一言で言えば、投資も国家の政策もすべては人口統計をにらんで行わなければならないという警告の書。
日米のバブル沸騰もその破綻も、もとをただせば人口の多寡がその行方を左右したという。団塊世代(アメリカではベビー・ブーマー)が投資適齢期にあるとき、株価は上がりつづけ、バブル景気に沸いた。しかし、彼らが年老いていき、次の世代の人口が次々に減少していくとき、土地や住宅の需要は伸び悩み、もはや土地は投資対象でなくなる。年金は団塊世代の人間のためにすべて吸い取られ、次の世代(つまり、わたし!)は彼らの二倍の負担を背負わなければ、同じ年金額を受け取れないという。就職するときも投資するときも、人口統計をよく読み、次のマーケットの需要を先読みしろと著者はいう。経済政策・社会政策も、老齢者・貧困者に楽をさせてはいけないという。
著者の発想の中には、「落伍者」は見捨てるというドグマがあるようだ。会社は株主のためにある。働く者のためではない。競争原理を否定しない。一人一人の労働者は統計数字としてしかみなされず、顔と人格をもった人間として把握されていない。明日の豊かな老後のために投資に走り、無限の競争にかりたてられ、働きすぎて人間性を失うことは危惧されていないようだ。
現状変革の志はまったく見受けられない書ではあるが、たしかに一面の真理はついている。これからの暗い時代、問題は人口過剰ではなく、人口減少にあるという警告は耳を傾けるに値する。実際、うちの子どもたちには従姉妹が一人しかいない。わたしの両親の孫はたった二人。わたしが産んだ息子たちだけだ。わたしには従兄妹が11人いるというのに! こんな子どもたちにとって,従兄妹をはじめとする親戚というものの捉え方がわたしたちの世代とはずいぶん異なるだろう。
本書の著者はこれからは階級闘争ではなく世代間闘争の時代だという。矛盾は階級間にあるのではなく、世代間にあると。その原因は少子化にある。少子化というのは実はものすごい大問題なのだが、いま政権の座にいる政治家たちはとりあえず目の前の懸案事項だけを片付ければいいと思っているので、50年後を見据えた政策が出せないでいる。わたしの子どもたちが大人になる頃、世の中どうなっているのだろう。彼らには明るい未来はないような気がする。まったくわれわれ大人の責任なのだが、この先、経済は先細りする一方だろう。いまこそ、「豊かな生活」の中身を問うて、経済成長だけを追いつづける夢を棄てるときがきている。
株で儲ける株式資本主義ではなく、働く者が報われるあたりまえの社会を、と考えるのは古い人間なのか? むむむ・・・。
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人口ピラミッドがひっくり返るとき 高齢化社会の経済新ルール
ポール・ ウォーレス著 ; 高橋健次訳 草思社 2001年
日米のバブル沸騰もその破綻も、もとをただせば人口の多寡がその行方を左右したという。団塊世代(アメリカではベビー・ブーマー)が投資適齢期にあるとき、株価は上がりつづけ、バブル景気に沸いた。しかし、彼らが年老いていき、次の世代の人口が次々に減少していくとき、土地や住宅の需要は伸び悩み、もはや土地は投資対象でなくなる。年金は団塊世代の人間のためにすべて吸い取られ、次の世代(つまり、わたし!)は彼らの二倍の負担を背負わなければ、同じ年金額を受け取れないという。就職するときも投資するときも、人口統計をよく読み、次のマーケットの需要を先読みしろと著者はいう。経済政策・社会政策も、老齢者・貧困者に楽をさせてはいけないという。
著者の発想の中には、「落伍者」は見捨てるというドグマがあるようだ。会社は株主のためにある。働く者のためではない。競争原理を否定しない。一人一人の労働者は統計数字としてしかみなされず、顔と人格をもった人間として把握されていない。明日の豊かな老後のために投資に走り、無限の競争にかりたてられ、働きすぎて人間性を失うことは危惧されていないようだ。
現状変革の志はまったく見受けられない書ではあるが、たしかに一面の真理はついている。これからの暗い時代、問題は人口過剰ではなく、人口減少にあるという警告は耳を傾けるに値する。実際、うちの子どもたちには従姉妹が一人しかいない。わたしの両親の孫はたった二人。わたしが産んだ息子たちだけだ。わたしには従兄妹が11人いるというのに! こんな子どもたちにとって,従兄妹をはじめとする親戚というものの捉え方がわたしたちの世代とはずいぶん異なるだろう。
本書の著者はこれからは階級闘争ではなく世代間闘争の時代だという。矛盾は階級間にあるのではなく、世代間にあると。その原因は少子化にある。少子化というのは実はものすごい大問題なのだが、いま政権の座にいる政治家たちはとりあえず目の前の懸案事項だけを片付ければいいと思っているので、50年後を見据えた政策が出せないでいる。わたしの子どもたちが大人になる頃、世の中どうなっているのだろう。彼らには明るい未来はないような気がする。まったくわれわれ大人の責任なのだが、この先、経済は先細りする一方だろう。いまこそ、「豊かな生活」の中身を問うて、経済成長だけを追いつづける夢を棄てるときがきている。
株で儲ける株式資本主義ではなく、働く者が報われるあたりまえの社会を、と考えるのは古い人間なのか? むむむ・・・。
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人口ピラミッドがひっくり返るとき 高齢化社会の経済新ルール
ポール・ ウォーレス著 ; 高橋健次訳 草思社 2001年