五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 『田中さんちの白米ちゃん』1巻 これは4コマ漫画における“食材”の宝石箱やー!!

2011年06月17日 | ◆4コマ漫画 感想

池尻エリクソン先生による4コマ漫画作品です。

「まんがくらぶ」「まんがライフ」で連載中!

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 ・ 池尻先生のブログ:池尻さんち

 ・ livedoor デイリー4コマ 池尻エリクソン先生の作品ページ

 

 

【あらすじ】

 田中さんちの白米ちゃんは、あきたこまち。

 「お米」である白米ちゃんをはじめ、相棒のみそ汁ちゃん他、

 さまざまな食材たちがくり広げる擬人化コメディ4コマ漫画です。

 

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 「今日もおいしくたけますた」

 料理好きの田中さんにたかれて喜ぶ白米ちゃん。 

 相棒・みそ汁ちゃんといっしょに、田中さんの食卓をいろどるメインとして活躍します。

 

 田中さんには、白米ちゃんたちが見えておらず、

 逆に白米ちゃんたち食材は、田中さんを見ているという一方通行。

 その食材と人とのコミュニケーションの不在が、食材たちのすごす空間を際立たせ、

 独特の世界観を形成して、読者を楽しませてくれる作品に仕上げています。

 

 

 

【感想】

 この作品は、

 ・ 食材擬人化の見事さ。

 ・ 擬人化された食材たちの愛らしさやコミカルさ。

 ・ その愛らしさに、過酷なまでの4コマ・オチをつけられる面白さ。

 ・ 時に感じる長閑さや、しみじみ感。

 などに良さがあると感じます。

 

 

・擬人化された食材たち

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 左は、トマトちゃんとの女子トークに花を咲かせる白米ちゃんたち。

 右は、白米ちゃんが苦手とする食材・納豆たちです。

 このように、いろんな食材が擬人化されて登場し、

 白米ちゃんたちと交流したり騒いだりと、愉快な空間を創り出しています。

 

 トマトちゃんの好きな“野菜”であるピーマンくんなどは、

 男らしいけれども「中身スカスカ」というピーマンらしい擬人化のされ方をしていて、

 そんなところにも思わず納得してしまうというか、「ウマい」と思わされる絶妙さがあったりと、

 食材それぞれの特徴をつかんだ擬人化の見事さに、うならされることしばしばなのです。

 この他にも、魅力的で面白い擬人化された食材たちがわんさと登場しますよ。

 

 

・愛らしさ ⇒ 過酷なオチ

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 「2人セットで主役」「和食の黄金コンビ」と喜ぶ白米ちゃん&みそ汁ちゃん。

 なんとも愛らしく、けなげな2人の様子が微笑ましい・・・

 と、そこへ田中さんが持ってきたメインはハンバーグ!

 白米ちゃんたちの素朴さに比べると、なんとも垢抜けたムチムチプリプリっぷりで、

 完全に「主役」の立場を奪われるというオチがつき、その落差に笑いを誘われるネタと

 なっています。

 

 こんな風に、単に愛らしいだけではない可笑しみを含んだ4コマ・ネタが満載の作品。

 それが『田中さんちの白米ちゃん』なのです。

 

 

・あくまで主役は食材。

 本作品の主役は食材であることを、的確に表現しているのが「人間」の描き方です。

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 白米ちゃんたちのご主人様である田中さんたち「人間」は、白米ちゃんたちが視えません。

 そのことを象徴するかのように、田中さんはじめ、彼の同僚・木下さんなど、

 登場する「人間」たちには目が描かれていないのです。

 これは単にそうした象徴的意味のほかに、目を描かないことによって

 存在感の希薄化を促し、あくまで主役は白米ちゃんをはじめとする食材たちなのだと、

 読者の意識を誘導する効果を発揮していると考えられます。

 

 が、だからといって彼らが無個性かと言うとそうでもなく、

 料理好きでしっかり者・だけどモテない田中さんや、

 美人で活動的・だけど料理下手な木下さんといったように

 キャラクターはきちんと練られていて、読者を楽しませてくれる存在になっています。

 ただし、あくまで「わき役」として・・・ですが。

 

 

・食材たちへの感謝の念を・・・

 基本コミカルな4コマ作品ではありますが、時には胸にしっとりくるような感覚も。

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 「お米の1粒1粒に感謝しながら残さず食べなさい」

 その1粒1粒に神様がいる・・・といったようなことを聞かされて、

 子供時代を過ごされた方もおられるやもしれません。

 そこには汎神論的な考え方とでもいうのでしょうか、日本的な情緒を感じてしまうのですが、

 こうした情感を具現化したものこそが、この白米ちゃんたち擬人化された食材たち・・・

 なのかもしれません。(ゆえに人には視えない)

 

 結局は食べられてしまう食材たち。

 でも彼らは、食べられることこそを自分たちの在り方として自覚し、

 そのために精一杯「生きて」いる姿を見せてくれています。

 だからこそ、食材1つ1つに対する愛着も増そうというものですし、

 食べ物を粗末にできない、大切にしたいという想いも生まれるというもの。

 

 そんな気持ちにさせてくれる本作品。

 読み終わった後には、「ごちそうさま」の一言を添えてやってみてください。

 4コマ漫画としての面白さもかなりのもの、きっと満足できる“食卓”になることでしょう!

 

 

(追記)

 よつぎりポテトさん記事の「おとなり感想」に取り上げていただいたようです。

 ありがとうございます!