劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立劇場の「トスカ」

2021-01-29 14:56:31 | オペラ
1月28日(木)の昼に、新国立劇場の「トスカ」を観る。収容率は50パーセントだが、開催されるだけでもありがたい。新国立の「トスカ」は豪華な舞台で、装置、衣装、演出ともによく、世界的に見ても高レベルだと思う。だから、歌手さえそろえば、いい舞台が観られるので、いつも楽しみにしていいる。

今回のトスカ役はキアーラ・イゾットン、カラヴァドッシ役はフランチェスコ・メーリで、二人とも素晴らしく良かった。メーリは久々に聞く高音まで透き通って抜けるようなテノールで、1幕の出だしから堪能した。イゾットンも強いソプラノの声で、1幕は低調だったが、2幕3幕は素晴らしい歌唱を聞かせてくれた。もう、この二人の歌声を聞くだけで見に行ったかいがあるという感じで、楽しい時間を過ごした。

コロナ流行中なので、いろいろとネットで検索してみるが、まともなオペラが上演されているのは、世界中でも日本とオーストラリアだけではないかという気がする。2週間の隔離期間を過ごして日本に来てくれた両歌手には本当に感謝したい。

悪役のスカルピアはダリオ・ソラーリで、声の質はとても良いのだが、もう少し声量が欲しい。1幕終わりの「テ・デウム」の場面では、フル・オケとコーラスをバックにバリトンの聞かせどころとなるが、オーケストラの音に負けて声が埋もれていた。この点は残念。

出演した日本人の中では堂守の志村文彦がよかった。

指揮はダニエレ・カッレガーリで、オケは東京交響楽団。そつのない演奏だったが、2幕の窓を開けて外からの音楽が聞こえる場面などは、もう少しニュアンスが欲しかった。

新国立のオペラは、次は「フィガロの結婚」が予定されているが、主役のバリトン歌手が来日できなくなったため、今回のスカルピアをうたったソラーリが、そのまま日本に残り、フィガロを歌うようだ。今回の「トスカ」も「フィガロ」の稽古と合わせてやっているので、休む間もなく忙しかったのだろうが、次回のフィガロではぜひ期待したい。

劇場で見ている最中にみぞれが降りだして、行きつけのスペインバルが臨時休業となってしまったので、家に帰って食事した。サラダを前菜にして、缶詰の白いんげん豆のトマト煮込みとソーセージで軽い食事。飲み物はカヴァ。


松本和将のピアノ小品集

2021-01-27 10:40:38 | 音楽
1月25日(月)の夜に、洗足のプリモ芸術工房で松本和将のピアノ小品集を聴く。午後7時から途中の15分間の休憩を入れて約2時間。小さな会場なので、聴衆は10数名だが、同時にオンライン配信しており、こちらのほうは100アカウントぐらいの申し込みがあったそうだ。ということで、こうなるとオンライン配信がメインで、その収録スタジオで聞いているような気分となる。緊急事態宣言下でちゃんと開催されるかちょっと心配していたが、無事に開催されてなによりだった。聴衆はざっと見たところ中年女性が大半という印象。

松本和将は、12月に一度ベートーヴェンを聴いて感心したので、ほかの曲も聴いてみたくなった。プログラムは小品集ということで、よくピアノ名曲集などに入っている作品が中心。ショパンの幻想即興曲で始まり、モーツァルトのトルコ行進曲、チャイコフスキーの四季、シューマン、ブラームスなどで前半が終わる。後半はラヴェル、ドビッシーとフランス物があり、グリークの叙情小品集、そして最後はショパンで終わった。アンコールはベートーヴェン。

大半は知っている曲だったが、グリークの叙情小品集というのは初めて聞いた曲で、なかなか面白いと思った。

松本の演奏は、力強いのが特徴で、速度はおおむね早いが、ゆっくりな曲はずいぶんと遅く弾き、メリハリがよくついている印象。何が違うのかわからないが、なんとなく演奏に引き込まれて、楽しんで聴ける。右手と左手がしっかりとセパレーションされていて、曲の構造までよくわかるような気がした。

あっという間に2時間が終わったが、緊急事態制限中なので食べるところは開いていない。仕方がないので家に帰って作っておいたポトフで軽い食事。飲み物はボルドーの白。なかなかしっかりとしたワインで、おいしかったのでチーズも食べた。

東京シティフィルのショパンとショスタコーヴィッチ

2021-01-21 11:10:24 | 音楽
1月20日の夜に、池袋の芸術劇場で東京シティ・フィルのコンサートを聴く。都民芸術フェスティヴァルの一環だが、緊急事態宣言下で、午後7時開演なので、中止となると嫌だなと思っていたが、予定通りに開催されてよかった。7時開演で、前半が横山幸雄のピアノでショパンのピアノ協奏曲1番。15分間の休憩をはさみ、後半はショスタコーヴィッチの交響曲5番「革命」だった。指揮は高関健。

緊急事態宣言のためか、演奏者や曲目に人気がないためかわからないが、客席は3~4割しか埋まっておらず、寂しい限り。これでは演奏する側も張り合いがないだろう。

前半のショパンは、横山幸雄の世界。ショパンコンクールで高い評価を得たというだけあって、オーソドックスな演奏。アニメの「ピアノの森」でさんざん聞いた曲なので、この曲を聴くとアニメを思い出す。まるで「パブロフの犬」状態だ。

後半は打って変わってショスタコーヴィッチの5番。ショスタコーヴィッチは、それほど好きではないが、若い時には現代的な音楽を書いており、1936年に共産党に批判されたので、社会主義リアリズム的な作風に転換して書いたのが、この交響曲5番だといわれている。こういう純粋音楽の世界で、何が社会主義リアリズムなのか僕にはわからないが、聞いていると妙に堂々としているというか、威勢がよく、これでもかというくらいにでかい音で演奏する感じ。まるでスターウォーズのダースベイヤーの軍団が行進するようなイメージの曲だ。

まあ、スターリンが恐怖政治をしていた時代なので、スターリンが喜ぶようなこけおどしの音楽を書いたのだろう。聞いているうちに、モスクワで見たモスクワ大学の建物を思い出した。「スターリン様式」といわれる建築の代表作だ。この曲のように堂々として威勢が良い。

それにしても、前半にショパン、後半はショスタコーヴィッチというのはいかにも食い合わせが悪いような気がする。ショパンはショスタコーヴィッチの100年ほど前の人だが、ロシアに攻め込まれてポーランドが分割されたため、パリで曲を書きながら祖国を思っていたというイメージ。それとスターリン好みの曲というのはどう聞けばよいのか戸惑ってしまう。コンサートの副題は「音楽の喜び」となっているが、本当にそうなのだろうか。「スラブの側面」とでもしたほうが良いのではないかという気がした。

指揮者の高関健は、ショスタコーヴィッチを譜面を見ずに暗譜で指揮していたから、彼の得意な曲なのかもしれない。まあ、都民芸術フェスティヴァルでなければ、自分では決して積極的に聞きに行かない曲と顔ぶれなので、勉強にはなった。

午後9時にコンサートが終わると、もうレストランは空いていないので、仕方なく家で食事。サラダとサーモンのマリネ、オイル・サーディンのオーヴン焼き、イングリッシュマフィンなど。飲み物はスペイン産のカヴァ。


新宿オペレッタ劇場27

2021-01-18 11:13:17 | オペラ
1月17日(日)の夕方に新宿文化センターの小ホールで、新宿オペレッタ劇場を見る。27回と書いてあるので、調べてみると、2001年から始まったとある。年に1~2回公演をしているようだ。今回はガラ公演だが、作品の上演も過去にはやっている。それにしても20年も続いているのはすごいことだと思う。今回はコロナのために入場定員を半分に絞ったこともあり、チケットは完売となっていた。出演者も観客もこの20年間一緒にやってきたムードで、どちらも高齢化を隠せないムード。

入ると椅子の上にプログラムが置いてあるが、プログラムの表紙はドイツ語となっていて、ウィーン好きのオペレッタ企画だという気がした。プロブラムは2部に分かれており、1部はシュトルツ、スッペ、ベルテの後に、シュトラウスの「ジプシー男爵」から6曲がうたわれた。10分間の休憩を挟み、後半はシュトルツ、ライモンド、カールマン、レハール、ツィラー、ベナツキーなどの曲。オペレッタは結構知っているつもりだったが、かなりマイナーな作品からも曲が選ばれているので、知らない曲がたくさんあって驚いた。かなり、マニアックな人の選曲だと感じたが、どれも美しい曲で堪能した。

伴奏はピアノだけだが、簡単な衣装と小道具で曲のムードを出していて、ちょっとした振り付けもあるので楽しめる。いろいろな曲がうたわれるので、どんな話のどんな曲なのか気になるが、驚いたことに全部日本語に訳して歌われたので、まあ、聞いていれば何をうたっているのかわかるのはありがたい。さらに知りたい人は、配られたパンフレットを読めば、どんな作品のどんな場面で歌われるのか書いてあり、よくわかる。だが、残念なことに、A4版横書きで、52文字/行、60行/ページぐらいに詰め込んであり、ほとんど禁止的なほど読みにくい。2段組みにして行内文字数を少なくするのと、行間を1.5倍以上に取らないと、老人には読めないのではないだろうか。

解説は詳しいので感心したが、古いドイツ映画の題名が『僕の心は君のもとへ』となっていて、首を傾げた。ヤン・キープらとマルタ・エッゲルト夫婦の出た1934年の作品となっていたので、調べてみたら、日本公開題名は『唄へ今宵を』だった。確かにドイツ語題名を直訳すると「僕の心は君のもとへ」となるが、ドイツ語題名までは覚えていなかったので、ちょっと戸惑った。それでもマルタ・エッゲルトの美しい姿を思い出して、一人でうれしくなる。

それでも、最近はなかなか聞かれなかったオペレッタの名曲を堪能した。なんとなく、ムードとしては戦前の浅草オペラみたいだなという感じ。

コロナで食堂は早く閉まってしまうため、家に帰って軽い食事。コールスローサラダと、作り置きのチキン・カレー。飲み物はヴァン・ムスー。

ヴァイグレと藤田真央

2021-01-15 10:29:33 | 音楽
1月14日(木)の夜に、サントリー・ホールで読響のコンサートを聴く。曲目はラフマニノフのピアノ協奏曲3番と、チャイコフスキーの交響曲4番。コロナの緊急事態宣言で、夜のコンサートが去年のように全部中止になったら困ると思っていたが、予定通りに開催されてありがたかった。音楽の業界団体から、宣言の前にチケットを売ったコンサートは予定通りに開催してよいとの指針が出ているようだ。7時開演で、15分の休憩をはさみ終演は9時頃だった。チケットは完売となっていたが、客席は8~9割の埋まり具合といった感じ。敬遠した人もいたのかもしれない。

寒いのでコートを着ていきたいが、クロークは袋に入れたコートしか預からないとして、紙袋は50円で売っていた。なんとなく不便。

最初のピアノ協奏曲は、若い藤田真央がピアノを弾き、指揮はセバスティアン・ヴァイグレ。何しろ音が沢山あるピアノ曲で、若い藤田が汗をかきながらバリバリと弾いた。元気のよい演奏で、聴衆も喜んでいるムードだった。

後半のチャイコフスキーの交響曲はヴァイグレの真価を発揮した演奏。久々に見る読響の大編成で、迫力のある音を出した。大きな音になっても、乱れたりせずに会場を包み込むような音で、やはりこういう演奏を聴けるのはうれしいと思う。聴衆の拍手も普段よりも力が入っていたように感じるのは、演奏がよかったこともあるが、緊急事態宣言下の演奏会を喜んだこともあるだろう。

終演すると午後9時なので、食堂もレストランもみな閉店している。不便で困るが、こうした状況下なのであきらめて家に帰って軽い食事。作っておいたサラダと、オイル・サーディンのオーヴン焼きを作った。飲み物はイタリアのスプマンテ。正月太りの解消にはよい。