ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ルトガー・ハウアー/危険な愛

2008年04月08日 | 映画レビュー
 ヴァーホーヴェンのミューズといわれたモニク・ヴァン・デ・ヴェンはとっても愛らしい。惜しげもなく裸体を曝して大熱演。

 最近では少なくなった、ボカシの入った画面には苦笑。劇場未公開だから映倫指定は不明だけれど、当然にもR-15かひょっとしてR-18になるかも。←R-18でした。

 インモラルな若者たちが無軌道に繰り広げるセックスとバイオレンスの世界。と思いきや、実はとても切ない純愛物語。巻頭いきなり凄惨な殺人の場面から始まり、画面が切り替わると廃墟のように荒れた部屋のベッドに下半身をむき出して横たわる若者の姿が映る。彼は壁に貼った女性のヌード写真に向かって自慰行為にふけると、次の場面ではその彼が次々と女をたらしこむ。このあたりはスピード感をもって観客をぐいぐいと引き込んでいく。そして衝撃的な巻頭のシーンから突如2年前の回想シーンへと転回する。この映画もまるでヌーヴェル・バーグ作品のように場面展開が急激で、話がぽんぽん飛び、登場人物たちはコロコロと心理が変転する。だが、違和感なくひきつけられていくのは、その後のヴァーホーヴェン作品の原点といえる露悪趣味的なセックスと排泄物の描写がエグイながらもどういうわけか観客の目を釘付けにしてしまう力を持つからだろう。釘付け、と言いながら実はわたしは何度も目をふさいでしまったけど。

 主人公ルトガー・ハウアーはヒッピーな芸術家で、その妻となる若い女はモニク・ヴァン・デ・ヴェン。二人とも若さ溢れるパワフルな演技をみせている。親の世代や権威的な「世間」(「世間」という概念は日本語にしかないそうなので「」付き)に逆らって気ままに生きる二人だけれど、生活に疲れて仲はぎくしゃくし…。後先考えない青春の疾走ぶりが見事で、ヴァーホーヴェンの演出も過度に下品でエロティックかと思えば耽美的で重厚な画面作りに凝ってみたり、モニクに大口開けてダミ声で笑わせるかと思うと愛らしく微笑ませたり、緩急自在の演出に見ているほうが翻弄される思いだ。

 撮影監督はヤン・デ・ボン。鏡を使ったモニカの裸体シーンは狙いに狙ったという美しい場面だった。

 セックス、バイオレンス、スカトロ、セックス、セックス、という映画かと思いきや、終わってみれば最後は切ない。エロスは常に死と隣り合わせにあるというヴァーホーヴェンの哲学が現れている。

 正直言ってこういう映画は好きではない。それなのに惹かれるものがあるのは、結局のところ究極の純愛ものだからだろう。(レンタルDVD)

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TURKS FRUIT
オランダ、1973年、上映時間 100分
監督: ポール・ヴァーホーヴェン、製作: ロブ・ホウワー、脚本: ジェラルド・ソエトマン、撮影: ヤン・デ・ボン、音楽: ロジェ・ヴァン・オテルロー
出演: ルトガー・ハウアー、モニク・ヴァン・デ・ヴェン、トニー・ハーデマン、ドルフ・デ・ヴリーズ

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