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オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

2001年スカラ座の「仮面舞踏会」

2017-07-28 06:05:20 | オペラ
このところオペラを集中的に見ているので、ヴェルディの「仮面舞踏会」を見ようと思い手持ちのビデオを探したら、最近のメトのビデオがあったが、ちょっと出だしをみたら、現代化したコンセプチュアルな演出だったので、これはご勘弁と思い他のビデオを探した。現代的過ぎる演出は苦手なのだ。

古いものが良いかなと探したら、スカラ座でパヴァロッティが歌い、ゼフレッリが演出した1978年の録画があったので、これを見始めたが、昔のVHSテープ時代の記録画像なので、今見るといかにも画像が不鮮明で、カメラ性能も悪いために、暗いところが見えない。この「仮面舞踏会」は結構暗い場面が多いので、これも1幕だけ見て、もっと他のビデオがないかと探した。

比較的画像が良くて演出のまとものを探したら、2001年にリッカルド・ムーティがスカラ座で指揮したビデオが出てきたので、それを見ることにした。主演の総督はサルヴァトーレ・リチートラ、総督の副官レナートにはブルーノ・カブローニ、レナートの妻アメリアにはマリア・グレギーニという配役。演出はリリアーナ・カヴァーニ。

演出は映画監督として「愛の嵐」などで有名なカヴァーニで、オーソドックスな演出だが、衣装がなぜかフランスのロココ調なのが気にかかる。確かゼフレッリの版ではいかにもアメリカらしい清教徒みたいな衣装だった。まあ、総督という設定だからロココ調でもよいのかも知れないが、なんとなく僕のイメージの中ではゼフィレッリの美術趣味は良いなあということになった。

音楽は当時スカラ座に君臨していたムーティだから安心して聴ける。ムーティが支配人やオーケストラと対立してスカラ座を離れたのは2005年だったから、その前の油の乗っていた時期の指揮。歌手陣も充実していてなかなか面白かった。

話はスウェーデン国王の暗殺にヒントを得ているが、オペラが書かれたのはフランス革命前で、王室の暗殺をそのまま描くわけにはいかなかったので、植民地時代のアメリカの総督が仮面舞踏会で暗殺される話に置き換えられている。暗殺をしたのは副官的な部下のレナートで、忠実な部下ではあったが、自分の妻アメリアと総督の不倫関係を疑っての暗殺だった。もちろんその背景には、総督に恨みを抱いて暗殺を企む取り巻きもいるという風に描かれている。歴史上では、一種の反乱だったらしいが、オペラでは殺された一番の理由は愛情関係の誤解ということになっている。

この作品は1859年の作品で、「椿姫」を1853年に上演した次の作品なので、いかにも中期のヴェルディらしい旋律や力強さに溢れている。後期の緻密なオーケストレーションも良いが、やはり、この頃の美しい旋律は何物にも代えがたいなあと、改めて思った。


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