五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 今月のナポレオン

2015年12月04日 | ◆[不定期] ヤングキング・アワーズ

ヤングキングアワーズ 2015年6月号より

 今月の『蒼き鋼のアルペジオ』感想はこちら
 今月の『僕らはみんな河合荘』感想はこちら
 
 
 
 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 
 
 
 
 

●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)

 

 サラゴッサの戦い!

 市長であるパラフォックスがサラゴッサへ戻り、イギリス軍の加勢が来ないことを
 市民たちに告げていますが、ここからがゲリラ戦の始まりとなるようで・・・

 パラフォックス自身は、いずれサラゴッサが陥落するだろうと考えつつも、
 ここで「ゲリラの種を撒こう」としているらしく、固い決意を感じさせる面持ち。
 今回、そんな彼に率いられたサラゴッサ市民と、大陸軍の戦いが描かれます。

 

 

 

 攻めるのは、ランヌ元帥!

 市民の頑強な抵抗に対し、ランヌは「皆殺しにするしかない」と言い放ち、
 建物を爆破して、市民ごと一掃しようとするあたり、容赦ない。

 そんな中、ランヌさんの昔馴染みシモンが、片手を失う事態になってましたけど、
 サラゴッサ市民が使っている銃弾が、えげつない仕様になっている所に、
 スペインの人々の必死さと、大陸軍へのつよい敵意を感じざるを得ませんでしたね。

 また、シモンさんが失った片手に、涙の別れを告げる場面。
 その切なさもありますが、それを見たランヌ元帥は何を思ったのか・・・

 ただ泰然と平然と「戦争だからな」と言いながら、市民を吹っ飛ばすランヌに、
 かつての“狂戦士”の面影は、まったくありませんでしたね。

 

 

 

 サラゴッサ陥落後・・・

 はげしく抵抗した市民も、やがて降伏。
 ランヌ元帥のみせた温情が、彼らに降伏を選ばせたという点には、
 少しだけ救いを感じましたね。

 しかし、パラフォックス市長は、ランヌ元帥に命乞いを始めます
 軍人の3分の1・住民の半分までが死亡した戦いの後で、市長が命乞いとは、
 これが、あのムーア将軍に教えを授かったパラフォックスくんなのか!?

 と、失望しかけはしたものの、これは全て演技というから、なかなかやるもの。
 とはいえ、ランヌさんの方は演技だと見抜いたうえで、これだけの戦いを行なった
 パラフォックス市長と酒を汲みかわしたかったらしく、そのすれ違いは切なかった。

 “戦士”であるランヌさんとしては、パラフォックス市長を認めていたのでしょうね。
 けれど、パラフォックスの方は、フランス軍を追い出すべき敵としてしか見ていない。
 当たり前の話ですけども、この意識の断絶が生むものこそが、戦争なのでしょう。

 

 

 

 “サラゴッサの乙女”と、マルボさん。

 サラゴッサ市民の中で、ひときわ異彩を放っていた女性。
 迫るフランス兵に対し敢然と砲を放ち、パラフォックス市長から
 「中尉」に任命されていました。

 これは、いわゆる「サラゴッサの乙女」といわれる逸話ですよね。
 砲手だった婚約者が死亡したことで、彼の代わりに戦い、
 市長も戦意高揚をねらって彼女を中尉にしたとかなんとか・・・

 私も詳しくないので、よくは存じ上げないのですが、そうした話なのだとか。
 そんな逸話の女性に、マルボさんが恋をしたものだから、面白いことに。

 殺されかけたにもかかわらず、殺そうとしたスペイン女性に恋をする。
 その話を聞いたランヌ元帥も、「恋ってやつが馬鹿みたいなもん」なのだと、
 理解を示していたのが、さすがというか何と言うか(^^;

 それから陥落後、兵士たちに襲われそうになっていた彼女を、
 マルボさんが救う場面、なんともロマンチックで素敵でした。

 ランヌ元帥も助け舟を出して、丸く収まっていましたけれど、
 そこで不平を述べつつも、祝福の言葉を残して去る兵士たちも愉快でしたね。
 ちなみに、“サラゴッサの乙女”の最期は、病死と言われているようです。

 

 

 

 しかし、戦争は悲劇であり・・・

 その後、マルボさんに対して、悪感情を持っていたわけではない、
 むしろ好意すら向けていた女性が、それでも彼女はスペイン人なのだと、
 はっきり見せつけるような出来事が・・・

 彼女の涙と笑顔、そしてマルボさんの絶望が、突き刺さってきましたね。
 その出来事を眺めていたランヌ元帥は、表情こそ変えてはいなかったものの、
 続く言葉からは、彼の苦い心中を察せられて、心に響いてきました。

 かつて、戦いの申し子のように、ひたすら戦場で勇猛さを見せつけてきたランヌ。
 その彼の心中の変化は、ナポレオンの落日の幕開けを予感させるものでもあります。

 厭戦気分が、じわじわと浸透しつつある大陸軍。
 それとは裏腹に、ナポレオンは己の覇道を突き進む情熱にあふれていて、
 その落差が寂しく、かつ不吉に感じられてしまいます。

 ナポレオンの権力は、戦争によって成り立ち、勝利に支えられたもの。
 それが微かに揺らぎ始めている状況が、これから大勢にどう影響してゆくのか・・・
 黄昏を感じつつも、今後も楽しみです!

 

◆ ヤングキングアワーズ 感想
 


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