劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

N響のコンサート

2022-05-27 13:44:04 | 音楽
5月26日(木)の夜に、サントリー・ホールでN響のコンサートを聴く。ファビオ・ルイージの指揮、小菅優のピアノ。館内はほぼ満席で、ほとんど空席がなかった。やっとコロナも落ち着いたという感じ。

前半にメンデルスゾーンの序曲「静かな海と楽しい航海」があり、続いて小菅のピアノによりラヴェルのピアノ協奏曲。休憩20分を挟み、後半はリムスキー・コルサコフの「シェヘラザード」だった。

ルイージの指揮は丁寧で端正、それでいて小気味良い。特に、今回のような標題音楽は、物語が目に浮かぶようで、面白かった。今年の9月からN響の首席指揮者になるということで、楽しみだ。

ラヴェルのピアノ協奏曲は初めて聞いたが、なかなか面白い。プログラムにもガーシュウィンの影響が強く出ていると書かれていたが、第1楽章と、第3楽章はまるで「パリのアメリカ人」から切り取ってきたような響きで、ラヴェルがこんな曲を書いたのかと、驚かされた。第2楽章はゆっくりしたテンポで、ラヴェルらしい響き。小菅のきらめくような響きが際立った。

「シェヘラザード」は良く聞く作品だが、今回は「まろ」という愛称を持つコンマスの篠崎史紀がヴァイオリンのソロを弾きので、どんな音なのだろうと期待したが、思ったよりもずっと繊細で美しい音だった。特に重音などの美しい響きは代えがたいものがあり、文句なしに感動した。

帰りがけに、いつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、エビのアヒージョ、サルシッチャの煮込みなど。

読響の「人魚姫」

2022-05-25 14:12:09 | 音楽
5月24日(火)の夜にサントリー・ホールで読響の演奏会を聴く。指揮は上岡敏之。演目は前半がウェーベルンの6つの小品と、ベルクの「ヴォツェック」から3つの断章。15分の休憩を挟み、後半はツェムリンスキーの交響詩「人魚姫」。地味な演目のためか、5~6割の入りで、高齢男性が多かった。終演は9時頃。

前半は、12音階技法というか、無調の作品なので、聴いていてどうもむずむずするようで落ち着かない。ハーモニーよりも対位法的な響きで、後は音の強弱で頑張るという感じで、どうもこの時代の作品にはなじめない。「ヴォツェック」の方は、ソプラノの森谷真理の歌が入る。難しい曲を暗譜で歌うのはすごいし、声も美しく歌唱は堪能したが、長く聞くと疲れそうだった。

後半の「人魚姫」は調性の世界に戻ったので、安心して聴ける。おまけに交響詩を謳う標題音楽だから、アンデルセンの話を思い浮かべながら聞くとよく流れが理解できた。コントラバスが8本なので、弦楽だけで60人ぐらい。管と打楽器を入れると全体は100人編成の大編成だった。管は4管編成とでもいうか、3管よりも多い感じで、ホルンなどは7人もいて驚いた。このオーケストラが、大音響で演奏したので、それなりに迫力もあり楽しんだ。

帰りにスーパーで買い物して、家で軽い食事。キャベツのサラダ、ツナ・ペースト、イタリア産生ハム、フランス産の白など。

東京オラトリア研究会のヴェルディ「レクイエム」

2022-05-23 11:20:44 | 音楽
5月22日(日)の昼に、新宿文化センターで東京オペラ研究会主催のコンサートを聴く。演目はラターの「グローリア」とヴェルディの「レクイエム」。2時開演で、15分間のん休憩を挟み、終演は4時10分ごろ。5割程度の入り。多くは出演者の友人のように見えた。合唱はオラトリオ研究会だけでなく、多くの合唱団が参加しているので、舞台上に立ったのは100人ぐらい。このうち女性が3/4ぐらいで、男性は少なかった。

オーケストラは小編成で弦が少ないが、プロまたはセミプロ級の人だったので、きちんとした演奏。ほかにプロの独唱者4人が参加した。

前半はラターの曲で、20分ぐらいと短い。74年の作品となっていたので比較的新しいが、ピアノとオルガン、ティンパニーと大太鼓という伴奏で、結構面白かった。合唱は50人ぐらい。新しい曲だが、変に不協和音が満ちていないので、聴きやすい。

後半はヴェルディのレクイエムで、1時間半ぐらいの大曲。指揮者の郡司博も汗だくの熱演だった。生で聞くのは初めてだったが、ヴェルディの油の乗った時期の作曲なので、長い曲にも関わらず、退屈せずに楽しめた。小さなオケだったので、独唱者の声も良く響いて良かったが、中でもアルトの増田弥生の歌唱が安定していた。

長い曲なので、聴いているだけでぐったりくたびれた感じになり、家に帰って少し休んでから食事。サラダ、ロースト・ポークに白いんげん豆の煮込みなど。フランス産のソーヴィニヨン・ブラン。

新国立の「オルフェオとエウリディーチェ」

2022-05-20 14:01:34 | オペラ
5月19日(木)の夜に、新国立劇場でグルックのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」を見る。午後7時開演で、25分間の休憩を挟み、終演は9時10分ごろ。3回公演の初日で、あまり有名でない演目だったが9割ぐらいは埋まっていた。3回のうち後半の2回は土曜日と日曜のマチネーで連続して歌うので、短い作品だが、歌手の負担は大きいかもしれないと思った。

18世紀中頃の、モーツアルトがオペラを書き始めるよりも20~30年前の作品なので、音楽は完全にバロックの響きだった。オペラ史を読むと、物語と歌をきちんと関連付けたグルックのオペラ改革という話が登場するが、ちょうどそうしたころの作品。イタリア語の作品で、ギリシャ神話からの題材、ドイツ風のオーケストラ伴奏となっている。オーケストラは東フィルで、特殊なピリオド楽器は専門家が入っていた。指揮は鈴木優人という、バロック音楽の布陣。

この時代に男性主人公はカストラートが歌ったので、現代ではカウンター・テナーが歌うことになるが、アメリカからやってきたローレンス・ザッゾが見事な歌声を聞かせた。ここ2年間は、あまり外国からの招聘がなかったが、こうしたきちんとした歌える人を、世界から呼んでほしい。相手役のエウリディーチェのヴァルダ・ウィルソンのソプラノも美しい歌声。日本人では愛の神アモーレ役で三宅理恵が出演。このところ、三宅の出演が多いが、何を歌っても安定していて、安心して聴ける。

演出と振付、美術は勅使河原三郎で、現代的な装置と衣装、踊りもコンテ風だった。冥界に降りていくあたりでは器楽曲が長く続き、4人のダンサーたちが間をつないだが、コンテ風なので、物語との関係は良くわからずに、くねくねと踊るだけ。グルックの精神にはちょっと反していると感じられた。面白くもないが、邪魔にもならないといった程度の踊り。

今までビデオでしか見たことがなかった演目を、生の舞台で、しかもちゃんとした歌手で聴けたので、そうした意味で満足した。

帰りにいつものスペイン・バルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、田舎風のパテ、球体のバクダン・コロッケ、マグロのソテーなど。

文楽「競伊勢物語」

2022-05-18 14:41:14 | 文楽
5月17日(火)の昼に国立小劇場で、文楽を見る。伊勢物語に題材をとった作品で初見。東京では35年ぶりの上演だとチラシにはあった。2時30分開始で、15分の休憩を挟み、終演は5時12分だった。30分程度の玉水渕の段と、2時間近い春日村の段。満席かと思ったら、6~7割しか入っていなかったのでちょっと驚いた。

太夫は、玉水渕が最初に亘太夫、奥が織大夫。亘太夫はまだ前座だが、聴いているほうがつらい。織大夫は希望の星だが、疲れているのか元気がなかった。プログラムを見てみたら、咲太夫が休演で、代わりを織大夫が務めているので、午前に自分の出番と師匠の代役を務め、午後にまた出ているので疲れるのも無理はない。

春日村の段は見せ場で、最初が小住太夫、続いて籐太夫、最後が千歳太夫。3人ともそれなりに頑張っていた。特に籐太夫は成長著しい感じ。毎回熱演の千歳太夫だが、今回はお茶が出て、弟子が横に座ったので、切場語りになったのかと思ってプログラムを確認したら、ちゃんと「切」となっていた。ネットで調べると、今年の4月から、千歳太夫を含めて3人が切場語りに昇格したようだ。70歳代の呂太夫と錣太夫、そして62歳の千歳太夫だ。現在唯一人残っている切場語りの咲太夫が77歳で、休演がちだから、そろそろ次の世代を指名したのだろう。咲太夫の昇格が2009年だったので、それ以来13年ぶりだが、東京の公演ではチラシにも説明がなく、ちょっともったいないなと思った。

まあ、一番若い千歳太夫は実力も備わってきたが、ほかの二人はちょっと心配。千歳太夫の後は、織大夫や呂勢太夫、籐太夫あたりが10年後を目指すのだろうという印象。

今回の公演の人形は、母親の和生、有常の玉男は良いが、ほかが若手で弱かった。せめて娘信夫(しのぶ)役はもう少しベテランを当ててほしかった。それでも、珍しい演目を楽しみ、なかなか面白い作品だと思った。

ちょうどよい時間になったので、行きつけのビストロで食事。鰯のマリネ、ビーフのフリット、ブラマンジェなど。コート・ド・ローヌの赤。