劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

パーヴォ・ヤルヴィ指揮のN響

2023-04-28 10:20:49 | 音楽
4月27日(木)の夜にサントリーホールでN響のコンサートを聴く。サントリーホールの前にあるカラヤン広場に面したレストランは長く改装中だったが、スペインバルやイタリア料理店になっていて、新規にオープンし、それなりに人が入っていた。N響のコンサートも、コロナ前に戻った感じで、9割ぐらいの入りで入っているが、まだまだマスク派が多い。入り口のアルコール消毒は置いてあるが、無理に求められなくなったので、助かる。

さて、演目は最初にシベリウスの交響曲4番があり、20分の休憩の後にラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」、最後はチャイコフスキーの幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」だった。エストニア出身の指揮者パーヴォ・ヤルヴィの指揮。最初のシベリウスは不思議な曲。あまりメリハリなく、何となく曲が流れていくので、眠くなりそうにも思えるが、N響が演奏すると音色が美しいので、その音色に感心していると全く退屈しなかった。この曲は賛否両論かもしれない。

休憩後のラフマニノフは、ピアノの超絶技巧を聴かせる曲。アルバニア出身で、まだ26歳のマリー=アンジュ・グッチがバリバリと弾いたが、演奏そのものは成熟した感じでとても面白い。初めて聞いた曲だったが、ラフマニノフはやはり面白いなあと思う。

最後のチャイコフスキーは、ダンテの「神曲」からの物語を劇的な音楽にしたもの。物語を頭に入れて聞くと、まるで情景が浮かぶような音楽で、ヤルヴィが見事に指揮をした。かなり大音響を響かせるような曲だが、N響の音はビロードのような肌触りを感じさせるなめらかな音。コンマスは久々に通称マロと呼ばれる篠崎史紀だった。

帰りがけに、いつものスペインバルで軽く食事。トルティージャ、ハモン、ポテトサラダ、鯛のオーヴン焼きなど。飲み物は泡、白、赤。

都響+金川真弓

2023-04-27 11:08:11 | 音楽
4月26日(水)の昼に池袋の東京芸術劇場で金川真弓のヴァイオリンを聴く。都響の定期演奏会で、指揮はベテランの小泉和弘。平日の昼間だが9割程度の入り。

曲目は最初に「運命の力」序曲、次いで金川のヴァイオリンでメンデスゾーンのヴァイオリン協奏曲。20分の休憩の後、メンデルスゾーンの交響曲「スコットランド」だった。以前に読響で聴いた金川のブラームスのヴァイオリン協奏曲が良かったので、追いかけをしてみたのだが、メンデルスゾーンだったので面白味に欠けた。ブラームスの曲はそれなりに面白さが出るが、メンデルスゾーンだと美しいメロディが流れるだけで、表現という点では面白みが出にくい。曲目をよく選んで聞かねばと反省した。協奏曲なのでヴァイオリンの音をよく聞かせてほしいところだが、オケの編成が大きく、管楽器も音を押さえていないので、時折ヴァイオリンの音がかき消されてしまう。これは指揮者の問題だろう。

後半は小泉の指揮による「スコットランド」。スコットランドの風景が目に浮かぶような曲なのだが、小泉の指揮は平板で面白みに欠けた印象。

雨が降っていたので、家に帰って夕食。山菜の卵とじ。ブロッコリーのニンニク炒め、ナスのみそ田楽風、カジキマグロのソテーのトマト載せなど。飲み物は大吟醸と会津の本醸造。

日生劇場の「ミュージック・マン」

2023-04-26 11:00:32 | ミュージカル
4月25日(火)の昼に日生劇場で東宝製作のミュージカル「ミュージック・マン」を見る。平日の昼で、おまけに12時30分開演という変な時間帯だったが、ほぼ満席に近い入り。1960年代の台本ミュージカル絶頂期の作品だが、早口歌が多いので、どんな風に演じられるか気になって見に行った。

冒頭の歌も途中の早口歌も、日本語でわかるように歌詞が翻訳されていて、なかなか立派なものだと感心した。ひと昔前だと、こういう曲は途中で破綻して聴くに堪えなかったが、今回はそうした破綻もなく、上演レベルが向上している印象。

田舎町に乗り込んで、少年楽団を作ると持ち掛け、楽器や制服を売りつけては、売りっぱなしで姿を消す詐欺師的なセールスマンの話だが、町の娘に恋をして居残ることになるという、アメリカではよくありそうな話。作曲者メルディス・ウィルソンが、自分の育った田舎町での経験に基づいて台本も書いたというので、音楽的にはとても面白いが、台本は若干、唐突な印象を受ける部分もある。

今見ると、よく言うと古典的、悪く言うと古びた作品だが、昨年ブロードウェイで再演されてヒットしたので、改めて注目されたのだろう。主役の詐欺師を演じる坂本昌行は、難しい歌をよく頑張って歌ったが、詐欺師特有のアクの強さというか強引さが足りずに損をした印象。役柄があっていないかも知れない。

相手役の花乃まりあは、宝塚の娘役出身でこうした役柄にはあっていて、歌もそつなくこなしたが、この役の歌は本格的なソプラノ歌手で聴きたいところ。オペラ畑から探してきても良いのではないかと感じた。

演出家と振付家はアメリカから呼んできたようで、ブロードウェイの再演版とは異なるが、うまくまとめていた。特に振付のエミリー・モルトビーは良い。20世紀初頭の物語だということを意識して、当時流行していたステップや田舎っぽいフォークダンス的な要素を入れながらも、巧みに現代化して見せている。日本のダンサーも結構うまくなったが、もう少しバレエの素養を持ったダンサーが増えると、回転やジャンプなどのバレエ的な要素を入れることが出来るので、今後を期待したい。

オーケストラは金管中心だが、弦も少し入っている。歌の伴奏では弦が結構入るが、管ばかりが聞こえて、弦の音がほとんど聞こえない。最近はロックの影響で、何でも音を大きくしてうるさいぐらいにアンプで増幅してしまうので、どうも好きになれない。もうちょっと音量を下げて、音楽を聞かせってほしいものだ。

それでも2時間半を楽しみ、満足して帰る。帰りにスーパーで買物をして家で食事。近所の方から山菜をもらったので、天ぷら、お浸し、煮物などにして食べる。そのほか、揚げだし豆腐など。日本酒の大吟醸。

ジョヴァンニ・ソッリマの「氷のチェロ物語」

2023-04-25 09:52:26 | 映画
4月24日(月)の夜にイタリア文化会館で、ドキュメンタリー映画「氷のチェロ物語」を見る。映画上映の後に、チェリストのジョヴァンニ・ソッリマの対談があり、少しだけだが演奏もするので、ほぼ満席だった。

「氷のチェロ」というのは「氷の微笑み」などと同じような比喩表現化と思ったら、そうではなく、本当に氷でチェロを作り、それを弾くという話。アメリカの氷の彫刻家ティム・リンハートが、イタリアの北のアルプス山中の氷河地帯で氷のチェロを作り、それを使ったコンサートをやりながら、ソッリマの出身地である南のシチリア島まで行く様子が映画に収録されている。

チェロを氷で作ると言っても、氷で作るのは音を響かせる本体のボディ部分であり、さすがに指板や弦は普通のチェロと同じ部材を使う。弦がのるコマも弦に触れる部分だけは金属だが、コマ本体は氷だった。表と裏の共鳴板を作り、かなり太い魂柱で両者を繋ぐなど、本格的なチェロの構造になっている。普通のチェロよりも少し厚みがあるように思えたが、形はまさにチェロ。出来上がると棺桶のような箱に入れてロープウェイでふもとに降ろして、トレントの町で最初のコンサートを開いた。常温だと溶けてしまうため、冷凍機で冷風を作り、透明なバルーンの中に冷風を送り込んでマイナス10度程度に保ち、その中でジョヴァンニ・ソッリマが弾いた。箱から出すときには「甦れラザロ」などと呼ぶ。

終わると、マイナス18度に保つ冷凍庫付きの車に乗せて、南に向かいシチリアに向かう途中でコンサートを開く。ヴェネチアでは冷凍庫付きの船で運び、ローマでは冷凍機が故障してドライアイスの粉をかけながら演奏、シチリアでは運搬用の車の冷凍庫が故障して、お菓子屋の冷凍庫を借りてチェロを保管など、さまざまな問題を乗り越えて目的を果たす。最後は地中海に氷のチェロを葬った。

映画の後ではソッリマがインタビューに答えたが、マイナス10度の中でも、演奏をすると体の中に「炎」がともり、寒さは感じなかったと答えていた。技術的には、弾いているうちに溶けたりして楽器の状態が変化するので、それに合わせるのが大変だったという。こうしたバカげた企画を真面目にやるというのが、アメリカ人彫刻家とイタリア人演奏家の良さなのだろう。

最後に4曲ほど自作の曲を演奏してくれたが、シチリアの土俗的な歌を感じさせる音楽を、超絶技巧で即興的に演奏した。クラシックともジャズとも違う、チェロ版のパガニーニといった雰囲気で、一度は聞くに値する面白さだった。

9時に終了したので、帰りがけに遅くまでやっている焼き鳥屋で軽い食事。焼き鳥各種のほか、小松菜のお浸し、長芋のバター醤油焼きなど。日本酒各種。

読響の小林研一郎

2023-04-22 11:22:22 | 音楽
4月21日(金)の夜にサントリーホールで小林研一郎指揮の読響を聴く。演目は青木尚佳のヴァイオリンによるメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲があり、15分の休憩の後にマーラーの交響曲1番「巨人」。ほぼ満席で、マスク比率は9割ぐらいか。80歳を超えた小林研一郎は、2年ほど前に見たときは足元がおぼつかない感じだったが、今回はかなり元気そうに見えた。2年前はコロナのために活動が制約されて、体が弱っていたが、回復したように見える。会場を見渡したら、少し後ろの席に音楽好きで知られた元首相がいたが、80歳を超えているにも関わらず、結構元気そうに見えた。

最初のメンデルスゾーンの協奏曲は青木尚佳がヴァイオリンを弾いた。現在はミュンヘン・フィルでコンサート・ミストレスを務めているようで、期待したが、案外と平凡な演奏だった。確かに美しい音色で聴かせたが、楽譜通りにうまく弾いたという印象で、個性はあまり感じられない。メンデルスゾーンのような比較的易しい曲だと、技術を見せる場面がなく、音色だけで勝負となるので、難しいなあと感じた。小林の指揮はヴァイオリンの音色を際立たせようと、オーケストラの音を押さえた伴奏だった。

後半のマーラーは、大編成のオケで小林の真価を発揮。オーケストラから色彩豊かな音色を引き出して観客を楽しませた。「巨人」はよく聞く曲だが、これほど面白いと思った演奏は久しぶり。最後のあいさつでも小林はサービス精神構成だった。人気があるのも当然と思える。

読響のオーボエ奏者は一時期2人まで減ってしまい、どうするのだろうと思っていたら、この日のオーボエ主席は東京交響楽団にいた荒木奏美が吹いていた。プログラムを見ると、4月18日から読響の首席オーボエとして契約団員になったと出ていた。東京交響楽団のメンバー表からは外れていたので、読響に移ったようだ。御贔屓の奏者なので、楽しみだ。

コンサートが終わって表に出ると少し雨が降っていた。帰りがけにいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、生ハムのコロッケ、イワシのエスカベッシェ、鶏もも肉のバスク風煮込みなど。