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ぽかぽか春庭「吉原展」

2024-05-05 00:00:01 | エッセイ、コラム

20240505
ぽかぽか春庭アート散歩>2024アート散歩(2)吉原展

 夫といっしょの美術館めぐり。夫は芸大美術館に入ったことがないというので、芸大の音楽部と美術部のキャンパス見学もしようと思っていたのですが、4月6日は、芸大両学部の入学式でした。ぴかぴかの新入生を連れた親御さんもたくさんいたので、キャンパス見学は遠慮して、 芸大美術館で吉原展を見ました。

 夫は、落語が好きで寄席にも足を運んでいます。私も落語は好きですが、寄席はしばらく出かけていません。数年前に池袋演芸場に出かけたのが最後です。それでも、テレビで「なつかしの名人芸」というような番組があると、録画しておいて楽しみます。最近では枝雀の「壺買い」談志の「居残り佐平治」をNHKのアーカイブス放映で楽しむことができました。
 夫は話芸は寄席がいちばん、というのですが、古典だと今の若い人には通じないことが多そう。吉原についても、悲惨な人身売買があったことは事実として、江戸の文化のひとつとして受け止めるべきところは、知っておかなければ。、と思ってきました。

 辻村寿三郎の制作による人形と吉原


 50年前、日本文学の授業で吉原について教えを授けてくれたのは、神保五弥という先生。教授に昇進して数年の若手研究者で、なにかというと「おまえらは、ほんと何も知らんな。馬鹿ばっかり」というのが口癖でした。花魁の次の階級はなにか、という質問に答えられない学生がいると「おまえら、ほんとうに無知だな」「(ギュウ)」は、吉原でどんな仕事をするのか」という質問に答えられないと「何も知らないやつらに、江戸文学を教える気にもならない」
赤線も廃止されていた時代、花魁の階級なんて知るはずもない。戦後生まれ世代でした。

 今ならちょいちょいとぐぐればでてくることですから、今の若者のほうがエド文学に強くなれるかも。牛とは「妓夫(ぎふ)」のなまりで、妓夫(ぎふ)。遊女やで客引きや遊女の護衛をする男。 妓夫太郎という呼び名から牛太とも。

 現代では、歌舞伎も浮世絵も江戸文化の粋として称揚されていますが、今の若い人々にとって、国語の教科書に『たけくらべ』の冒頭を読まされるのがせいいっぱいの「吉原」です。
廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火ともしびうつる三階の騷ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行來ゆきゝにはかり知られぬ全盛をうらなひて、大音寺前だいおんじまへと名は佛くさけれど、さりとは陽氣の町と住みたる人の申き
という擬古文をつっかえつっかえ読み、国文教師から「ほら、五千円札の人の作品だからな、試験に出すぞ」と言われて、大門というのが吉原の入り口だ、というのを覚えるのです。

東京芸大の口上
 約10 万平方メートルもの広大な敷地に約250 年もの長きに渡り続いた幕府公認の遊廓・江戸の吉原は、他の遊廓とは一線を画す、公界としての格式と伝統を備えた場所でした。武士であっても刀を預けるしきたりを持ち、洗練された教養や鍛え抜かれた芸事で客をもてなし、夜桜や俄など季節ごとに町をあげて催事を行いました。約250 年続いた江戸吉原は、常に文化発信の中心地でもあったのです。3 月にだけ桜を植えるなど、贅沢に非日常が演出され仕掛けられた虚構の世界だったからこそ、多くの江戸庶民に親しまれ、地方から江戸に来た人たちが吉原見物に訪れました。そうした吉原への期待と驚きは多くの浮世絵師たちによって描かれ、蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)らの出版人、文化人たちが吉原を舞台に活躍しました。
 江戸の吉原遊廓は現代では存在せず、今後も出現することはありません。本展では、今や失われた吉原遊廓における江戸の文化と芸術について、ワズワース・アテネウム美術館や大英博物館からの里帰り作品を含む国内外の名品の数々で、歴史的に検証し、その全貌に迫ります。
 
 展示は、吉原の様々な文物をならべ、興味深いものでした。いままで活字翻刻版でみるだけだった『吉原細見』の実物も展示されていたし、遊女を描いたさまざまな浮世絵を見ることができました。
 高橋由一の『花魁』は、芸大の所蔵品だからなにかというと展示があり、私も数回は見てきました。夫は、落語の理解には吉原は欠かせない、という観点から観覧しています。

 高橋由一 「花魁」


 吉原の全貌を知るには、まだまだ見分不足だし、ましてやここに閉じ込められて生活していた女たちの気持ちもわかるようにはならないだろうけれど、吉原を描いた作品に少しでも近づけた『吉原展』でした。

 
<おわり>
コメント
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