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オバマの目指すもの(5)クィックヒット

2009-01-30 12:08:00 | 国際・政治

就任後最初の100日間は新大統領を批判しないというのが、米国スタイルだそうだが現下の世界経済危機は100日も待っていられない、連日報じられる経済指標は深刻度を増している。景気の気は人の心であり、消費者(そして企業)が将来への自信を取り戻すことが重要だ。

市場は冷静だが、米国民の新大統領への期待は過剰なほどに大きい。就任演説でオバマ新大統領は先に横たわる問題に立ち向かう為、米国民は責任を果たせと説き抑制した内容になった。選挙戦時の希望と期待に満ちた演説を封印して、問題の深刻さを印象付けるものだった。国民は戸惑いがあったものの概ね支持したと報じられた。私は「今のところ」とイタリックで付け加えたい。

彼が登用したホワイトハウススタッフ及び閣僚は、論功行賞で仲良しクラブを作った前大統領に比べ、実績があり名前のある人材で構成された手堅い陣容となっており、異なる意見の持ち主であっても必要な人材なら危機を乗り越える為に共に戦うと、大統領の自信と決意を示したものと思う。彼がイデオロギーに囚われないプラグマティストであることが明確に示された。

就任初日から、ロビー活動と政府が一線を画す大統領令の発行から始まり、キューバ・グアンタナモ基地の捕虜収容所の閉鎖、人工中絶禁止の緩和、幹細胞研究の補助金再開など矢継ぎ早に前大統領の方針を覆す大統領令を出し、誰にも分かる形でオバマ色を前面に出した。

だが、これは謂わば「決めれば良い」だけの容易な政策転換で、取り組まなければいけない大物に立ち向かう為に必要な露払いのようなものだ。本命の経済回復は消費者・企業の自信回復にかかっており、もっと具体的には金融システムの安定化と雇用回復が鍵である。

しかし、たった100日で自信回復に向かうだろうか。どんな楽観的な専門家も景気刺激策が機能して100日で回復の道を歩み始めると予測していない。だが、その間に新大統領への期待が失望に変わると、天文学的な国債(借金)だけが残りドルは信頼を失い、米国経済は底割れする恐れがある、というのが大方の見方である。出来るだけ長く希望を持ち続けさせる戦術も重要だ。

国と会社では何もかも違うが、危機に陥った会社が経営コンサルタントを雇って建て直す時の例を紹介したい。コンサルタントが乗り込み建て直しのプランを実行する時、社長などトップの全面的なバックアップは必須だが、社員がコンサルタントとプランを信頼しない限り成功は覚束ない。

それどころか、社員は自分が否定されたと受け取り、再建計画を敵視する可能性が強い。だが、コンサルタントは当然それを予期して対策を打っている。その一つがクィックヒットと言って、早期に目に見える形で小さい成果を出し、社員の信頼を得て再建計画の弾みをつけると教った。

私は、オバマ大統領が正攻法で大胆な景気刺激策を打っていくのはもちろんだが、100日対策としてクィックヒットを仕込んでいるのではないかと想像する。見え見えだろうと何だろうと少しでも成果が現れ、新政権の景気刺激策に対する信頼が維持できれば少なくとも時間繋ぎにはなる。住宅市場が本命だが、もっと容易に目に見える形で改善が現れるものだろう。

蛇足だが、ホワイトハウスは既にオバマ色全開になったらしい。ハワイ育ちの彼はホワイトハウスの暖房温度を上げ、従来のフォーマルな格好からかなりリラックスした雰囲気に変えたという。北部出身のスタッフの中には、会議中うっすらと汗がにじむ程に高い温度設定になったそうだ。■

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