劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

読響の第九

2021-12-24 11:07:58 | 音楽
12月23日(木)のサントリー・ホールで読響の第九を聞く。7割程度の入り。合唱は新国立の合唱団で、ステージ後ろのP席で歌い、独唱者はステージ一番後ろに並んで歌った。

年末になると恒例の演目が並ぶが、今年は文楽で「忠臣蔵」、オペラは「こうもり」、バレエは「くるみ」を見たので、「第九」を聞いて今年も締めくくり。あとは年越しそばだけだ。

また「第九」かという感じもあったが、聞いてみると今回の第九は面白かった。予定していた指揮者が来日できなくなり、ピンチヒッターとなったのは、ジョン・アクセルロッドというアメリカ人指揮者。京都市響の首席客演指揮者を務めているとプログラムにあったので、たまたま来日していてそのままほかのオケでも振ったのではないかという感じで、さして期待していなかったが、情熱的な指揮ぶりでちょっとテンポが速いと感じたが、音楽的には面白かった。

それにしても、読響は12月18日から24日までに、6回も第九の演奏会をするのだから、すごいものだと思った。バレエ団は「くるみ」で、オーケストラは「第九」で稼ぐのだろう。

普通、合唱団や独唱者は第三楽章から入ってくることが多いが、今回は合唱団だけが並び、独唱者は第四楽章になっても現れなかったので、どうしたのだろうと思ったら、歌の始まる直前にバスの妻屋氏が上手側から走って出てきて突然歌いだした。こういう演出なのだろうが、ちょっと驚く。続いて下手側からほかの歌手も現れた。

ソプラノは中村恵理、アルトはカウンターテナーの藤木大地、テノールは小堀雄介というメンバー。4人が並んで歌うと、中村恵理と妻屋秀和がダントツに良い。小堀の声も美しく響いたが、藤木の声はほとんど聞こえずに終わった印象。新国立の合唱団も素晴らしい合唱で、第九を堪能した。

帰りがけにいつものスペインバルで食事。生ハム、トルティージャ、エスカベッシェ、チョリソーと野菜の煮込みスープ、ベジョータのソテーなど。

くるみ割り人形

2021-12-19 10:59:30 | バレエ
12月18日の夜に、新国立劇場でバレエ「くるみ割り人形」を見る。年末の恒例だが、今年は年始も上演するので、12回公演となっている。こんなに回数が多いなら空席があるかなと思ったら、ほぼ満席なので驚いた。クララを踊るのは米沢唯と小野絢子が3回づつ、木村優里、池田里沙子、柴山沙帆が2回づつとなっている。

熱心なファンだと、5人全部を見てみたいということだろうが、とても5回は行けないので、今回は若手のホープ木村優里の回をとった。くるみ割り人形役はやはり若手の渡邊峻郁。ドロッセルマイヤーやネズミの王様も、初役の若手が起用されていた。ネズミの王様役の渡邊拓朗は、くるみ割り人形役の渡邊の弟らしい。被り物をとると、結構イケメンだった。また、花のワルツでは、井澤諒が出ていて、これも井澤兄弟の一人なので顔が似ていた。

オーケストラは東京フィルなので安心して聴けるが、回数が多いので指揮はアレクセイ・バクランと冨田実里が交代で受け持っていて、僕の聴いたのは冨田実里のほう。バレエを専門に振っているので、安心して聴けた。

イーリング版なので、振付は結構凝っていて、静止ポーズはあまりなくて、常に動き回るような振付が多い。その良さが存分に発揮されるのは1幕終わりにコールドが踊る「雪の精」の場面で、複雑に変わるフォーメーションを見事に新国のコールドが踊っていた。この場面がイーリング版では一番好きだ。この場面で少年少女のコーラスが入るが、以前は客席の上手と下手の上階で歌っていたのに、コロナのためか舞台後方でから声が聞こえてくるので、なんとなく物足らなかった。

いつも思うのだが、1幕に比べると、2幕は面白くない。クララの夢の中でドロッセルマイヤーが、いろいろな踊り手を見せていくという設定なのだが、一体何のために踊るのか、誰のために踊るのかがあいまいで、面白みが出ない。それぞれの踊りは手の込んだものだが、アラビアの踊りも、中国の踊りも、凝ってはいるが面白みに欠ける気がした。

木村優里は、華があってキュートでかわいい感じで、見ているだけで楽しい。渡邊峻郁も立ち姿がスラリとしていて、ほれぼれとする。しかし二人ともテクニック的にはまだ、米沢や小野、福岡などのレベルには達していないような気がする。しかし、木村のフェッテや渡邊のジャンプはそれなりに良いなあと感じる。

夜の回だが、子供も多く、女の子などはクララになりきって喜んでいた。また、いつになく外人客も多かったような気がした。ロビーには巨大なクリスマス・ツリーが電飾に飾られて設置されていたので、恰好の写真スポットになっていた。

6時に始まり、30分の休憩をはさみ、カーテンコールが終わったのは8時30分頃。家に帰って軽い食事。菜の花とベーコンのソテー、生ハム、ソーセージなど。飲み物はボルドーの白と赤。

N響定期演奏会

2021-12-17 10:56:37 | 音楽
12月16日(木)の夜に、サントリーホールでN響の定期演奏会を聴く。コロナで外国人が来れなくなったため、指揮や歌手が日本人に代わり、曲目も全く変更になった。また、ロビーのカフェが、先日はアルコールも出していたが、なぜかソフトドリンクだけに戻っていた。14日の夜に読響の定期演奏会があり、P席の客同士で殴り合いがあったと伝えられるので、そのためにアルコールをやめたのかなあと、勝手に想像した。客席は満席ではないが8割ぐらいは埋まっていた。

曲目は最初にマーラーの「花の章」。短い曲で初めて聞いた。続いてリヒアルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」。ソプラノの佐々木典子が歌った。佐々木の歌はしっかりした声で響き、この曲の良さをよく伝えた感じ。リヒアルト・シュトラウスの曲は、変な和音がついているが、なぜか美しく響くので、結構好きだ。

休憩をはさみ、後半はベートーヴェンの交響曲3番「英雄」。山田和樹の指揮で、N響の響きも普段よりも個性的に感じた。この曲は結構長いので、途中でいつも退屈したりするのだが、山田はオーケストラから様々な音色を引き出した感じで、まったく退屈せずに気うことができた。

海外から来なくてもこれならば、十分に満足という演奏で満足した。

帰りにいつものスペインバルで軽い食事。生ハム、トルティージャ、ポテトサラダ、イワシのエスカベッシェ、牛ほほ肉のシェリー酒煮込み。飲み物は泡、白、赤。


紀尾井ホールのフォルテピアノ

2021-12-16 10:44:05 | 音楽
12月15日の夜に紀尾井ホールで、川口成彦のフォルテピアノのコンサートを聴く。7時から始まり、20分の休憩をはさみ、終演は午後9時だった。7割程度の入り。前半はブルグミューラーの狂詩曲とショパンの夜想曲、そしてショパンのピアノ・ソナタ1番。後半はシューベルトのピアノ曲。

使用した楽器はJGグレーバーという昔の楽器で、インスブルックで1820年に作られたものとの話だったので、200年前の製品。ピアノの歴史はよく知らないが、発明は300年ぐらい前で、初期の楽器ではハンマーやダンパーはあったが、エスケープメントがなかったらしい。今回の楽器は初期のエスケープメント機構を搭載したもので、ウィーンを中心に作られていた「ウィーンハンマー」という機構らしい。

6オクターブの鍵盤しかないので、現在のピアノよりも一回り小さい印象。川口氏の話によると、ポーランド時代のショパンはこうしたウィーンハンマーによる楽器を使っていたとのことで、イギリス系のエスケープメントを採用したピアノに出会うのはパリに出てからなので、ショパンの初期の作品は、ウィーンハンマーのピアノのほうが、作曲者の意図に合うらしい。

後半に弾いたシューベルトも、ショパンよりも少し時代は早いが、ウィーンで活動していたので、ウィーン式が良いのだろう。

楽器の音色は、今のピアノのようにきらきらと輝くような華やかさはないが、丸みのある柔らかい音で何となく落ち着く。弾き方によってかなり音色が変化する面白さもあった。こうしたピリオド楽器による昔の音の再現は、1980年以降活発になってきたが、生のコンサートで実際の音が聞けるのはありがたい。おかげでイメージがわいた。

家に帰って簡単な食事。キャベツのサラダ、シチリア産ボッタルガのスライス、イタリア産生ハム、ソーセージなど。飲み物は贅沢してシャンパンを開けた。

北とぴあの「アナクレオン」

2021-12-11 14:36:17 | オペラ
北とぴあでは毎年バロック・オペラを上演しているが、今回はラモーの1幕物の「アナクレオン」が上演された。ギリシャの詩人アナクレオンが、愛の女神とバッカスの女神に、どちらを取るかせまられて、両方が必要だとする喜劇オペラ。

短い作品なので、前半はリュリやラモーの曲によるバロックダンスが、約1時間ほどあった。フランスから専門のダンサーであるピエール=フランソワ・ドレが来日して、日本のバロック・ダンサー松本更紗と踊った。これが結構面白く、あまり見る機会がないバロック・ダンスを堪能した。

後半は「アナクレオン」で、タイトル・ロールのバリトンを歌った与那城敬が、見事にバロックの曲を歌った。愛の神を歌ったメゾ・ソプラノの湯川亜也子の声も芯があって、素晴らしい響き。オーケストラはピリオド楽器を使った25人程度の編成で、寺神戸亮の指揮と第一ヴァイオリンだった。響きも、歌唱も、踊りもバロック風で、これだけ水準の高いコンサートが日本でも聞けるのはありがたいことだと思った。その割には客席は空席も結構あり、もったいないなあと感じた次第。

王子には、魅力的な店がないので、まっすぐ家に帰って軽い食事。キャベツのサラダ、タプナード、ソーセージなど。ワインはフランスの白。