本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

お釈迦さま涅槃会

2018-02-15 13:25:08 | 十地経

私たちが、

さまざまなものに妨げられたり、

ふりまわされたり、

引きずられたりするのは、

大事な自分というものに

暗いからである。

そのために、現実の色々な状況に

一喜一憂しなければならない。

現実は絶えず変化して

一刻も停止しない。

このことが「諸行無常」といわれ

いかなるものも固定化して握ること

はできない。

 

それは「生滅の法」といわれ、

生あるが故に滅ありという真理に

基づいているからである。

そうした変化に、

自分をはっきりしないで

立ち向かうと、

成功したときはうぬぼれ、

失敗したときには悲観する。

みなから評判がよいと優越感を持ち

不評をかうととたんに劣等感に陥る

 

本当の自分がわからないと、

人間は独立することができない。

皆がしているから

自分もしなければならぬような

気になり、

誰もしていないから

自分も出来ないように思い、

他人の顔色を気にかけ

流行を追ったりして、

あくせくしなければならない。

 

自分を知らぬから他人を羨んだり

不時の出来事に取り乱したり、

病気や事件でたちまち

人生観がぐらついたり、と

そこには

自分を失っているという根本問題が

潜んでいるのである。

 

このように

私たちは自分を失っているが

しかしただ失っているだけでもない

たとえば

悲しいことだけれども、

私たちは時々

あまり大したことでもないのに

腹を立てたり、

ほんのわずかな損得にこだわって

いやしい振る舞いをすることがある。

あるいは

言わなくてよいことを言ったり、

しなくてもよい余計なことをする。

しかし

それだけで

終わってしまうのであろうか。

そういうことを言ったり、

したりしたあとで

私たちはそういう自分が

苦になりはしないだろうか。

つまらぬことに腹を立てた自分が

情けなくなり、

しなくてもよい余計なことをした

自分が情けなくなってくることは

ないだろうか。

 

もし、

そういうことがあるとすれば、

それは自分が問題になっている

ということであろう。

そして、これは

私たちの深いところで、

本当の自分に帰れ、

自分に目ざめよと、

私を呼び返している

声ではなかろうか。

さらに、こういうものは

老人とか青年とか、男性とか女性

あるいは境遇のいかんにかかわらず

どんな人の心の底にも動いている

心であり、

いわば全人類の心の底に

動いている魂と言ってもよいと思う。

 

浅い立場から人間を見ると

人間というものは

損がきらいで得が好きで、

苦労がきらいで楽がしたい

とばかり考えているようにも

見える。

また自分でも、

そういうものだと思い込んでいる。

しかし、

もっと深い自分に目ざめてみると、

損がきらいでもなく、

苦労がきらいなのでもない。

本当にやり甲斐のあることなら

喜んで損もしよう。

本当に意味のあることなら

喜んで苦労もしよう。

真に自分を実現したいというのが

深い人間の本心ではなかろうか。

そしてこれは

願っている本人も気がつかぬほど

深いところにある。

 

楽をしよう、得がしたい

というのは

人間の浅いところにある

考えであって、

その考えに引きずりまわされ、

かきたれられて、

あがき苦しみ、

自分を失って、

さまよっているのである。

しかし、

思いもよらぬ深いところにある

本当の自分に目ざめて、

はじめて人間は本当に

人間としての満足を感ずるのでは

ないだろうか。

 

「生滅 滅し已って」

(しょうめつ めっしおわって)

というのは、

いろいろの現象にとらえられている

自分の心が、

それから解放されて真の自分を

とりもどした境地であり、

そこに

あらゆる変化にしずかに応じ得る

不動の心を自覚できるのである。

 

これを

「寂滅を楽となす」

(じゃくめつをらくとなす)

というのであろう。

それこそ本当のしあわせである

というのである。

「汝自身に帰れ」という

呼びかけは、

いつでも私の深いところに

私一人でなく、

全人類の根底を貫いて流れ

確実に動いている。

 

これこそ

消そうとしても消えぬ

全人類の魂であり、

釈尊は具体的に、

人類の歴史のなかに

それを知らせるため、

偉大な人格として出現した

のであり、

それはまことに

人類史上のヒマラヤの峰

というにふさわしい。

 

2月15日は

お釈迦さまの涅槃会

安らかな静かな姿で

涅槃に入られました。

お釈迦さまの本当の願いを

知るうえで、

安田先生の一番のお弟子さん

仲野良俊先生の言葉を

紹介させていただきました。

 

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする