ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

モンパルナスの灯

2009年03月15日 | 映画レビュー
 破滅型天才の典型たる画家モディリアーニの伝記映画。

 アヌーク・エーメが素晴らしく美しいのは言うまでもないが、この映画には美女ばかりが登場する。なんという贅沢な映画なんでしょう。酒場の若い女給さんも数カットしか登場しないけれど、とても愛らしい。最初、彼女がジャンヌ役かと勘違いしたくらいだ。

 モディリアーニの作品はここ1,2年に二度見た。そのうち一度は「モジリアーニと妻ジャンヌの物語展」(名称不正確)だった。一度見たら忘れられないあの特異な肖像画そのものよりも、モディリアーニの破滅的な人生のほうにより心惹かれるし、夫の死後2日目にアパルトメントから飛び降り自殺した22歳の美しい妻ジャンヌの悲惨な最期にも胸を突かれる。2歳の娘を遺し、お腹には9ヶ月の第2子がいたというのに自殺するとは、モディリアーニ本人にも負けないほどの破滅的で激情の持ち主だったのだろうか。

 映画では、若く美しい妻ジャンヌの一途な愛と献身が描かれ、それに対して破滅的で気まぐれ、いかにも芸術家というハンサムなモディリアーニが対照的に描かれる。映画ではモディリアーニの放蕩ぶりや女性たちへの依存(というか、ほとんどヒモ)とともに、ジャンヌに対する熱烈な愛情に焦点が絞られていて、娘の誕生は一切触れられていない。

 生前はまったく売れることなく悲嘆の中で死んでいった悲劇的な生涯は、まさに伝説の画家にふさわしい。同じく悲劇の人ゴッホに自身を投影していたかのような台詞といい、金持ちアメリカ人の前で屈辱に唇を噛む場面といい、映画は才能を持ちながら理解されなかった天才画家の悔しさと悲劇をこれでもかとばかりに畳み掛けるように描いていく。

 ゴッホといい、モディリアーニといい、売れない画家の生涯にはとても惹かれるものがある。才能がありながらほとんど誰にも理解されずに生きていくつらさや悔しさに心と身体を病んでいく芸術家というパターン化された生き様に、その<パターン>ゆえに惹かれるものがあるのだ。ゴッホには弟ヴィンセントという唯一の理解者がおり、モディリアーニには画商ズボロフスキーという唯一の支援者がいた。だから彼らは生活費をかせぐ苦労をせず(というか生活を全然稼ぐことができず)、制作に専念できたのだ。支えがあったということも芸術家には絶対に必要な条件だろう。また、不思議と才能ある芸術家には熱烈な支持者や献身的な支援者が存在する。

 正統派演出によって悲劇の人の半生を余すことなく描いた作品。モディリアーニに興味があればぜひご覧あれ。(レンタルDVD)

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モンパルナスの灯
LES AMANTS DE MONTPARNASSE
フランス、1958年、上映時間 108分
監督・脚本: ジャック・ベッケル、原作: ミシェル・ジョルジュ・ミシェル、音楽: ポール・ミスラキ
出演: ジェラール・フィリップ、リノ・ヴァンチュラ、アヌーク・エーメ、レア・パドヴァニ、ジェラール・セティ

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1 コメント

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Unknown (まお)
2009-03-27 00:59:14
>アヌーク・エーメが素晴らしく美しいのは言うまでもないが、この映画には美女ばかりが登場する。

それもそうですが、なんと言ってもジェラール・フィリップでしょう!
どこ見てるんですか?あなた。それでも映画ファン?少しはフランス映画の基礎知識くらいは勉強したら?