漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「袁 エン」<遠い・長い>と「遠エン」「園エン」「薗エン」「轅エン」「猿エン」

2024年03月15日 | 漢字の音符
  改定しました。
 エン  衣部 yuán 
    
解字 袁は「遠エン」の音符字から分離してできた字。袁姓は河南省を発祥の地とし、四川、華北、江南にかけて幅広く分布する。歴史書の伝説によれば、舜の子孫である陳の公族、轅濤塗エントウトが太康県(現在の河南省周口市の県)に領土を与えられ、その子孫が祖にちなんで轅から車を省いた袁を姓としたのに始まるとされる。袁姓の人が歴史上で数多く活躍し始めるのは前漢の頃からである。
意味 (1)[説文解字]は、「長い衣服のさま」とする。 (2)姓。「袁紹エンショウ」(後漢末の武将。曹操と戦って敗れた)「袁山松エンサンショウ」(晋代の官吏。「後漢書」を著す)「袁凱エンガイ」(明代初期の詩人)「袁世凱エンセイガイ」(中国清末・中華民国初期の軍人・政治家)

イメージ 
 「姓」(袁)
 「遠い・長い」(遠・園・薗・轅)
 「形声字」(猿)
音の変化  エン:袁・遠・園・薗・轅・猿

とおい・ながい
 エン・オン・とおい  辶部 yuǎn

解字 甲骨文第1字は「彳(ゆく)+〇(円)+衣(上下に分かれる)」の形。「彳(ゆく)+衣」は衣を着て行く意(この形も甲骨文にある)。〇(円)については諸説あるが、円エンの発音を表す音符だとする説がある。第2字は、上から「止(あし)+衣+又(手)」の形。衣を手で身に着けて止(あし)で出かける形で、〇(円)はない。甲骨文の意味は、地名またはその長、および祭祀名だというから、字体の本来の意味は分からない。
 金文第1字は甲骨文の両方を取り入れた形で、「彳+止+〇(円)+衣(上下に分かれる)」(止と衣の亠は一体化している)、第2字はさらに下に止(あし)が付いた形で、この止は上の彳と合わさると辵チャク(=辶)となり行く意。金文の意味は遠近の遠の意になっている。
 篆文は「辵チャク+屮+〇(円)+衣(上下に分かれる)」となり、金文の止が屮に略された。意味は「遥かなり」とあり遠い意。形は隷書レイショ(漢代)の変化をへて現代字の遠になったが、袁の部分は「止と衣の上部」⇒土になり、下部の衣あしは、レ⇒ | に変化した。
意味 (1)とおい(遠い)。距離の隔たりが大きいこと。「遠足エンソク」「遠方エンポウ」「遠因エンイン」「遠隔エンカク」「遠洋エンヨウ」 (2)時間の隔たりが大きいこと。「遠紀オンキ・エンキ」(宗派の祖をたたえる法会) (3)隔たりが大きい。親しくない。「疎遠ソエン
 エン・その  囗部くにがまえ yuán
解字 「囗(かこみ)+袁(=遠。長い)」の会意形声。囲いの長い広い敷地。新字体のため、袁の下部のレ⇒ | に変化。[説文解字]は「所以樹果也。从囗袁聲。」(果を樹(う)える所以(ゆえん)なり。囗(かこい)に従い袁の聲(声)」とし、果樹を植える場所とする。
意味 (1)その(園)。果樹・野菜・草花の畑。「梅園バイエン」「菜園サイエン」「農園ノウエン」「庭園テイエン」 (2)人々が遊歩したりする憩いの場。「苑園エンエン」「名園メイエン」 (3)一定の区域とその内部の施設。「学園ガクエン」「動物園ドウブツエン」「楽園ラクエン
 エン・その  艸部 yuán
解字 「艸(くさ)+園(その)」の会意形声。その(草木を栽培する区域)の意味を艸をつけて強めた字。園と同字だが、人名や地名に用いられることが多い。新字体に準じて、袁の下部のレ⇒ | に変化。
意味 その(薗)。果樹などを植えた畑。一定の区域や庭。「薗田そのだ」(姓)「上薗うえぞの」(姓)「薗子そのこ」(名前)「薗原湖そのはらコ」(地名)
 エン・ながえ  車部 yuán

御所車(牛車)の轅
解字 「車(くるま)+袁(=遠。長い)」の会意形声。車の前方に出ている長い棒。一本の棒では先端に横木をつけて二頭の馬に引かせる。二本の棒では中に牛馬を入れてひかせる。
意味 ながえ(轅)。写真は車の前方に出ている二本の棒(牛馬を中に入れてひかせる)。「轅下エンカ」(轅の下。人に使われること)「轅門エンモン」(陣営の門。軍の門。中国で、戦陣で兵車を並べて囲いとし、出入り口は兵車の轅を向かい合わせて門にしたことから)

形声字
 エン・さる  犭部 yuán
解字 「犭(けもの)+袁(エン)」の形声。エンは爰エン(引く)に通じ、木の上に住みつき枝を引く猿を表わす。猨エンはサルの正字。
意味 さる(猿)。「猿猴エンコウ」(サル類の総称。猴もサルの意)「猿啼エンテイ」(サルの鳴き声)「犬猿ケンエンの仲」
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
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