ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

司書・学芸員の専門性について考える緊急イベント開きます

2008年05月21日 | 図書館
 わたしも呼びかけ人となって来週の水曜日、急遽下記のようなミニ集会を開きます。この文章は転載引用大歓迎です。いくらでもコピーしまくってどんどんお知らせください! よろしくお願いします。

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 今こそ、専門分野の司書・学芸員の“専門”を問う
~図書館・博物館における専門スタッフの役割を考える集い~

 
みなさまご存知のように、大阪府の改革プロジェクトチーム(PT)によって、専門情報提供機関や文化関連施設の存続が危機に直面しています。

 この問題に関してマスコミ等で取り上げられるのは、建物というハードや事業内容などにとどまり、そこで専門的業務を担っている“人”には焦点があたることはほとんどありません。

 司書や学芸員として働く専門職スタッフは何を担ってきたのか、このようなポストが失われることによって何ができなくなるのか、府民にはどんな損失があるのか。

 それぞれの分野で資料や情報収集・組織化・提供に携わる専門職が自らの“専門”をリレートーク形式で語り、分野を超えてこれからの展望を共有していきたいと考えます。図書館・博物館で働く方々だけでなく、利用者の皆様をはじめ興味をお持ちいただけるかた、どなたでも参加歓迎です。

 また、集いの前に大阪府労働情報総合プラザと大阪社会運動資料センターの見学会を開きます。集会後に会場近くで懇親会も予定していますので合わせてご参加ください。


●日時:5月28日(水) 
      見学会17時~18時(エルおおさか南館2階に集合)
      集い 18時30分~20時30分(エルおおさか本館6階)              
●場所:エルおおさか604号室(6階)
      大阪市中央区北浜東3-14 電話06-6942-0001
       地下鉄谷町線/京阪「天満橋」駅下車、西へ350メートル
●参加費:300円(会場使用料)
●スピーカーの所属施設(コメント参加もあり)
      大阪府立国際児童文学館、ヒューライツ大阪、ピースおおさか
      リバティおおさか、ワッハ上方、解放人権研究所図書室りぶら
      大阪府労働情報総合プラザ、ドーンセンター
●内容  
      ・リレートーク・・・1人8分×8人=64分
      ・参加者を交えてのフリーディスカッション・・・40分

●呼びかけ人
      木下みゆき(ドーンセンター)
      谷合佳代子(財団法人大阪社会運動協会)

●お問い合わせ・参加申し込み
      ご連絡はなるべくメールでお願いします。
      飛び込み参加も可能ですが、前日までに谷合宛、メールにてお申し込みください。
      見学会、懇親会への参加の有無も合わせてお知らせください。

        (財)大阪社会運動協会・谷合佳代子 
                メール shaunkyo@topaz.ocn.ne.jp
                電話  06-6947-1210


チャンス!

2008年05月19日 | 映画レビュー
 黒人でかつ女性。およそアメリカ社会の最底辺の一角を占めるに十分な資質をもったローレルが金融市場で成功を収める痛快物語。

 ストーリーの構成はまったく定式どおり。大企業のやり手社員として活躍していたローレル(ウーピー・ゴールドバーグ)が、同僚男性社員にだまされ出し抜かれたことに怒って辞表をたたきつける。そして独立して自分で投資信託会社を設立したけれど、いっこうに客はつかず…という苦労の果てに成功する物語。めでたしめでたし。

 しかし、この物語の面白さは、女性経営者が信用されないと知ったローレルが、いもしないカリスマ社長をでっちあげたところ。架空の人物「カティ」が行うすべての取引が大成功し、顧客は儲けてローレルも大成功。しかし、彼女はすべての手柄を架空の白人男性「カティ」に持っていかれることの理不尽に耐えかねて…

 とにかくどたばたが楽しい。それと、ローレルの窮状を見かねてやってきた秘書のサリーの素晴らしさだ。アメリカ人は日本人のようにへりくだらないとはきいていたが、平気で自分のことを「優秀だから」と自慢して売り込むのには驚くと同時にすがすがしさを感じた。サリーを演じたダイアン・ウィーストのおばあちゃんぶりがほほえましく、この映画でもっとも美しい場面ではなかろうか。この映画に出演したときダイアン・ウィーストは48歳、今のわたしより若いのに、すっかりおばぁちゃん化しているのには驚きだ。しかも優秀な秘書であり、笑顔が最高に素晴らしい柔らかな女性であることがうれしい。

 笑って笑ってすっきりさわやか! 女性観客はみんな大喜び! ……というほど単純じゃないのよね。世界帝国アメリカの金融市場で勝ち組になることがそんなに素晴らしいことだろうか? こちらからあちらへと株を動かすだけで巨利を得るって、そんな仕事が倫理的に許されるのか? まあ、この辺の価値観がわたしとは相容れないのでその分減点。でも確かに元気にはなれます。落ち込んでいるときには楽しめる映画。(レンタルDVD)

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THE ASSOCIATE
アメリカ、1996年、上映時間 113分
監督: ドナルド・ペトリ、製作: フレデリック・ゴルチャンほか、脚本: ニック・ティール、音楽: クリストファー・ティン
出演: ウーピー・ゴールドバーグ、ダイアン・ウィースト、ティム・デイリー、
ベベ・ニューワース、レイニー・カザン

王妃の紋章

2008年05月18日 | 映画レビュー
 中国恐るべし。夫婦喧嘩や親子喧嘩もここまで派手にされると唖然というほかはない。北京オリンピックの演出を任されたチャン・イーモウがこれでもかの渾身の絢爛豪華さを見せつける。

 時代は後唐王朝、短くも派手派手しく隆盛を誇った王家の家庭内紛争の物語。

 チャ・イーモウ作としては「HIRO」「LOVERS」の流れを汲む一大スペクタクル史劇だが、3作の中ではこの「王妃の紋章」がもっとも好感を持った。絢爛豪華さはほとんど頂点を極めてもうこれ以上できることはなかろうというぐらいの目眩がするほどのきらびやかさであり、大量動員人海作戦の戦闘シーンの迫力もただ呆然。しかし、そういった見世物としての面白もさりながら、この映画が役者の演技力を大きな魅力としていることも指摘する必要がある。主役のコン・リーの気品と美しさは目もくらむばかりであり、国王チョウ・ユンファの不敵で不気味な貫禄もまた絶品。

 そして、どんなに金をかけて大がかりな作品を作ろうとも、物語の根幹がホームドラマである点で、この映画はわかりやすくわたしたちにとっても身近なものなのだ。だからすんなりと受け入れやすい。テーマは政治と権力ではなく、家庭内の血肉の争いである。要するに夫婦喧嘩親子喧嘩、不倫もの、といったよくある話にすぎない。とはいえ、この「よくある話」の結末は悲痛悲惨なものである。

 王妃は王の先妻の息子である皇太子と不倫し、それを知った王は密かに王妃を毒殺しようと毎日少しずつ毒を飲ませている。毒を飲まされていることを知りながら王妃は毎日毎日王が特別に処方してくれた「薬」を飲み干す。王妃の身体は日に日に衰えていくが、国の重要な祝いである重陽の節句を期して王妃はクーデータを企てようとしていたのだった。辺境の地に修行にやらされていた第2王子も王宮に戻ってきたことであり、いよいよ重陽の節句の宴は開かれようとしていた…



 小心者の皇太子、勇敢な第2王子、まだ幼い第3王子。それぞれの個性も大変わかりやすく、また彼らの家庭内での微妙な位置関係もなかなか興味深い。偉大すぎる父王と美しく賢い母王妃。皇太子には不倫相手の義母王妃だけではなく若い愛人もいて、これまたややこしい話になり…。というように、スケールの違いだけで、どこそこの家庭にいくらでも転がっていそうなお話であるので、物語の筋はつかみやすい。さらにアクションシーンのスピードや迫力も堪能させてもらった。ワイヤーアクションもかなり控え目なので「作りすぎ」で辟易させられることはない。

 それにしても中国は人件費が安いおかげなのか全部CGで描いたのかは知らないが大軍勢の迫力は恐るべきものである。大軍の肉弾戦は「ロード・オブ・ザ・リング」以来幾度も見たのですっかり飽きたかと思ったが、なかなかどうして、これまた色彩の塗り分けや形式美の導入により、ものすごく面白い。血まみれの戦闘が「面白い」というのもなんだかぁとか「夫婦喧嘩に巻き込まれて死んでいく兵士もいい迷惑やなぁ」とか思ったけど、ここまで派手に美しく作ってしまうともう、「戦場の悲惨」などというものは感じられない。ただただ圧巻である。

  劇場でないとこの迫力は楽しめないでしょう。TVで見るなら大画面でないとダメ。

 中国の力技の恐ろしさを知りました。へへぇ~参りました、北京オリンピックのプレ広報映画とも言えますね。

 王家の滅亡を描く壮大な悲劇には、チャン・イーモウの哲学がかいま見える。栄耀栄華を誇り、権力欲に取り憑かれたど派手王朝の末路は現代中国の未来にも重ならないか?


 ところで、中国の大地震、たいへん心が痛む。ミャンマーのサイクロン災害といい、なんとかささやかな支援はできないものかと思うが、義捐金を送るぐらいしか能がない。ミャンマーに関しては軍事政権に金が渡ってしまわないよう、NGO「日本ビルマ支援センター」の人々が募金活動を始めている。ご協力を。

http://www.burmainfo.org/brcj/

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王妃の紋章
CURSE OF THE GOLDEN FLOWER
満城尽帯黄金甲
中国/香港、2006年、114分
監督: チャン・イーモウ、アクション監督: チン・シウトン、製作: ビル・コン、脚本: チャン・イーモウ、ウー・ナン、ビエン・ジーホン、撮影: チャオ・シャオティン、音楽: 梅林茂
出演: チョウ・ユンファ、コン・リー、ジェイ・チョウ、リィウ・イエ、リー・マン、ニー・ターホン、チェン・ジン、チン・ジュンジエ

運命じゃない人

2008年05月18日 | 映画レビュー
 つい最近観ましたねぇ、こんな構成の映画。そう、「バンテージ・ポイント」。同じお話を登場人物の視点ごとに描く。時間を何度もまき直して見れば…。という構成自体はそう珍しい話でもないので、いかにシチュエーションを面白く設定するか、人物を書き込むか、印象的なセリフで唸らせるか、演技力で魅せるか…。てなことを言い出したら、要するに勝負どころはほかの映画と同じね。別に取り立てて変わった映画ではない。でも面白かった。その面白さの源泉は、「意外性」だと思う。

 物語はまず信じられないぐらい人のいい真面目なサラリーマンを主人公にして、彼が偶然通りすがりの女を親切で自分のマンションに泊めてやろうとする、というお話。このサラリーマン宮田武はつい半年ほど前、婚約者にふられて傷心からまだ立ち直っていないのだった。そんな彼を見かねた親友で探偵業を営む神田勇介が宮田のためにナンパしてやった女が桑田真紀だ。真紀もまた婚約者に裏切られて荷物一つでマンションを飛び出してきたばかり。まずこのお話は「ちょっといいお話」程度の退屈な小話。などと思っていたら次に同じ話が神田勇介の目線になると一変する。ここからはぐぐっと面白くなるのだ。


 登場人物全員の目線で物語の全貌を知ったのは観客だけ。で、最後まで真相を何一つ知らなかったのは人のいい宮田だけ。つまり、もっとも善人たる宮田武は何も見えていない。自分が騙されたことにも気づいていない。その一方で物語のすべてを知った観客、そう、わたし。そう、この映画を観た人。これが一番の悪人かもね。なにしろこの物語を面白がってしまったのだから。善人が騙され続ける話を面白がるというのは相当悪いやつだ。

 というわけで、この映画は、観客の悪人度を試す作品です。……嘘です。(レンタルDVD)

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運命じゃない人
日本、2004年、上映時間 98分
監督・脚本: 内田けんじ、音楽: 石橋光晴
出演: 中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介、板谷由夏

ミクロコスモス

2008年05月17日 | 映画レビュー
 先週の休日に実家の両親がやってきたので、またしても家族全員で楽しめる映画を。というわけで今回わたしが選んだのは昆虫の世界を極小カメラで捉えた驚異の映像ドキュメンタリー。しかし、こども達が喜ぶかと思いきや、一番興味深く見ていたのはわたしの父、つまりはおじいちゃんでありました。


 いま思えば、本作にしても「WATARIDORI」(2001年)にしても同じテイストで作られている。制作者が同じだからこれは当然として、さらには「ディープ・ブルー」(2003年)も「アース」(2007年)にしても、同じく動物の世界をほとんどナレーション抜きで映像と音楽で描いたという点でも作りは似ている。

 前にも「ディープ・ブルー」のレビューで書いたと思うが、この映画は日本のテレビ番組がつけるような丁寧な解説は一切ない。虫どうしがいったい何をしているのかさっぱりわからないシーンもある。例えば、小さなダニのようなアブラムシが這い回る茎に天敵テントウムシがやってくるが、そのテントウムシを大きなアリが威嚇している。これはいったいどういうことかといえば、アリはアブラムシから蜜をもらうかわりにテントウムシを追い払うのである。この共生関係についてはわたしは息子たちから教わった。うちの子どもたちは雑学をよく知っているので、映画を見ながらあれこれ解説してくれるので助かる。


 極小の世界をあたかも人間の目でとらえたかのようにくっきりと映し出す驚異のカメラに感嘆すると同時に、小さな生き物の世界でなぜこのように秩序だった知恵の輪が生きているのか、不思議でたまらない。虫たちの共生や捕食の関係は遺伝子に組み込まれているものであって、誰も親からOJTを受けるものではない。人間は新人研修だの学校教育だのいろんな場で教育を受けなければ生きていくことができないというのに、なぜ文字も持たない彼らが生きるすべを知っているのか? なぜ虫どうしの共生関係(それは社会契約の一種だ)を知っているのか? 

 カメラは極小の世界を映し出すだけではない。天空からのカメラが自在に空を舞い地を目指し虫たちをクローズアップする見事なカメラワークには映画ファンの欲望を満たすようなすべらかな動きがある。

 虫の世界はまさしく息抜きも休息も娯楽も余暇もなく、淡々と彼らはひたすらに生きて労働している。労働することがすなわち生きることであり、生きることがすなわち労働である。

 働き蜂や蟻を見ているとつくづく思う。過労死せんのかね、あんたたち?!



 翻って、人間はどうだろう? どんなに懸命に働いているようであってもそれは所詮は浅知恵かもしれない。大阪府から図書館運営の委託を受けた初年度、働きすぎて腱鞘炎になり、鍼灸院に通ったことも、受託後まる1年経ったときに胃炎で入院してしまったことも、今思えばあれはいったい何のための苦労だったのだろうか? ゴミ捨て場に捨ててある什器を拾ってきたことも地下倉庫に捨てられていたショーケースをもらい受けにいったことも、それもこれも経費節減のための工夫であり、スタッフ一同の苦労であったのに、そのすべてが否定されようとしている。これほどの虚脱感があるだろうか?

 いえいえ、まだまだ。わたしはへこたれません。あ、映画と関係ない話になってしまった…(^^;)。(レンタルDVD)



 映画と関係ない話ついでに。最近毎晩聴いているのはマリア・カラスの「カルメン(ハイライト)」。ジョルジュ・プレートル指揮パリ国立歌劇場管弦楽団演奏の1964年録音。カルメン前奏曲を聴くと元気になります(^^)。物語じたいは悲劇だけれど、全体に音楽は勇壮で力強く、わたしは前奏曲を聴きながら踊っています。


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ミクロコスモス
MICROCOSMOS: LE PEUPLE DE L'HERBE
フランス、1996年、上映時間 73分
監督: クロード・ニュリザニー、マリー・プレンヌー、製作: ジャック・ペランほか、脚本: クロード・ニュリザニー、マリー・プレンヌー、撮影: クロード・ニュリザニー、マリー・プレンヌー、ユーグ・リフェル、ティエリー・マシャド、
音楽: ブリュノ・クーレ

NEXT ネクスト

2008年05月14日 | 映画レビュー
 自分の身に関係のあることがらだけに限られるけれど、2分先の未来が見えるという男クリス・ジョンソンの物語。彼はこの才能を活かして何か大もうけをするなどといったことはなく、ラスベガスの場末のクラブでしょぼいマジックショーを見せるだけの手品師にすぎない。カジノで賭はするけれど、決して目立つような大儲けはしないことを肝に銘じている。「特別な私」でありたいという近代人の肥大した自意識から対極にあるクリスは、しかしその才能をFBIに発見されてしまう。 

 この映画はいくらでもツッコミどころ満載のけったいなストーリーが無理矢理に展開していくのだが、そもそもからして、「2分先が見える」などというチャチな超能力しかない男をスカウトして「テロリストの手に渡った核兵器を取り戻す」などという大仰な任務に狩り出そうと発想するところが理解に苦しむ。その2分先の未来といっても、そのときどきの未来だから、いくらでも変更可能。ていうか、クリスは見えた未来に干渉するわけだから当然にも未来は変更されてしまっているのだ。では、いくらでも永久に変更され続けるのではないのか? つまりはいくら2分先が見えても意味ないやんか! このタイムパラドクスをどうしてくれる!? などと真面目にツッコミだしたらきりがないので止めておこう。


 2分先の未来が見えるという才能をナンパに使う最初の場面なんてほんと可笑しくって笑えます、これなかなか快調な滑り出し。ニコラス・ケイジの髪型が変、などとここでも文句をつけたいけれどこれまたぐっと抑えて、「運命の女」との運命の出会いを果たすクリスくんの奮闘に拍手。運命の恋人リズと出会い、彼女が先住民の居留地で子ども達に勉強を教えている場面が出てくるのだが、これがまったくなんの伏線にもなっていないのは不可解だ。まあとにかくリズの気持ちを捕まえたのはいいけれど、彼女はテロリストに誘拐されてしまう。2分先が見える技を最大限に生かしてクリスの闘いが始まった!

 冴えないマジシャン・クリスがどういうわけかFBIも真っ青のすごい戦士に早変わり! 最後は分身の術まで使いますから、ほとんど忍者の世界。面白ければなんでもいいという近年のハリウッド映画の王道を行きます。まあ、確かにけっこう面白かったから許す。

 この映画、なんといっても良いのはトーマス・クレッチマンです。わたし好みの俳優が悪役で出ているなぁ~と思ってデジャヴに襲われていたのだが、やっぱり、彼は「戦場のピアニスト」のドイツ将校を演じた彼だったのだ。素敵だわぁ。

 で、ラストでまたしても反則をする映画に出くわしてしまいました。もう笑うしかない。いよいよ続きますね、というわけでこれがほんとの「ネクスト」です。


 あ、そうそう、ピーター・フォークを久しぶりに見ました。チョイ役ですがこの人、やっぱりいい味出します。

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NEXT
アメリカ、2007年、上映時間 95分
監督: リー・タマホリ、製作: ニコラス・ケイジほか、製作総指揮: ゲイリー・ゴールドマンほか、原作: フィリップ・K・ディック『ゴールデン・マン』、脚本: ゲイリー・ゴールドマン、ジョナサン・ヘンズリー、ポール・バーンバウム、音楽: マーク・アイシャム
出演: ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビール、トーマス・クレッチマン、トリー・キトルズ、ピーター・フォーク

「努力し、結果を出した者が報われない」ようなことは、あってはいけない(@ARG)

2008年05月12日 | 図書館
 図書館を始めとした学術情報の総合サイト「ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)」の ブログ版で、岡本真さんがわたしの勤務先である図書館の廃止問題についてふれてくださっています。

 岡本さんは

「自分としては極めて異例なことだが、私は

・大阪の社会・労働関係専門図書館の存続を求める会

http://rodoshomei.web.fc2.com/

http://rodoshomei.blog17.fc2.com/

の主張を支持し、大阪府労働情報総合プラザ・大阪社会運動資料センターの存続を望むことをここに明記しておきたい。」

 と明言しておられます。今回の問題について、当事者であるわたしたちよりよほどわかりやすくまとめてくださっています。

 岡本さんは、委託契約を年度途中で打ち切るようなことが許されるのか、とまっとうな疑問を投げかけてくださっています。「大阪府労働情報総合プラザの運営は、経費を抑えつつも最大限の効果を発揮するよう多大な努力をもって行われている」ともきちんと評価してくださり、さらに

<<限られたリソースの中で試行錯誤し、大阪府にとっても望ましい成果を挙げつつある機関が廃止されようとしていることは、経済的に合理性や妥当性に欠けるのと同時に、正義や公正を欠くものだ。重ねて言おう。「努力し、結果を出した者が報われない」ようなことは、あってはいけないことなのだ。>>

 と、熱いメッセージを投げてくださっています。


 わたし自身、高校生と中学生の息子を持つ身で、「努力が大事だ。結果を出すべく、努力をしなさい」と躾けているのに、その親が「努力し、結果を出したのに潰される」とあっては、いったい子ども達になんと言えばいいのでしょうか? 努力は報われないといえばいいのでしょうか? 橋下知事にはぜひ愚息たちに説明してほしいものです。


 岡本真さんのコメント全文はどうぞこちらをお読みください。
http://d.hatena.ne.jp/arg/20080510/1210411649

ブラックサイト

2008年05月11日 | 映画レビュー
 ネット時代の怖さをまざまざと見せつける佳作。残虐なシーンが多くて後味の悪い作品だけれど、このくらいインパクトのある映画を作らないと、インターネット時代の劇場型犯罪への警鐘は鳴らせないのかもしれない。

 人は誰もが好奇心の生き物であり、その好奇心が文明を発達させてきたとも言えるわけだが、ここまで高度に発達した社会にあっては、その生来の好奇心を理性によって制御することを覚えねばならないだろう。この作品は、インターネットに接続して好奇心にかられるすべての人々を共犯者として巻き込む恐るべき殺人事件を描いたサスペンス。

 ダイアン・レインが主役だからてっきり色っぽい場面頻出かと、「運命の女」を思い出しながら見ていたのだが、これは完璧に予想外れ。色気のいの字もない固い社会派サスペンスだった。

 ネット上での犯罪は増加の一途をたどっているのだろうが、ネット時代の人々の好奇心を刺戟し、インターネットで殺人場面を生中継するという超悪質なサイトを開設する犯人の狙いはいったい何か? 身動きできない状態に縛り付けられた被害者が刻一刻と苦痛のうちに殺されていくサイトにアクセスが集中すればするほど被害者の死が早まる、という恐るべき仕組みが仕掛けられている。サイトを閲覧するすべての人が共犯者なのだ。
 

 ダイアン・レインがFBIネット犯罪担当捜査官を演じる。彼女も歳を取ってずいぶん落ち着きが出て、渋みのある役を演じられるようになった。一緒に捜査するイケメンの捜査員といい仲になるのかと思ったらそうでもなく(あ、ネタバレ?)、この映画はそういう余計な枝葉末節を刈り込んで、ひたすらネットの持つ匿名性とユビキタス(=いつでもどこでも誰でも)性を極端な形で描いていく。

 インターネットは一つの情報手段に過ぎず、過剰な期待も過度な危険視も避けるべきだろう。かつてインターネットが世界を変えるとかインターネットによって草の根民主主義が実現するといった肯定的な面が強調されたが、一方で「炎上」だのバッシングだのといった陰湿な中傷事件もあとをたたない。経済犯罪も増える一方だろう。


 FBI捜査官がコンピュータ技術を駆使して犯人を突き止めていこうとするのだが、実際にはIPアドレスをたどることもできず(原題は「追跡不能」)、事件の解決は最後に肉体アクションで決まるというところがありきたりといえばありきたり。これではサイバーテロに対処することはできないというお手上げ状態を宣言するようなものだ。そういう意味ではたいへん恐ろしいホラー映画でもあった。この映画ほど極端な事例でなくても、似たようなことはネット上のどこででも既に起きている。わたしたち一人一人が共犯者となるという怖さをどれだけの人間が自覚できるのあだろう? 下世話な好奇心を煽るようなテレビ番組は何十年も前から存在したが、ネット社会では誰もが容易に匿名でその醜悪な輪に参加することができ、いっそうその破廉恥さが顕わになる。21世紀にはますます理性が必要となることを痛感させられた。涙を流して財政再建を訴えたというだけで支持率が上がるような世の中では理性を期待するのは無理かも。


 ただ、不思議だったのはサイトへのアクセスが集中すれば当然にもサーバーダウンするだろうに、そうはならないのはなぜ? この点について観客を納得させる説明がほしかった。(R-15)

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UNTRACEABLE
アメリカ、2008年、上映時間 100分
監督: グレゴリー・ホブリット、製作: アンディ・コーエンほか、製作総指揮: ジェームズ・マクウェイドほか、脚本: ロバート・フィヴォレント、マーク・R・ブリンカー、アリソン・バーネット、音楽: クリストファー・ヤング
出演: ダイアン・レイン、ビリー・バーク、コリン・ハンクス、ジョセフ・クロス、メアリー・ベス・ハート

紀元前1万年

2008年05月08日 | 映画レビュー
 どうせ「こんな映画だろう」と思って見にいったらやっぱりそんな映画だった(^^;)。

 ローランド・エメリッヒ監督の作品には「インデペンデンス・デイ」というとんでもない愚作と「デイ・アフター・トゥモロー」というそこそこ面白く見られる作品があって(ほかにも「ゴジラ」という笑えるものもある)、本作はその間ぐらいでやや「インデペンデンス・デイ」寄り、というぐらいの出来。てまあ、おわかりでしょうか、この評価(^▽^)。しかし期待以上の(笑)トンデモ映画であり、雰囲気は「アポカリプト」に似ているのに似て非なる作品であります。いくら荒唐無稽な話ったって、ラストで反則技使うしねぇ~。

 物語の構造も実にシンプルで、囚われの人となった美女を救いに困難な旅に出る男たち、という古典的な「お姫様救出作戦」。しかも荒唐無稽なのかリアルさに凝ったのかよくわからない中途半端な設定で、「いったいここはどこ? どれだけ歩いたの?」と不可解な旅程。雪が降る山から下りて砂漠を彷徨したり熱帯のジャングルを彷徨ったり、わずかの食糧と荷物でそれはなかろう~と思われる強行軍。推定数千キロは歩いているはず。んなバカな! さらに最後はピラミッドが登場して、それを作っている文明人たちは「空から飛んできた」だの「海底に沈んだ大陸からやって来た」だの、宇宙人かアトランティスの伝説か? 

 まあ、わたしとしてはサーベルタイガーやマンモスの重量級動物たちの活躍を期待していたわけで、マンモスくんたちはそれなりに頑張っていたけど、サーベルタイガーは出番が少なかったのが残念。

 血湧き肉躍るアクションとスリルが待ちかまえているはずなのにまったくスリルもなければ緊張感もない、おまけに主役たちもいつも汚い顔で出てきて、「生まれてから一度もシャンプーしてないんじゃない?」というもつれた髪の毛にはちょっと… まあ、紀元前1万年にサラサラヘアーの美青年が登場したらそれも怖いかもしれないが(^▽^)。

 エメリッヒ監督は確信犯的に「Political Correctness」を無視する映画を作るが、本作もそう。青い目をした美しい女性を救うために男達が旅に出る。その旅のリーダーが白人で、付き従うのは黒人やアジア系。こういうのってあちこちから批判が噴出しそうだけれど、平気みたいね。


 疲れているときに頭を使わない映画でも見てリフレッシュしようと思ったけど、これじゃあ欲求不満が溜まるだけです。こういうのに比べたら、予告編上映していた「インディ・ジョーンズ」のほうがよっぽど楽しみであります。早く見たいよ~。


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監督: ローランド・エメリッヒ、製作: マイケル・ウィマーほか、脚本: ローランド・エメリッヒ、ハラルド・クローサー、音楽: ハラルド・クローサー、トマス・ワンダー
ナレーター: オマー・シャリフ
出演: スティーヴン・ストレイト、カミーラ・ベル、クリフ・カーティス

大いなる陰謀

2008年05月06日 | 映画レビュー
 イラク戦争での失態を挽回するために起死回生の作戦を練った上院議員の「陰謀」の結末やいかに?! ワシントン、カリフォルニア、アフガン、この3つの場所で同時に起きる出来事を活写して、アメリカの「今」を批判する社会派作品。んんん~、ちょっと生真面目に作りすぎて面白みに欠けるのではないでしょうか。

 ワシントンDCでは共和党のホープたるアーヴィング上院議員(トム・クルーズ)がベテランジャーナリストのジャニーン・ロス(メリル・ストリープ)を執務室に呼び出していた。彼女に特別に特ダネを提供するというのだ。それは、対テロ戦争に勝利するための、アフガンでの奇襲作戦だった。

 その同じ時刻、カリフォルニア大学では歴史政治学者マレー教授(ロバート・レッドフォード)が教え子のトッド(アンドリュー・ガーフィールド)を研究室に呼び出し、なぜ最近講義に欠席続きなのか、と問いただしている。

 そしてさらに同時刻、アフガンではタリバンの根拠地を占拠せんと空軍の奇襲作戦が実行に移されていた。その作戦のために選ばれた精鋭二人はマレー教授の優秀な教え子だったのだ。



 物語はこの3つの場面を並行して描く。なんといっても秀逸なのはトム・クルーズとメリル・ストリープの丁々発止の会話劇だ。3つの場面とも、二人ずつの登場人物が語り合う会話劇の体裁をとるが、とりわけ上院議員とジャーナリストの食い付き合いは緊迫感に満ちた演出で魅せる。

 教授対学生の研究室の場面は切り返しが頻繁で煩わしい。ロバート・レッドフォードとアンドリュー・ガーフィールドという新旧のイケメン対決でなかなか退屈させないが、会話の中身にそれほど惹かれるものがない。ただしこの場面、教師が見ればかなり身につまされるものがありそうだ。せっかく目を掛けた期待の学生がその期待を裏切るとき、教師はいかに学生を説得するのか。かつての教え子で優秀な学生二人が、ともにマイノリティ出身であったために研究者の道を捨てて志願兵となった経過を語る苦渋の大学教授、マレー。このマレーを演じるロバート・レッドフォードが監督しているために、わたしにはどうしても、彼が語る言葉が観客に対する説教のように聞こえてしまう。このあたりが、いかにも生真面目で鼻白んでしまう部分だ。せっかく面白い題材なのに、そこまで真正面から啓蒙的に切り込まんでもええんちゃう、と思ってしまう。

 ただし、この物語はラストシーンで結論を出したりはしない。そこまでやるともう完全に白けるのだけれど、さすがにレッドフォードはうまく問題を宙づりのままで映画を終わらせた。「あとは自分で考えなさい」、と観客に訴えかけるラストシーンで、ジャーナリストのジャニーンはアーリントン墓地の無数の墓碑を眺めて涙を流す。わたしたちはその累々たる死の意味をまだつかみそこねているのだ。

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LIONS FOR LAMBS
アメリカ、2007年、上映時間 92分
監督: ロバート・レッドフォード、製作: ロバート・レッドフォード、マシュー・マイケル・カーナハン、脚本: マシュー・マイケル・カーナハン、音楽: マーク・アイシャム
出演: ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープ、トム・クルーズ、マイケル・ペーニャ、デレク・ルーク、アンドリュー・ガーフィールド

社会・労働関係専門図書館の存続を

2008年05月05日 | 図書館
 これまでこのブログは、図書館司書が開設者でありながらまったく図書館ネタがないというけったいなものでありましたが、今般、わたしが勤務する財団法人が大阪府から運営を受託している「大阪府労働情報総合プラザ」廃止の危機にあたり、皆様にこの事態をお知らせすると同時に存続のための署名にご協力をお願いします。

 わたし自身は財政再建は重要な課題と認識しています。当然にも削るべきは削り、いっそうの倹約は必要と思っています。大阪府から図書館運営を委託されるにあたり、わたしたちはその理念を実践してきました。人件費を削減し、さまざまな工夫をこらして経費の節約を実行し、その上、利用者数を8年間で4倍に増やすという実績も残しています。

 しかし、図書館は金を生まないという理由で廃止されるとしたら、この先、貴重な文化遺産たる資料をどのように保全し次代に残すことができるでしょうか。専門図書館の専門性やユニークさを残してこそ、大阪の文化として誇れると思います。何もかも一緒くたに府立図書館に移管すればいいというものではありません。資料はこれからも集め続けることに意義があるのに、専門図書館が持つ収集ルートが閉ざされるおそれもあります。
 
 幸い、労働関係の研究者の皆様が「大阪の社会・労働関係専門図書館の存続を求める会」を作って署名活動を始めてくださいました。詳細は以下のサイトをお読みいただき、ぜひ趣旨に賛同いただけますよう、お願い申し上げます。
http://rodoshomei.web.fc2.com/

ウディ・アレンの 影と霧

2008年05月04日 | 映画レビュー
 ウディ・アレンはこの映画で何をしたかったのだろう? 巻頭のおどろおどろしさはいかにも吸血鬼が出てきそう。モノクロで恐ろしげな影を映したり、象徴的なカットを挿んで表現主義的な雰囲気を盛り上げてはいるが、やはりコメディなので、なんだかその怖さも中途半端。

 殺人事件の真相も謎のままで、その犯人を追う自警団というのも謎で、自警団の一味であるウディ・アレンが自分の役目もわからないまま犯人を追いかける羽目になり、でも結局彼がなにをすべきなのかいつまでも謎のまま。何もかもが謎のまま、本人が自覚もなく状況に放り込まれていくというのはまさにカフカ的不条理の世界。

 ウディ・アレンのおどおどした神経質な世界と、サーカスの芸人カップルの痴話喧嘩とが繋がっていくのだけれど、どうにもまとまりが悪い。モノクロ映像といい音楽といい、レトロな雰囲気を出してはいるけれど、雰囲気倒れ。ウディ・アレンらしさを求めるとスカされる。これだけ豪華なキャストを使っていったい何がしたかったのだろう? あ、みそくそに書いてしまったけれど、実は案外面白くて85分という短さもあって最後まですっと見てしまいました。売春宿の娼婦たちがジョディ・フォスターやキャシー・ベイツだもんね、うわ、すごいなとびっくりするだけでも見た値打ちはあるかも。(レンタルDVD)

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SHADOWS AND FOG
アメリカ、1992年、上映時間 85分
監督・脚本: ウディ・アレン、製作: ロバート・グリーンハット、撮影: カルロ・ディ・パルマ
出演: ウディ・アレン、ミア・ファロー、ジョン・マルコヴィッチ、マドンナ、ジョン・キューザック、ジョディ・フォスター、キャシー・ベイツ、リリー・トムリン

孤独な嘘

2008年05月02日 | 映画レビュー
 イギリスの片田舎に住む上流夫婦の日常が壊れるきっかけはひき逃げ事件だった。事件を発端に発覚する妻の不倫に苦しむ弁護士は、正義漢の固まりのような真面目な中年だ。しかし、正義の人も実は自己保身の固まりだったことがはしなくも露呈してしまう。妻を溺愛するが一方でその愛は相手を束縛し息詰まらせるものだったこともわかる。果たして「悪者」は誰なのだろう? 夫を裏切った妻なのか、妻の浮気相手なのか、妻を不倫へと走らせた夫なのか、それともそれとも…


 前半はひき逃げ事件の犯人捜しのサスペンスふうに思えるが、その真相は意外に早く明らかにされる。「嘘」がタイトルとなっているように、この物語の中では登場人物がみんな少しずつ嘘をついている。ネタバレになるので詳細を語ることは避けるが、上流階級の人々が虚飾の中で暮らしていること、そしてそんな虚飾のなかにあっても愛は間違いなくそこに存在し、そして誰もほんとうの悪人などいないのだということを本作はじっくりと描く。

 心理描写が巧みなので、短い上映時間の中にぎゅっと密度の濃いドラマが描かれる。しかし、もう少し尺を長くして、妻とその不倫相手との恋愛をちゃんと描いてもよかったのではないか。なぜ妻が「一時の遊び」という関係にのめり込んでいくのか、別れようと思っても別れられないその感情の襞が伝わりにくい。夫婦関係の綻びの原因もわからないではないが、かといって不倫相手の貴族の御曹司がちっとも魅力的に描かれていないから、「不倫の愛」がなぜ彼女にとってかけがえのないものなのかが理解しづらい。さらには貴族の御曹司も妻子ある男であり、要するにW不倫なのだが、男の家庭を描かないからこれまたなんだかうわすべりになってしまう。

 この映画は配役の妙があって、エミリー・ワトソンが不倫妻で、夫である有能な弁護士がトム・ウィルキンソンというのがなんだか釣り合っていない。美しい妻に対して仕事人間ですっかり中年太りしたメタボ弁護士というダサさ。しかもこの弁護士が神経質で気難しい。かといってエミリー・ワトソンの不倫相手の貴族がイケメンかというとそうでもないし、そしてこの映画には根っからの悪人というのが登場しない。いなむしろ、人々はみな罪の意識におののき、後悔に苛まれ、受けた恩義を忘れず、妻を心から愛し…というように、「いい人」ばかりなのだ。いい人ばかりなのに悲劇は起きるし、不正が働かれるし、犯罪は隠蔽される。

 このように、テーマは深く興味深いし、簡単にことの是非・善悪を判断できない、まさしく「ドラマ」が描かれている。とはいえ、ラストがなんだかあっけなく安易で、物足りない。なんといっても85分というのがちょっと短すぎた。(レンタルDVD)劇場未公開


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SEPARATE LIES
イギリス、2005年、上映時間 85分
監督・脚本: ジュリアン・フェロウズ、製作: スティーヴ・クラーク=ホール、クリスチャン・コルソン、製作総指揮: ポール・スミス、原作: ナイジェル・バルチン、音楽: スタニスラス・サイレウィック
出演: トム・ウィルキンソン、エミリー・ワトソン、ハーマイオニー・ノリス、ジョン・ワーナビー、ルパート・エヴェレット、リチェンダ・ケアリー、リンダ・バセット