劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

読響定期 フルート協奏曲

2023-09-23 14:12:02 | 音楽
9月22日(金)の夜にサントリーホールで読響の定期演奏会を聴く。N響と読響の演奏会が続けてあったので、サントリーホールに二晩続けていく羽目になった。おまけに、どちらもフルートを独奏者に迎えたプログラム。N響のフルートは日本人だったが、読響の方はベルリンフィルの首席奏者エマニュエル・パユだった。指揮者はリトアニアの女性指揮者ギエドレ・シュレキーテ。まだ35歳ぐらいの若さだ。N響の観客層に比べると、読響の方が10歳程度若く、女性比率も高い印象。

プログラムは最初にチャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」があり、これは初めて聞く曲で、情景描写的な音楽。続いてフルート独奏が入り、サンサーンスの「オデレット」「ロマンス」の後、編成を少し変えてシャミナードの「フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ」、3曲合わせて30分+程度。N響のフルートは柔らかな音色を特徴としていたが、ベルリンフィル首席の演奏は、しっかりとした強い音を特徴としていた。難しそうなフレーズの軽々と演奏する印象で、すごいものだと感心した。

休憩15分の後は大規模な編成となり、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」。特定のソリストはいないが、各楽器がほかのパートと協奏的に演奏していく。5楽章の構成。バルトークの曲は凝り過ぎているためか、あまり好みではないが、シュレキーテは得意としているのか、熱のこもった指揮ぶりで結構面白かった。指揮ぶりを見ていたら、以前見た女性指揮者の映画「TAR ター」を思い出した。何となく雰囲気が似た感じ。いろいろな楽器が使われたので、音色を聴くだけでも楽しかった。

雨が結構降っていたので、家に帰って軽い食事。サラダとソーセージ。ソーヴィニヨン・ブランのワイン。







N響のオール・モーツアルト・プログラム

2023-09-22 14:22:10 | 音楽
9月21日(木)の夜にサントリー・ホールでN響のオール・モーツアルト・プログラムを聴く。チケットは売り切れとなっていたが、9割ぐらいの入り。N響のコンサートは高齢者比率が高い。

コンマスが長原幸太だったので、いつもの人かと思ったが、よく考えると長原は読響のコンマスだ。プログラムを調べてみると、ほかのコンサートでも外部のコンマスがゲストで参加していた。長年N響のコンマスをしていた篠崎氏が引退モードに入ったので、代わるコンマスの選考モードに入ったような気がする。すると今回の長原の参加はお試しという気がする。

さて、今回のプログラムは、最初に交響曲の29番、続いてフルート協奏曲でソリストはN響の首席奏者である神田寛明。20分の休憩を挟んで後半は交響曲の39番だった。いずれも面白い曲だが、最初の29番は落ち着いた曲調。メインのフルート協奏曲の後は、派手な響きの39番で、なかなかうまい選曲だと感じた。指揮はモーツァルトを得意とするオランダ出身のトン・コープマン。

かなり昔に、ニューヨークでモストリー・モーツァルトという一連のコンサートがあり、日本でも渋谷でしばらくこのシリーズの演奏会があったと記憶するが、いつの間にかなくなってしまい、モーツァルトを聴きたいなあと思っていたので、久しぶりに堪能した。

帰りはいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、焼き野菜のマリネ、塩タラのフライなど。

文楽「菅原伝授手習鑑」

2023-09-13 14:09:13 | 文楽
9月12日(火)の昼に国立小劇場で「菅原伝授手習鑑」を見る。5月と9月の2か月間で初段から五段目までの通しの公演。普段はかからない珍しい場面も上演されるとあって、場内はほぼ満席だった。10時45分から2時20分までの回は「賀の祝」を中心とした三段目があり、最後に四段目の頭の「天拝山」が付く。3時から6時15分の回は最初に「寿式三番叟」があり、「寺子屋」を中心とする四段目と五段目が上演された。

以前に国立大劇場で歌舞伎版の通しを3か月に分けて上演したことがあり、一応通しで見ているが、文楽での完全通しは初めて見た。50年ぶりの上演という段もいくつかあった。

研修生も集まらずに、今後の跡継ぎが心配になるが、太夫の若手がこのところ力を付けてきて、なかなか充実した公演だった。最初の「車曳き」では籐太夫、小住太夫、碩太夫が若手ながら立派に語った。特に一番若い碩太夫が頼もしい。「桜丸切腹」の千歳太夫は落ち着いた語り口でよかったが、その前の咲寿太夫、芳穂太夫は力不足。久々に出た「天拝山」は籐太夫だが、教えてくれる人がいなかったのか、練習不足の印象。

「寿式三番叟」は咲太夫が休演なので、代わりに翁を呂太夫が語り、千歳は錣太夫、三番叟は千歳太夫と穴埋めに入った織大夫。これも珍しい「北嵯峨」は希太夫だが少し弱い。寺入りの亘太夫も軽量級。寺子屋では前半を「切」として呂太夫が語り、後半を「後」として呂勢太夫が語った。どう見ても呂勢が頑張った感じ。呂勢はこのところ調子を崩していたが、三味線の清治の指導を受けたのか、今回はとても良い出来だった。清治の三味線が光る。

最後の五段目「大内天変」は、小住太夫が立派に語った。このところ小住太夫はとてもよくなった。三味線の寛太郎も素晴らしい演奏。昔は幼さが残るような印象だったが、もう立派な大人。

充実した舞台を見て、上機嫌になり、帰りはイタリア・レストランで軽く食事。スプマンテとキャンティを飲み、イチジクとマスカルポーネの生ハム包み、浅利のワイン蒸し、クロスティーニ、サマー・トリュフのリゾットなどを食べた。サマー・トリュフは香りが今一つ。それでも久々の黒トリュフで大満足。

藤原歌劇団の「二人のフォスカリ」

2023-09-10 11:00:03 | オペラ
9月9日(土)の昼に、新国立劇場で藤原歌劇団の「二人のフォスカリ」を見る。ヴェルディの初期のオペラで、なかなか上演されない演目。土曜と日曜の2回公演だが、9割以上の入りで驚いた。珍しい演目だからなのかわからないが、いつもの新国立劇場の観客とはだいぶ客筋が異なり、オペラ関係者が多い印象。一般人は年金生活者の男性が多い。3幕のオペラで、各幕は40分程度。2幕と3幕の間に20分間の休憩が入った。

ヴェネチアの総督が、政敵のために自分の息子を無実の罪で流刑に処し、彼の無罪が後に明らかとなるも手遅れで息子は亡くなり、本人も失意のうちに亡くなるという暗い話。台本もあまり上出来とも思えないが、音楽はいつものヴェルディ節が満載で楽しめる。

主要なキャストは3人でヴェネチア総督を上江隼人、その息子を藤田卓也、息子の妻を佐藤亜希子が歌った。各人とも頑張って歌い、一応は及第点。上江はもう少し声量が欲しい。藤田は高音部が時折不安定だったが、よく歌った。佐藤はよく声が出ていたが、黒のパンツ・スーツで肩までの髪を下ろして登場した姿は、まるで米国のカマラ・ハリス副大統領そっくりのシルエットだった。

藤原歌劇団は資金的な制約もあり、いつも装置や衣装がシャビーに見えて損をしているが、今回は金をかけずにうまくやっている。セットは広い舞台の真ん中に傾斜した矩形プラットフォームを置き、その真ん中をスクリーンで区切り、いろいろな場面に使っていた。新国立劇場の広すぎる間口を縮めて見せる効果もあり、お金をかけていないが、十分鑑賞に耐えるものだった。

衣装は総督だけが赤い衣装をまとい、ほかの人は全員黒だったが、総督と息子、その妻のフォスカリ家の人間は青、対立する政敵は茶色など、主要な人物は色を付けないと、黒ずくめの合唱隊と区別がつかない。ここは工夫があっていいような気がした。

家に帰って軽い食事。サラダ、アラブ風の鳥入炊き込みご飯など。

国立劇場の「妹背山婦女庭訓」

2023-09-07 13:41:29 | 歌舞伎
9月6日(水)に国立劇場で「妹背山婦女庭訓」を見る。建て直しに入るので、さよなら公演と題して、9月10月の2か月間で「妹背山」の「通し」を上演としている。9月は「山の段」が中心で、10月は「御殿」中心なので、鹿殺しや芝六住家は出ないので、まあ「半通し」だろう。

「山の段」は吉野川を挟み妹山、背山に分かれた悲劇を描くので、両花道だけでなく、義太夫も上手と下手に分かれて語る。なかなかかからない演目なので、この機会に見ておいた。貴重な機会だと思うが、客の入りは悪く、3割程度の入り。客を呼べるスターがいないこともあるかも知れないが、もう少し考えないとだめだろう。

出演者は、菊五郎も菊之助も出ない菊五郎劇団といった感じで、時蔵と松緑がメインで、そのほかは若手の発表会。時蔵だけが突出して良い芸を見せるが、松緑は元気の良いのだけが取り柄といった印象。亀蔵は台詞がよくわからない。

それでも、久々に歌舞伎で「妹背山」を楽しんだ。12時に始まり終演は15時35分だが、休憩が3回1時間ぐらいあり、実質は2時間半。11時から始めて夕方5時ぐらいに終わっても良いから、きちんと通しで上演してほしいものだ。

帰りにスーパーで買い物して家で食事。豆腐やニンジンなどの甘辛煮つけ、大根サラダ、トウモロコシごはんなど。飲み物は京都の純米大吟醸でうまし。