劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

松本和将のベートーヴェン4大ソナタ

2021-11-30 10:49:26 | 音楽
11月29日(月)の夜に、浜離宮朝日ホールで松本和将のピアノを聞く。「世界音楽遺産」と名付けられたシリーズで、年に一度開催していて、今回が5回目。昨年はベートーヴェン年だったので、ピアノ・ソナタを弾こうと企画していたが、コロナ騒ぎで中止となったので、今年の開催となったようだ。御贔屓にしているピアニストなので、楽しみにして出かけた。

ホールは約7割の入りで、学生は安い入場料のためか、若い人も多かった。曲目は前半に「悲愴」と「月光」、15分の休憩後に「ワルトシュタイン」と「熱情」。7時開演で、終わったのは8時50分ごろ。どれも松本氏の演奏で聞いたことがある曲だが、今回はホロヴィッツが愛用していた1912年製のスタインウェイを使っての演奏だというので、ピアノの音色も楽しみにしていた。

ホロヴィッツはこのCD75 の製造番号156975のピアノを愛用して、世界各地のコンサートにも持って回ったらしい。それが日本にあるということは全く知らなかった。確かに音色を聞くと、ピアノ線の音がオブラードに包まれずに、直接聞こえるような響きで、マイルドで柔らかくなった最近のピアノとはちょっと違った音がした。ホロヴィッツの録音を聞いていても、現在とは音色が違った印象を受けたが、それは録音技術のためと思っていたが、実際にピアノがそういう音を出していたと知って、改めて驚いた。

松本氏の話によると、この響きが新たなインスピレーションを掻き立てて、演奏していても気持ちが良いらしい。僕も聞いていて、最初はちょっと粗野な音だと感じたが、聞いているうちに、これが本来のピアノの音ではないかと思えてきた。

松本氏の演奏は、従来にも増して力強いもので、フォルテは本当に強く、ピアノは美しく響かせた。最後の「熱情」の終わり近くは、こんなに早く演奏したっけ?と思うほどテンポの速い、「熱情」と呼ぶにふさわしい演奏だった。

来年も同じピアノを使って、リストの演奏会を開催したいと言っていたので、楽しみだ。

家に帰って、作っておいたおでんで夕食。寒くなるとおでんがおいしい。飲み物は大吟醸。

読響のモーツァルトとブルックナー

2021-11-27 15:05:36 | 音楽
11月26日(金)の夜に、サントリーホールで読響のモーツァルトとブルックナーを聞く。指揮はマリオ・ヴェンツァーゴで、ピアノがゲルハルト・オピッツ。当初はフルート協奏曲が予定されていたが、フルート奏者が来日できないため、ピンチヒッターでオピッツのピアノ協奏曲となった。先日はバーは開いたものの、ソフトドリンクしか出していなかったが、この日にはワインなどの酒類も出していたので、また一つ日常が戻ってきた。読響の弦楽器の譜面台も、一人1台だったものが、二人で1台と、これも平時に戻った印象。

曲目は前半がモーツァルトのピアノ協奏曲20番で、15分間の休憩の後、ブルックナーの交響曲3番「ワーグナー」。観客は7割程度の入り。サントリーホールのクリスマスの飾り付けが美しいので、何人か写真を撮っている人もいた。

前半のモーツァルトは、オピッツのピアノだが、結構な年齢なのにとても若々しい清涼感のある演奏なので驚いた。モーツァルトにしては珍しく短調で始まり、陰影の面白い曲。オピッツはドイツでの正統派のピアニストだという。後半は打って変わってブルックナーの交響曲。ワーグナーに献呈したので、その名前がついているらしい。1時間近い大曲で、70代半ばのヴェンツァーゴが力強く指揮をした。第一楽章は長いわりに面白くないと感じたが、2楽章以降は変化に富んで面白かった。5本もあるホルンが大活躍するが、いろいろな楽器の音色を聞かせるような箇所はあまりなく、管楽器はひたすら大音響を響かせる。ある意味ではワーグナー的な部分もあるが、ワーグナーよりもずっとおとなしく感じた。

9時に終了して、家に帰って食事。キャベツのサラダと、ナスのカレー。飲み物はボルドーの泡。

二期会の「こうもり」

2021-11-26 14:48:27 | オペラ
11月25日(木)の夜に日生劇場で二期会の「こうもり」を見る。ダブル・キャストで4回公演の初日。9割程度の入り。6時30分開演で、20分の休憩を入れて、終演は9時少し前。アンドレアス・ホモキ演出によるベルリン・コーミッシュ・オパーとのン提携公演。台詞は日本語で、歌はドイツ語で歌い日本語字幕が出る。ちょっと中途半端で頭の切り替えがつらい。

元のオペレッタは3幕構成だが、2幕のパーティの途中で切り、1部と2部という形に再構成して、台本をかなり切り詰めてスピード感を出した演出。1部が1時間25分、2部が1時間だから、ミュージカルのようにテンポアップしている。2部の前奏曲のよう演奏されるオケの曲は、場内の照明を落とさず、出入り口も開けたまま演奏が始まったので、ちょっと驚いた。オーケストラは東京交響楽団で、指揮は川瀬賢太郎。川瀬の指揮はエネルギッシュで、大きな身振りで表現を示すが、オーケストラはそこまで追随していない印象。

チューダー様式かビーダーマイヤー様式なのかわからないが、重厚な家具に囲まれた部屋で始まり、一部の家具が倒されてオルロフスキー邸のパーティ会場にもなり、シャンデリアも落ちてきて、刑務所にもなるというので、場面転換が早いというか、転換せずに済ませている。そうだとしたら、具象的な家具などではなく、抽象的なセットのほうが良いのではないかという気がした。舞踏会の出席者もみな同じような色のドレスを着ているが、アデーレとイーダぐらいは別の色にして、一目でわかるようにしてもらったほうが良い。

オルロフスキーはニヒルというよりも、単なる酔っ払いの間抜けのように描かれていて、ちょっと違うのではないかという気がした。原作のオペレッタの第3幕の冒頭は、酔っ払いの看守フロッシュが道化ぶりを見せ、いつも長すぎると思うが、今回はこれを森公美子が演じていて、本編の話とは関係のないオペラ漫談を10分以上続ける。オペラファンに受けようとして、有名なオペラのダジャレのような漫談を延々と続けるが、はっきり言って全く退屈な場面なので、全部カットしたほうがすっきりする。

日本の歌劇団の公演では、たいていは女性陣が良く、男性陣が弱いと感じるのだが、今回は反対。男性陣は充実しているが、女性陣は弱かった。突出してよかったのが、アイゼンシュタイン役の又吉秀樹。初めて聞いたが、力強い良く響くテノールで、日本人でもこんな人がいたんだと驚いた。これだけ歌えるならば、もっとどんどんとオペラに出て欲しい。もう一人刑務所長フランク役の斉木健詞も、よく声が出ていた。

1部はスピーディな展開で楽しんだが、2部の特に刑務所の場面が詰まらなく、ちょっとうんざりとした。それでも、又吉という素晴らしいテノールを聞けたことをもって良しとした。

家に帰って軽い食事。サラダ、クロスティーニ、イワシのオーヴン焼き。飲み物はソアヴェ。




ファビオ・ルイージ指揮のN響

2021-11-25 10:49:42 | 音楽
11月24日(水)の夜にサントリー・ホールでファビオ・ルイージ指揮のN響コンサートを聴く。サントリー・ホールはクリスマスの飾りつけできらびやかなムード。客席は8割ぐらいが埋まっていた。久々にロビーのバーカウンターが開いたが、ソフトドリンクだけで、酒は出ていなかった。冬場になるとコートを着ることがあるので、クロークも再開して欲しい。

演奏は前半がパガニーニのヴァイオリン協奏曲1番で、ソリストはイタリアの若手女性フランチェスカ・デゴ。パガニーニの曲だから、難しいテクニックを使った超絶技巧の作品だが、難なく軽やかに弾きこなしていた。ヴァイオリンの音を際立たせるために、オーケストラの音は抑制的で、パガニーニを堪能できた。

後半は打って変わって、チャイコフスキーの交響曲5番。ルイージの指揮はイタリア人らしい几帳面さと熱意に溢れるもので、チャイコフスキーの良さを引き出した。特に4楽章などは大いに盛り上がった。来年の後半からN響の首席指揮者になるというので、楽しみだ。

7時から始まり、終演は9時ごろ。帰りは、行きつけのスペインバルで軽い食事。生ハム、トルティージャ、ポテトサラダ、イワシのエスカベッシェ、鶏もも肉のオーリブ煮など。

新国立オペラ研修所のアリア・コンサート

2021-11-22 12:46:44 | オペラ
11月21日(日)の昼に新国立中劇場で、オペラ研修所のLe Promesse 2021 アリアコンサートを見る。研修所の22~24期生14人がそれぞれ1曲ずつオペラのアリアを歌う。男性、女性とも7人ずつ。イタリア物が多く、次いでフランス物、ドイツ物はないが、クルト・ワイルのアメリカ時代の曲があった。観客は7割程度の入り。

相当練習して各人とも臨んだ様子で、緊張しながら歌っていた。聞きなれた曲が多かったが、24期生で今年入ってきたソプラノが、「ラクメ」から「若いインドの娘よ、どこへ行く」をうたったのに注目。コロラトゥーラの難曲だが、きちんと歌っていた。

各人1曲ずつだが、少しはデュエットや、3重唱、4重唱なども欲しい気がする。オペラではよくでてくるのだから、ソロのほかにみな重唱も歌うようにしたほうが良いのではないかと思った。

帰りがけには雨が少し振り出したが、中華料理屋で早めの夕食。ほうれん草の胡麻和え、チャーシュー、上海ガニ(酔っ払い)、小籠包、春巻。飲み物は温めた紹興酒。