劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立劇場の「くるみ割り人形」

2023-12-23 17:23:13 | バレエ
12月22日(金)の夜に新国立劇場でバレエ「くるみ割り人形」を見る。22日が初日で、1月8日までの毎日17回公演。場内は満席でロビーも混雑していた。6組のクララと王子が踊るので、層が厚くないとできない公演だろう。これだけの公演に観客が入るのがすごいと思った。初日は小野絢子のクララに、福岡雄大の王子、中家正博のドロッセルマイヤー、木下嘉人のネズミの王様という、間違いのないキャスト。

オーケストラは東京フィルで、指揮はアレクセイ・バクラン。東京フィルは、この公演中にも第九の演奏会や、年越しコンサート、新年コンサートが並行してあるから、稼ぎ時とは言え、エキストラも含めてフル稼働だろう。

新国立劇場の「くるみ」はウェイン・イーリングの振付で、豪華で面白いと言えば、その通りだが、凝り過ぎた振付は、面白くもあり、難しい割には効果を上げていないところもあるような気がする。例えば、1幕の終わりに出てくる「雪の精の踊り」や2幕の「花のワルツ」は、コールドによる複雑なフォーメーションがこれでもかと続いて面白いが、2幕の「アラビアの踊り」などは、高度な技術が使われる割には面白くなく、賛否両論だろう。

毎回、イーリング版を見ると1幕は面白いが、2幕のいろいろな踊りは何のために踊っているのかよくわからず、退屈したりする。全体の構成もこれでよいのかと気になった。

それでも、小野のクララも福岡の王子も、きちっとした踊りで、足さばきも見事で堪能した。「雪の精」の場面の合唱隊は、コロナのために、舞台袖でこれまで歌っていたが、久々に2階の下手、上手に登場したので、声も良く聞こえて、日常が戻ったと嬉しかった。

7時開演で、30分の長い休憩が入り、終演は9時30分頃。帰りがけにパブで軽い食事とビールを飲む。飲み物はIPA、ローストビーフ、キャベツとアンチョビのオーブン焼き、フィッシュアンドチップス、ピザなど。

読響の「第九」

2023-12-22 11:16:05 | 音楽
12月21日(木)の夜にサントリーホールで、読響のベートヴェン「交響曲第9番」を聴く。ヤン=ウィレム・デ・フリーントの指揮。新国立合唱団が60人編成で入っていた。チケットは売り切れになっていたが、客席は9割程度の入りに見えた。プログラムを見ると、読響だけで7回も第九の演奏会がある。ほかのオーケストラも同じように演奏しているので、12月は東京だけでも30回以上の第九演奏会があるのではなかろうか。

ここ数年はコロナの影響もあり、合唱がマスクをしていたり、サントリーホールならば、舞台後ろのP席に合唱団がまばらに座ったりということで、何となく違和感があったが、今回は合唱団も舞台後ろに20人×3列で並び、その前にソリスト4人が座るという、平常のスタイルに戻った感じ。オーケストラの配置はいつもの読響と異なり、ヴィオラとチェロが入れ替わって、上手側の客席近くにチェロが並んでいた。

何度も聞いている作品だが、何度聞いても面白いなあと思うので、人気も高いのだろう。フーガを使い、各パートが追いかけていく演奏がとてもスリリングだし、楽器の使い方もうまいなあと、何度も感心する。今回の声楽ソリストは森谷真理、山下裕賀、アルヴァロ・ザンブラーノ、加藤宏隆だったが、粒が揃い,立派な歌唱だった。この曲の声楽ソリストはそれほど見せ場があるわけではないが、全体のバランスとあっていると、聴いていて違和感がないので、良いと思う。

多くのコンサートは休憩を入れて2時間程度が多いが、第九の場合は、1曲だけで終わることが多く、70分程度で終わるので終演は8時15分頃。そこからレストランでもと思うのだが、このシーズンはクリスマス前でいつも混みあっていて、なかなか難しい。結局、いつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、イワシのエスカベッシェ、生ハムのクリームコロッケ、ワタリガニのグラタンなど。

新国立劇場の「東京ローズ」

2023-12-16 10:46:18 | ミュージカル
12月15日(金)の夜に新国立劇場小劇場で、英国製ミュージカルの「東京ローズ」を見る。19時開演、15分間の休憩を挟み、終演は21時30分頃。満席だった。

東京ローズというのは、第二次世界大戦中に、米軍兵士向けのプロパガンダ放送をしていた女性アナウンサーで、米軍兵士の中で人気があり、「東京ローズ」と呼ばれていたとは知っていたが、それ以上の深い知識がなかったので、今回のミュージカルを見て、こういう人物だったのかということがよく分かり、面白かった。

主人公の戸栗アイヴァは、米国で育ち米国籍を持っていたが、大学UCLAを卒業した時に日本に住む叔母の病気を見舞うためにを訪ねたところ、太平洋戦争が始まり、米国に帰国できなくなった。日本では特高に日本帰化を迫られるが、それを断り、最初はタイピストとして働き、日本語原稿の翻訳もするようになり、ラジオのアナウンサーも引き受けたようだ。実際には多くの女性アナウンサーがいたようだが、戦後は誰もアナウンサーだったことを認めず、米国のマスコミが探し回って、高額の報酬を払い、アイヴァにインタビューを受けさせたと描かれている。アイヴァは米国に「帰国」するが、記事が米国内で報道されると、カリフォルニア州の反日的な検事が、国家反逆罪で起訴し、証人に偽証させて有罪として、米国市民権をはく奪した。アイヴァは法律的に戦い、1977年に大統領特赦で市民権を回復して名誉回復されるまでが描かれる。

複雑な話で、登場人物も多いが、男性役も含めて全部を女性6人で演じ、主人公アイヴァは、6人が順番に演じるという面白いキャスティング。日本公演ではオーディションですべての配役を決めたようだが、実力があり、難しい歌も歌える女優が揃っていて見応えがあった。同じ役を順番に演じていくので、どうしても比べたくなってしまうが、1幕最後に演じた原田真絢が一番役にあっていて、歌も良いように感じられた。

スピーディな展開で台本も良く整理されており、なかなか面白い。台本と作詞はメリヒー・ユーンとカーラ・ボールドウィンとなっていて、どんな人物かは知らないが、フェミニスト的な観点もあり、何となく「シックス」というミュージカルと似た雰囲気を感じた。ユーンは写真で見ると東洋系の顔立ちで、英国での2019年の初演時に自分で演じた俳優でもあるようだ。楽団は舞台上の2階部分で、男性4人が演奏していた。

日本のミュージカルは、歌がお粗末で、残念な公演が多く、足が遠のくのだが、「東京ローズ」ぐらいの水準で上演できれば、ぐっと面白くなるような気がする。米国に批判的な内容の作品だから、米国でなく英国で作られたのだろうが、こうした作品は日本人が作っても良いような気がした。映画「硫黄島からの手紙」と「父親たちの星条旗」を見たときにも、どうして日本人が「硫黄島からの手紙」を作らなかったのだろうと感じたが、それと同じことを今回も感じた。

今年の締めくくりによい作品を見たと思った。スーパーで買い物して、家で軽い食事。イタリア産の生ハムとサラミ、フランス産のウォッシュタイプ・チーズ、田舎パンなど食べながら、カヴァを飲んだ。

トム・ジョーンズの遺作 じいさんばあさんズ

2023-12-15 10:29:31 | ミュージカル
12月14日(木)の夜に、神楽坂のThe Gleeで台本作家トム・ジョーンズの遺作「じいさんばあさんズ」を見る。原題はGeezersだから、「変な老人たち」という感じだろうが、出演者二人で、男女一人づつなので、「じいさんばあさんズ」としたのだろう。小さなライブハウスでの公演で、満席。19時開演で、演出家の勝田安彦が30分ほど解説した後、本編が始まり、20時30分頃に終了した。全4回の公演。

トム・ジョーンズは、ハーヴィー・シュミットと組み、主に小劇場ミュージカルを書いた人。代表作は「ファンタスティックス」だが、今年の夏に95歳で亡くなった。演出家の勝田氏は、トム・ジョーンズと生前から深く親交を結び、彼の作品を多く上演したきたが、今回も亡くなった時に残された台本を整理して、上演したようだ。今回の作品は、ジョーンズとシュミットが書いた多くの作品の中から、老人をテーマにした曲を17曲選び、曲の背景を簡単に説明しながら演じ、歌う構成となっている。ジョーンが老齢となり、自分のことも踏まえて書いたテーマがよく伝わった気がした。

「結婚物語」の有名な曲も入っていたが、大半はあまり有名でない曲で、書かれたものの実際の作品では使われずに埋もれていた曲もある。出演はジョーンズとシュミット作品に多く出演している、宮内良と宮内理恵の二人。伴奏はピアノ1台で高橋瞳輝子で、ちょっとだけヴァイオリンも弾いた。舞台の背景には時折、写真などが映写されたが、シュミットが描いた美しい絵も出てきたので、昔を思い出して懐かしかった。久々に見たが、宮内理恵は歌も演技も達者だった。

ジョーンズとシュミットは、60~70年代に小劇場で活躍したが、「ファンタスティックス」以降のブロードウェイミュージカルも大きな影響を受けて、演出法が大きく変わったような気がする。昔の名作、「セレブレーション」なども、もう一度見てみたい気がした。

まっすぐに帰宅して軽い食事。ボルドーの赤を飲みながら、トルティージャ、イワシのオーブン焼き、チーズ、マフィンなど。

北とぴあの「レ・ボレアード」

2023-12-09 14:43:24 | オペラ
12月8日(金)の夜に、王子の北とぴあでラモーのオペラ「レ・ボレアード」を見る。1995年から続く、バロックオペラの上演で、1763年にラモーが書いたが、長らく上演されていなかった作品。北とぴあのさくらホールは、1300人収容の多目的ホールで、演劇用の舞台にしてオケピットも作れるはずだが、寺神戸亮の率いる公演は、いつもコンサート・ホールスタイルで使用して、舞台奥にバロック・オーケストラが陣取り、舞台前方で演技する「セミ・ステージ方式」で行われる。コンサート・オペラという認識なのだろう。

尤も、北区の支援を受けていても製作費には窮しているようで、セットも衣装も必要最低限といった雰囲気だから、本格的な舞台公演は難しいのだろう。それでもオーケストラは古い楽器を使った本格的な古楽編成で、響きも現代のオーケストラとは違うし、テオルボなどの見慣れない楽器もある。もう一つ、この公演で見る価値があるのは、バロックダンスだ。欧州から3人の専門ダンサーが来日して、日本人の松本更紗も加わって、バロックダンスをふんだんに披露した。衣装は既存のものだろうが、豪華なものをたくさん見せる。オペラ出演者の貧弱な衣装と比べると、ちょっとちぐはぐな印象もあった。

オペラは18世紀のフランス物なので、神話的な題材であり、バクトリアの女王が北風の神ボレの息子のどちらかと結婚しないといけないが、出自不明の恋人が好きなので悩むという話。最後は、その恋人は北風の神の親類筋に当たるということがわかり、ハッピー・エンドとなる。バクトリアの女王役はフランスから呼んだソプラノのカミーユ・プールが歌い、立派な歌唱だった。日本人では、バリトンの与那城敬が抜群の存在感を示した。ほかの日本人もそれなりに頑張って歌ったが、当時のオペラに特有な「アジリタ」唱法には、皆苦労していた。

北とぴあのホールは、エントランスが貧弱なためか、何となく劇場に行くという「わくわく感」がない。公民館と呼んだ方が良いような雰囲気で、長い演目になると、椅子がくたびれて来たのか、お尻が痛くなるので、そろそろ大幅に改装したほうが良いのではないかという気がする。今回の演目は、午後6時に始まり、20分間の休憩を挟んで、終演は9時10分頃。9割以上の入りだった。

ホール周辺には魅力的な店がなさそうなので、家に帰って食事。昼に作っておいたポトフを温めて食べる。キャベツ、ニンジン、玉ねぎ、豚肉のプティ・サレ、ソーセージなどの煮込み。ビールと白ワイン。