劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

大野和士の「オペラ玉手箱 トゥーランドット」

2019-06-30 10:33:17 | オペラ
6月29日(土)の昼に新国立劇場のオペラパレスで、大野和士の「オペラ玉手箱」を観る。大野和士が芸術監督になってから始まった企画で、大野氏がピアノを弾きながら作品の解説をするとともに、カヴァー歌手などによる歌の抜粋もある。午後2時から4時までの予定となっていて、途中で20分間の休憩となっていたが、結構長引いて、終了は4時30分近くだった。チケットの売れ行きが良かったらしく、一般発売は当初は1階席のみとしていたが、2階や3階も追加で発売したようだ。いつもよりも若干若い人が多いように感じた。

第一回の玉手箱は「魔笛」の解説だったが、今回は2回目で「トゥーランドット」の解説。どちらも有名作品で今更解説は必要ないとも感じるが、大野氏の話しが面白いので、つい聞きたくなってしまう。サービス精神旺盛でいろいろと説明する姿を見ていると、淀川長治が映画解説をしていた姿を思い出した。本当に映画やオペラを愛しているのだなあと感じさせる姿だ。

話は今回の企画から始まり、新国立劇場、東京都、びわ湖ホール、札幌などの共同企画で作られた公演で、東京だけでなく各地を回るという説明だ。オケは大野氏が指揮者をしているバルセロナから来る。続いて、プッチーニの台本重視の話があり、リヒヤルト・シュトラウスのホフマンスタールとの関係との対比などが説明され、楽譜出版のリコルディ社との関係も話がある。話が面白いので聞き流してしまうが、結構内容的には充実している。

それから楽曲の解説に入り、序曲から順番に主なナンバーについて、音楽的な仕組みや歌詞の内容について解説して歌手が歌うという仕組みだ。楽曲の話では、リヒヤルト・シュトラウスやワーグナーからの影響も指摘がある。本には書いてあることだが、実際にピアノを弾いて解説してくれると実に分かりやすい。1幕の終わりまでの説明が終わった後で休憩となったが、そこまでで1時間かかっていたので、確実に時間オーバーするなと感じた。午後5時から小劇場でオペラ研修所の「イオランタ」を観る予定にしていたので、5時10分前までに終われば良いと考える。

2幕と3幕は続けて説明だったが、一番有名な「誰も寝てはならぬ」の説明を飛ばしたのはどうしてだろうと思ったら、最後にサービスでこの歌を聞かせる構成だった。

参加した歌手は半分は本番でも歌うメンバーで、充実していた。タイトル・ロールのトゥーランドット姫役はウクライナ生まれのオクサナ・ノザトワで、今回の公演のカバー歌手という説明だった。カバーとはいえ圧倒的な迫力ですごいと思ったら、カラフ役の工藤和真がノザトワと一緒に歌う段になったら一段と声を張り上げたので、やはり一流の人と共演するのは大事だなと思った。

ノザトワと大野氏は何語でコミュニケーションをとるのかと思って見ていたら、イタリア語で細かく指示をしていた。やはり、オペラ界の共通語はイタリア語なのかと改めて認識した。

大野氏は写真で見ているとすまし顔だが、実際の話は気さくで面白く、こういう企画があれば又聞きたいと感じた。

Pivotのランチタイム・コンサート

2019-06-29 04:47:25 | 音楽
6月28日(金)の昼に新国立劇場にあるレストランのマエストロで、Pivotのランチタイム・コンサートを聴く。新国立劇場のチケットを買うためにアトレ・カードの会員になっているおり、その特典として招待してくれたので聴きに行った。11時半から始まり、終了は1時45分頃。レストランは約60席程度あるが、ほぼ満席。平日の昼間なので、若い人はおらず、退職者世代が中心。

Pivotというのは新国立劇場のオペラ研修所の修了生が結成したユニット。2014年修了生が始めたようなので、もう5年間も続いている。月に一度マエストロでコンサートをやっているので、今回で58回目となっている。構成は第一部が30分強で、3人の歌手がそれぞれソロで2曲づつ歌う。12時から約1時間が食事時間となりパスタランチが出た。1時からまた30分間今度は二重唱の歌が3曲あり、そのほかのイヴェントを含めて予定終了時刻は1時30分頃という感じだ。

今回はテノールの水野優、ソプラノの宮地江奈、バリトンの伊良波良真の3人が歌い、ピアノは田中健、司会が林よう子だった。ソロの歌は、自分の好きな歌を選ぶようで、基本はオペラの曲だが、水野は「アマポーラ」を、伊良波は故郷の沖縄民謡も歌った。後半の二重唱は、ソプラノとテノール、テノールとバリトン、バリトンとソプラノという組み合わせになるので、選曲も気を使うだろうが、うまく選んであった。

午前中から始まるので、未だ声の調子が整っていないかも知れないのではないかと不安になるが、ソプラノの宮地はモーツァルトのアリアでコロラトゥーラをバンバン歌ったので驚いた。スロースタートだったのはテノールの水野で、最初の「アマポーラ」はまだ調子が出ずに、後半になって声が出るようになった。昔に会社勤めをしていた時に、やはり低血圧なのか、午前中は半分死んでいるようにしていた同僚が夜になると元気になるのを思い出した。

若手の歌手のコンサートだが、やはり生で歌声を聴くのは楽しい。本人たちも歌う機会が得られて貴重な体験だろうから続いてほしいと思った。

食事はもともと期待していないが、最初にグリーン・サラダが出て、次がペンネのビーフ・シチュー・ソースとでも呼ぶようなパスタ。紅茶のセミフレッドとコーヒーという形。ペンネはイタリアンというよりもフレンチ崩れという感じの皿だった。一時に60人分をサービスするので仕方ないとは思うが、もう少しアルデンテで熱々の出来立て感が欲しい。

これだったら、ランチタイムではなく、午後2時から4時ぐらいのティータイム・コンサートにして、紅茶とおいしいケーキのサービスで企画した方が、店にとっても客にとっても良いのではないかと考えた。

ポルトガル・ファドの旅10

2019-06-28 09:56:26 | 旅行
いよいよ帰る日となる。朝の8時半に迎車のサービスを頼んでいたので、建物を出ると運転手が待っていて、すぐに空港へ向かう。帰りはリスボンから、ロンドンのヒースローへブリティッシュ・エアウェイで向かい、ヒースローで東京の成田行きに乗り換える。ターミナルが異なるので、時間的に大丈夫かどうか、ちょっと心配する。

ポルトガルからイギリスへの飛行では、同じEUではあるが、イギリスはシェンゲン条約に入っていないので、リスボンでEU出国の扱いとなる。リスボンの空港でチェックインして荷物を預け、手荷物検査を通過後、指定のゲートへ行く途中で出国の審査がある。日本などのパスポートはIC化されているので自動ゲートでの出国が可能となっていたが、EU出国のハンコが欲しかったので、あえて少しだけ並んで出国手続きをした。

ヒースロー空港ではターミナル3に到着したが日本への便はターミナル5だったので、どうやって移動するのかなと思っていたが、連絡便と書いた紫色の表示に従って歩いていくと、出国エリアのまま、他のターミナルへ向かう循環バスの乗り場に出て、簡単にターミナル移動ができた。シェンゲン国でないので,EUからの便は外国扱いだが、表示をよく見ると、ダブリンからの便は国内扱いしているようで、ブレクジットの問題の本質を見るような気がした。ヒースローのセキュリティ検査は厳しそうだったので、靴まで脱いで無事通過。ちょっと時間が余ったので、空港内にあるパブで生ぬるいエールビールと良く冷えたインディアン・ペール・エールを飲む。

時間が迫ったので、ゲートクローズ直前にゲートに入り、何とか乗り継いだ。ブリティッシュ・エアは、思ったよりも食事もよく、エコノミーなのにスパークリング・ワインも出してくれて、なかなか良かった。沢山ワインを飲んで、ぐっすり寝たので、映画を見る暇がなかったが、ブリジット・ジョーンズの「ダメな私 最後のモテ期」を気楽に見た。

成田について自動顔認証で入国。ハンコは押してもらう。ターミナル2からザ・アクセス・成田に乗ったが、待ち時間が思ったよりも長かった。時刻表を確認してみると、このバスは予約不要で便利だが、第二ターミナルでは停留所の2番と19番から出ることになっていて、日中は交互に出るので片側の停留所に行くと便数が半分だと分かった。第一と第三ターミナルは乗り場は一つなので、そこで待てばよいが、第二ターミナルは乗り場が二つになっているので、かえって不便だ。東京駅から行くときはどちらの乗り場にも止まるのに、乗る時には片方しか止まらないのは不便。これならば停車所を一つにした方が良いと思う。

それでも何とか、東京駅まで戻ってきて今回の旅を終えた。

ポルトガル・ファドの旅9

2019-06-27 06:49:27 | 旅行
月曜日だが休日だったので、休日でも開いている水族館へ行く。リスボンの水族館はヨーロッパで一番大きい水族館で、他国からの訪問客も多い様だ。設計は日本人らしくなんとなくうれしかった。10時から開館なので、宿を9時に出た。すぐにバスが来たので、それに乗ると9時30分過ぎにはついてしまった。リスボンのバスは社内で次の停留所のアナウンスや表示が出ないので、どこで降りるか結構スリリングだった。しかし、これもグーグルの経路を設定しておくと、バスがどこまで来たのかGPSのデータで分かり、水族館のすぐそばの停留所で降りることができた。僕はスマホとにらめっこしていたが、もう一組外国人夫婦の旦那がスマホを見ていたので、水族館ですよと声をかけたら一緒に降りてきた。

開館の25分前に着いたが、既にフランス人らしいカップルが列に並んでいた。その後ろに並んで、待っていたらバスで一緒だった夫婦がやって来て、先頭のフランス人にイタリア語で切符売り場の場所を尋ねたら、フランス人は英語かフランス語でないと分からないと答えるので、ここが切符売り場だが、10時にならないと窓口が開かないと、イタリア語で説明してあげた。リスボア・カードの割引と、65歳以上のシニア割引のどちらが得かなと思って、窓口で尋ねると、両方とも適用してくれて半額ぐらいで安く入れた。

この水族館の水槽は恐ろしく大きな円筒形で、葛西水族館のような回遊魚こそいないが、マンボウやマンタに加えて、ペンギン、ラッコなども一緒の水槽で観ることができて、なかなか面白かった。ゆっくり回ったので、2時間ぐらいかかった。常設展と特別展があり、両方を観たが、常設展示だけで十分という感じだった。また来たルートを戻り、リスボン中心部でお土産などを見て回る。

夕方に宿に戻り、休息の後、8時半に「クルブ・ド・ファド」に繰り出す。カセドラルのすぐ裏なので歩いていく。ここのファドは歌手が4人。女性3人に、ギターも弾く男性が一人。伴奏はポルトガルギターと普通のギターのほかに、コントラバスのウッドベースが入っていた。料理はおいしいが、量が多いので一皿を二人でシェアした。英語でなくてポルトガル語でシェアするというのは何というのだろうと思ったら、地球の歩き方には載っていないが、るるぶには必要な表現が出ていて、うまく通じた。旅行の会話集は役に立つ例文が少ないが、るるぶの例文は実によくできていて実用的だ。ウェイターに呼びかけるときの言葉「ファシュ・ファヴォール」が載っていて、きちんと通じた。二人でシェアするというのもきちんと載っている。英語だとシェアだが、ラテン語系ではディヴァイドに相当するディヴィディールという言葉を使う様だ。

前菜でエビを蒸したものと、あさりの酒蒸しを食べたが、どちらもソースが濃厚でとてもおいしかった。パンは要らないというとウェイターが、ソースをつけて食べるのに必要だというので、出しておいてもらったが、確かにソースが濃厚で、パンに付けて食べたくなった。メインはタコの蒸したもの。一人前を二人で食べたが、それでも日本人には多過ぎるくらいだった。この店は歌や演奏もよく、サービスの大変良かった。欧州でのレストランサービスの最も典型的な効率的サービスだ。会計をしたら、タクシーを呼ぶかと聞かれたので、近くだから歩いて帰ると答えて、12時過ぎに店を出た。

ポルトガル・ファドの旅8

2019-06-26 06:37:44 | 旅行
リスボンの3日目。日曜日で午前中しか開かない教会があるため、午前8時に宿を出て、28番の路面電車で高台のグラサへ行く。いつでも満員の路線だが、朝早かったので、社内には4人しかいなかった。グラサには展望台があり、リスボンの町全体を観ることができる。晴れ渡って美しい眺めだった。

隣の丘の上にあるサン・ジョルジェ城への道も曲りくねった細い道で、迷いそうだったので、グーグルの経路案内に従ったら、結構スムーズに行けた。本当に便利でありがたい。まだ朝早かったので、まったく待たずに入れたが、出てきたときには長蛇の列になっていた。ここはリスボア・カードで入れないので、朝早くが良いかも知れない。古い城塞の跡地だが、1か所カメラ・オブスクーラ(直訳すると暗い部屋)という場所があって、暗い部屋の中で、リスボンの風景を大きな円盤に映して見ることができる。20分おきにガイドツアーがあり、英語、ポルトガル語などを選んで参加する形だが、行ったらちょうど10時の英語の回の時間だが誰もいなかったので、貸し切りで説明してもらった。どうやって映すのかと質問したら、鏡を1枚とレンズを2枚使って映写していると説明してくれた。快晴の日だったので良く見えたが、曇りや雨だと鮮明ではないそうだ。

出てくると、中庭で十字軍とムーア人の戦いを再現するショーみたいなものをやっていたので少し見たが、あまり面白くなかった。

城から少し下ってサン・ヴィンセント・デ・フォーラの修道院を観る。アズレージョがこれでもかというぐらいある。アズレージョ好きの人は必見だろう。回廊の中ほどに、美しい聖器室があるとガイドブックにはあるが、閉まっていて入り方がわからなかったので、出口へ向かうと、おばさんが話しかけてきて、聖器室を観たかと聞くので、見てないと答えたら、管理人と友達なので鍵を借りてきて開けるからちょっと待っていろと言われて、そのまま待っているとすぐに戻ってきて見せてくれた。英語の説明でよいかと聞かれたので、英語かイタリア語にしてくれと答えたら、イタリア人かと尋ねるので日本人だというと、日本人がイタリア語なのと言いながら、イタリア語の方が楽だからと言ってイタリア語で、大理石の産地などを細かく説明してくれた。これを見せたのは内緒なのだからだれにも言うなと口止めされたので、どうして案内しているのと聞いたら、どこかの修道会に所属していて、ヴォランティアとして案内をしているとの答えだった。帰る時には教会の立派なガイドブックまでくれて、親切なおばさんだった。

近くのサン・エングラシア教会も覗いた。ガイドブックには教会と出ていたが、行ってみると教会ではなく納棺堂といったもので礼拝所はない。バスコダガマなどの有名人の棺が並んでいる。歌手のアマリア・ロドリゲスの棺もあったので、記念写真を撮った。

お腹が空いたので、近くの広場の屋台でイワシの炭火焼きとビールで昼食。昔テレビのコマーシャルで、「ポルトガルの屋台でも、お金で買えるものはマスターカード」という宣伝文句があったので、マスターカードで支払いしようとしてたら、現金にしてくれと言われた。

宿まで歩いて帰り、休息して8時半から「アデガ・マシャード」でファド・ショー。ここの料理はヌーヴェル・キュイジンヌ風で、美しく盛り付けられてポーションも少ない。これなら食べれそうだと思って、前菜からデザートまでのコースを頼む。ザ・フォーク経由で予約したら、最高の席を用意してくれた。ここは団体よりも個人客を優先している。コースはなかなかおいしいが、アラカルトで頼もうと思うと、料理のバリエーションが少ない。ワインはダンの赤を飲んでいたら、途中から入ってきて隣の席に来たチリ人の若い娘さんが、そのワインはどお?と尋ねるので、品種は知らないがカベルネソーヴィニヨン的な味で、美味しいよと言ったら、ポルトガルのワインがおいしいか心配だというので、チリの方がおいしいかも知れないが、アルゼンチンのマルベック種のワインもいけるねなどとワイン談義をする。聞けば2か月かけてヨーロッパを回っているという。チリではタイレストランと経営していて、お酒が好きなので、工夫してオリジナルのカクテルと創ったと詳しくレシピを教えてくれたが、食材の名前がスペイン語になってしまい、よくわからなかった。

この店のファドは、歌手が女性3人、男性一人、ポルトガル・ギター、普通のギター、ベース・ギター(四絃)という組み合わせ。大体どこの店でも同じだが、客は8時半ごろまでに入店して食事を頼む。ショーは9時から9時半ごろの間に始まり、一人の歌手が15分間歌い、20分間休みとなり、他の歌手がまた15分間歌い20分間休憩というのを繰り返す。20分の休みの間に、料理をサービスして、客は食べ、歌の間は食べずに聴く形になるので、結構忙しい。歌手は大体4人なので、11時過ぎぐらいに1サイクル終わる。客がいればその後も同じ形で午前1時ごろまで繰り返す形だが、多くの客は1サイクル終わると帰ってしまう。僕はいつも12時過ぎまで聞いていたので、最後の4人になっても頑張って聴いていた。

この店の料理、サービス、ファドの質は最高レベルで、日本人にも量が少ないので有難い。おすすめの店だ。昔はアマリア・ロドリゲスが歌っていたということで、彼女の写真や直筆の手紙も飾ってあった。