 | 日記
米労働省が1日発表した3月の雇用統計(季節調整済み)で景気動向を反映する
非農業部門の就業者数は前月比43・1万人増でした。市場予想(49万人程度増)
は下回りました。失業率は3.6%と前月から0.2%改善しコロナ前の2020年2月の3.5%
に近づきました。5月のFOMCでは0.5%の利上げになる確率が一段と高まるのは避
けられないようです。

思い起こせば今年の年初にはFRBが0.25%ずつ年4回利上げがメインシナリオでした。
しかし既に今年は0.25%の利上げをFOMCごとに行い3月以降計7回の利上げが見込ま
れるほど高くなりました。さらに利上げ加速が必要だという見方も出てきて5月には
0.5%の利上げがより現実味を帯びてきました。少なくとも市場が描いたよりもイン
フレ懸念は高くなりFRBは景気よりもインフレの抑え込みに重点を置くことに舵を
切ったようです。

足元の景気が堅調ならやはり利上げ加速は必然でしょうか。市場が懸念しているのは
FRBが利上げを急ぎ過ぎて結果的に景気を失速させ、しかもインフレも抑え込めない
状況です。もっとも現時点ではそれは最悪のシナリオです。米国景気はそこまで足腰
は弱くなくて景気の落ち込みは避けられるという見方です。まあどちらに転ぶかは分
からないので時点では両睨みのスタンスがベターでしょうか。

インフレの行方やFRBの引き締め政策をより複雑にしているのがロシアが突然ウクラ
イナに進行したウクライナ危機に端を発した天然ガスや原油価格の急騰やアルミやニ
ッケルなどの非鉄金属の急騰です。いずれも経済にとって重要な資源ですし少なから
ずインフレを増幅する原因です。また世界の小麦輸出国であるロシアやウクライナだ
けに穀物価格の上昇も世界的なインフレの高まりを呼び起こしています。

ウクライナは家畜の飼料であるトウモロコシの一大生産国でもあります。小麦の値上
がりでパンの価格が上昇し、飼料の値上がりで牛や豚、鶏の価格も上昇しています。
この3か月間を振り返ると予想外の出来事ばかりです。

1年前の株式市場を振り返れば再生可能エネルギーへのシフトで関連銘柄は大人気でし
た。一方脱炭素社会への移行で化石燃料は悪者扱いでした。政府系中心に年金基金は
エネルギー企業から投資を引き揚げ、金融機関はエネルギー企業への融資を絞る動きが
鮮明でした。ウクライナ侵攻は脱炭素社会という流れを一変させました。

EVシフトにもまた逆風が吹くのでしょうか。テスラのモデル3の車両価格をこの1年で
1万ドル上昇しました。EVは車体を軽くするためにガソリン車よりもアルミを多く使用
しています。また同の使用量もEVはガソリン車の3倍と言われています。また車両価格
の三分の一を占めると言われるリチウム電池の原料であるリチウムやニッケル価格も高
騰しています。

テスラだけでなくEV業界全体で製造コストの大幅上昇が進んでいます。車両価格の急上
昇で今後EV販売がこれまでの予想通りに増加するかは怪しくなってきました。また安価
なロシア産天然ガスの調達が難しくなり欧州では石炭火力への依存度が再び高まりそう
です。CO2排出量の多い石炭火力で作った電力で給電したEVが環境負荷が低いとは言え
なくなりそうです。化石燃料が見直されたようにガソリン車の巻き戻しが短期的には起
きそうです。EVシフトを加速した欧米メーカーには逆風となるかもしれません。

次回の更新は5日を予定しています。

コメント
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