劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

牧阿佐美バレエ団の「リーズの結婚」

2021-06-27 10:03:48 | バレエ
6月26日(土)の昼に新国立中劇場で、牧阿佐美バレエ団の「リーズの結婚」を見る。3回公演の最初で、トリプル・キャストで組まれている。18世紀末に初演された最も古いバレエ作品の一つだが、牧阿佐美バレエ団の振り付けは、1960年のフレデリック・アシュトン版に基づくもの。大好きな作品なのだが、なぜか日本では牧阿佐美バレエ団しか上演しないようで、1990年に初演した後、繰り返し上演しており、今回は16回目に当たるようだ。

劇場はほぼ満席で9割以上埋まっていた。バレエ団はバレエ教室を持っているので、そこの生徒さんが多いようで、いかにもバレエをやっていますというムードの子供たちも多かった。会場入り口付近には牧阿佐美が立っていたが、バレエ教室の生徒たちが取り囲んで挨拶していた。以前に比べるとちょっとほっそりした感じ。

バレエの題名は日本語では「リーズの結婚」とされることが多いが、原題は「ラ・フィーユ・マル・ガルデ」で「よく見張られなかった娘」というような意味だろう。美しい農家の娘リーズには愛し合っている若い男コーラスがいたが、母親シモーヌは大地主のバカ息子アランと結婚させたがっており、ほかの男が娘に手を出さないように、厳重に見張っている。しかし、娘と恋人はその厳しい見張りをかいくぐって、逢引きし、最後は結婚する。

アシュトン流のユーモアあふれる振り付けで、全編楽しい作品だ。特に1幕は、鶏の踊り、木靴の踊り、長いリボンを使った踊りなどは、ほかのバレエには見られない楽しさが満載だ。鶏の歩き方などは見ただけで面白く、ついマネしたくなってしまうが、帰りがけに見ていると、小さな娘と一緒に来ていたお父さんも、鶏の歩きをまねして見せていた。

リーズを踊った阿部裕恵は可愛く踊り、その恋人役コーラスの清瀧千晴も安定感のある踊りだった。母親役は男性で2002年からこの役を演じている保坂アントン慶、金持ちのバカ息子は細野生がコミカルに踊っていた。東京オーケストラMIRAIで、指揮はバレエ専門の冨田実里。

楽しい公演を見てすっかり気分がよくなった。帰りにスーパーで買い物して家で食事。ホワイト・アスパラガスのオランデーズ・ソース掛け、サラダ、鯛の兜焼きのレモン・オリーブオイル・ソース、飲み物はブルゴーニュのシャルドネ。

ヴァイグレ指揮の読響演奏会

2021-06-16 14:55:18 | 音楽
6月15日(火)の夜に、サントリー・ホールでセバスティアン・ヴァイグレ指揮による読響のコンサートを聴く。19時開演で、15分間の休憩をはさみ、21時頃終演。50パーセント収容。

最初にヴェルディの歌劇「運命の力」序曲。大編成によるヴェルディ節の炸裂。なんとなく「椿姫」のムードに似ている部分もあることに気付く。

続いて編成を小さくして、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲。独奏はアラベラ・美歩・シュタインバッハー。初めて聞くがドイツ人の父と日本人の母を持ち、ドイツ育ちらしい。まるで、初夏の草原を駆け抜けるそよ風のような演奏。さわやかで力んだところが全くない。この曲は今まで、力強い演奏をよく聞かされたが、こんな演奏もあるのかと思った。濃厚なクリーム・パスタ化と思っていたら、ざるそばが出てきた感じ。たまにはこういう演奏もよいかも。

休憩の後は、ブラームスの交響曲1番。ヴァイグレの得意レパートリーなのか、50分近い曲を暗譜で指揮していた。前半の1~2楽章よりも、後半の3~4楽章が変化と盛り上がりがあって楽しめた。

終わってホールを出ると雨がぱらついていたので、急いで帰る。家で軽い食事。豚ブロック肉のヴィネガー煮込みとブルゴーニュの白ワイン。

2020年のトニー賞授賞式は21年9月26日

2021-06-13 11:19:18 | ミュージカル
毎年今頃は、トニー賞の季節だが、2020年に続き21年にも6月にトニー賞は発表されなかった。しかし、1年半遅れで今年の9月26日(日)の夜に授賞式が行われると発表された。日本時間だと、27日の午前8時だ。

ブロードウェイは昨年3月12日から閉鎖されたままだが、ワクチン接種が進み、7月4日の独立記念日までに全国民の7割の接種を終了すると、大統領が目標を掲げているので、ニューヨークも新規感染者数はだいぶ落ち着いてきて、9月から100パーセント収容で劇場を再開すると発表されている。そうはいっても、実際にはいろいろと準備があるため、9~10月にかけて順次続演中だった作品が幕を開け始めて、11月ぐらいからは新作も出るようだ。

そうしたら、久々にブロードウェイでの観劇もしたい気がするが、最近は東洋人ヘイトがあり、道を歩いているとトンカチで殴られたりするから、ちょっと心配だ。それでも1970年代に治安が悪かった時に、深夜の地下鉄で乗客が中央部の警官が同乗する車両に集中して乗っていた時代にも見に行ったので、また頑張ろうという気がしてくる。

再開の日程が決まった作品は、すでにチケットの販売も開始している。こうしたブロードウェイの再開を広く宣伝するために、トニー賞も9月下旬にセッティングされたようで、会場はいつものラジオシティ・ミュージックホール。対象となる作品は変則的だが、2019年5月から2020年1月ぐらいまでにオープンした作品。3月12日まで上演していたので、そこまでカヴァーすればよいような気がするが、上演期間が短かった作品は投票するメンバーが見ていなかったりするので、エントリー対象は絞られている。昨年の段階で候補作品は発表されていて、投票も今年の3月に既に終わったようだが、結果は9月末までお預けとなる。

アメリカでは例年CBSがテレビ中継しており、日本でも昔はNHKが最近はWOWOWが放送していたので、ぜひ今年も放送してほしいものだ。

アメリカに先駆けてロンドンでも6月からロックダウンが解除されて、劇場も再開されるとのニュースが流れ、昨年に開幕予定だったアンドリュー・ロイド・ウェバーの新作「シンデレラ」も開幕すると報道されていたが、ここにきて英国政府が感染者数の減少が期待通りではないとして、ロックダウン期間の1か月延長が検討されている。これに対して怒ったのがウェバーで、劇場を6つも持ち維持費だけで莫大なお金がかかっているので、これ以上は待ちきれないと開幕を強行する姿勢のようだ。

英国は、ワクチン接種により最も劇的に感染者数が減少したが、ここにきてワクチンの効果も限定的かもしれないとの疑問が出ているのかもしれない。世界中を見るとペルーやウルグアイなどの南米の国ではワクチン接種がかなり進んでいるにも関わらず、感染者数は全く減っていない国もある。どのワクチンを接種するかで効果に大きな違いがあるかもしれず、もともと日本を含む東アジア諸国ではHLAの違いで自然免疫がよく効いて感染者が低かったが、変異株の登場により、状況が変わるかもしれないので、注意しておく必要があるかもしれない。

日本でも早く100パーセント収容の公演再開となればよいと思うし、歌舞伎や文楽の3部制や4部制はやめて2部制に戻して、じっくりと作品を見たいという気がする。

モーツァルトの弦楽五重奏曲

2021-06-11 10:37:44 | 音楽
6月10日(木)の夜にプリモ音楽工房で、モーツァルトの弦楽五重奏曲第1番などを聞く。プリモ音楽工房は洗足にある小さなスタジオで、聴衆は20名ほど。あとはオンラインで中継される。今回はモーツァルトの弦楽五重奏の全曲演奏会の第1回で、第1番が演奏された。話によると、この企画は2度目だということで、すでに1ラウンド終えたらしい。

モーツアルトは弦楽5重奏曲は5~6曲しか書いていないと思うので、それを順番に弾いていくようだ。構成は通常の弦楽四重奏にヴィオラが1本追加された形で、ヴァイオリン2丁、ヴィオラ2丁、チェロ1丁という形。メンバーは通常は在京のオーケストラの団員として活躍する人が中心で、チェロはプリモ工房を運営している大島氏が自ら弾いていた。モーツアルトは、この作品を17歳ぐらいで書き、その後1部分を書き直したそうで、今回は初版を演奏した後、書き直した第四楽章も演奏してくれたので、違いがよくわかって面白かった。

モーツァルトの弦楽五重奏が終わって休憩15分の後、後半はブラームスの弦楽六重奏曲第1番が演奏された。チェロが1丁追加されて6人の室内楽だが、狭いスタジオなので、大音響が響き渡りすごい迫力を感じる演奏だった。大編成オーケストラの交響曲ならば大ホールで聴くのもよいが、室内楽などはやはり小さな会場で聞いたほうが、よほど面白いと感じる。チェロの追加で入った渡邉辰紀氏は東京フィルのチェロの首席奏者だといいうことで、素晴らしい音色を聞かせてくれた。

弦楽だけの演奏というのは響きが美しく絡みあって、管楽器の入った作品とはまた別の面白さがあると感じた。すぐ近くで聞くと、一つ一つの楽器の音色や演奏がよくわかりとても面白く、病みつきになりそうだ。

すっかり良い気分になって家に戻って軽い食事。作っておいたカポナータとソーセージなど。飲み物はヴァン・ムスー。

新国立劇場の「ライモンダ」

2021-06-07 10:39:47 | バレエ
6月6日(日)の昼に、新国立劇場でバレエ「ライモンダ」を見る。午後2時に始まり、1幕60分、休憩25分、2幕35分、休憩20分、3幕35分程度で、終演は午後5時ごろだった。年に6回しか新国立のバレエの公演はないが、そのうち2回が新コロナで中止になってしまったので、今回も心配したが、開催されてよかった。このところ50パーセント程度の収容が多かったが、今回の大劇場はほぼ満席で久々の賑わいを見せた。やはり観客で埋まっていたほうが、演じるほうも見るほうもずっと気分が乗るのでよろしい。おそらくは緊急事態宣言前に、ほとんど売り切れていたのだろう。

全5回の公演で、4人のプリマが躍るので、誰を見るかはいつも迷うところだが、この演目ならば小野綾子が良いと思い。彼女を見に行った。お姫様ならば小野に限るという感じ。新国立のライモンダは2014年に牧阿佐美が改訂振り付けしたもので、芸術監督となった吉田都が踊るのを見た記憶があるが、あまり定かではない。せっかく無料のリーフレットを配ってくれるのだから、過去の公演記録と主要ダンサーの名前を記載しておいてくれるとありがたいと思う。

さて、物語は中世のフランスの城で、伯爵の姪ライモンダの恋人で愛を誓い合った騎士ジャンが十字軍の遠征に行ってしまう。恋人が不在の間に、サラセン人アブデラクマンが彼女に言い寄り、ライモンダは断り切れなくなって困っているところに、恋人ジャンが遠征から戻ってサラセン人を打ち倒して、無事に二人は結ばれる。

1幕が一番長く、恋人が不在の間にライモンダが眠りについて、恋人と踊る夢を見る。要するに夢の中の踊りなのだが、アレクサンドル・グラズノフの音楽が単調で退屈する。久々に日本で振るアレクセイ・バクラン指揮の東京フィルの演奏はよいのだが、オーケストレーションがいかにもまずく、踊りも引き立たなかった。

2幕はサラセン人によるライモンダの誘惑と、戻ってきた恋人ジャンとの対決となるが、この景が一番変化に富んでいて面白い。サラセン人はアラブ風の踊りを見せたり、スペイン人の一団に踊るように命ずるので、恐らくはスペインを支配していたマグレブという設定だろうが、かたや十字軍で遠征してイスラム教徒と戦っているのに、フランスの城にイスラム教徒であるサラセンの騎士が登場するのは何となく不思議な感じがする。まあ、そこらは厳密に考える必要はないのだろう。サラセンの騎士役の中家正博は、背も高くがっちりとした体形で、恋人ジャン役の奥村康祐よりもずっと強そうに見えるが、あっさりと負けてしまう。配役のバランスがちょっとまずいか。

3幕は結婚式でのいろいろな踊り。おそらくは恋人ジャンがハンガリーの兵士たちと一緒に十字軍の遠征に行ったためか、ハンガリー王が結婚式の場面にも登場して、チャールダッシュを中心としてハンガリー風のダンスが繰り広げられる。ライモンダがソロを踊る場面ではハンガリー風のメロディがピアノで弾かれていたが、これはやはりハンガリーの民族楽器ツイムバロを使って欲しいという感じ。音色がちょっと違ってムードが盛り上がらない。

装置や衣装はイタリア人のルイザ・スピナテッリで、紗幕を兼ねた前方の膜に描かれた中世のタペストリー風の絵は、いかにもジョット以前の中世風の描き方でムードが盛り上がるし、衣装もよくできていた。ただし、広すぎる舞台を少し狭める形で設置された4~5の額縁風のセットが黒いため、部隊が全体的に暗い印象となっているのは損している気がする。

それでもライモンダを踊った小野が素晴らしく、客席では1階はほぼ総立ちともいえるスタンディング・オベイションで、観客も久々の本格的なバレエを堪能した印象。

スーパーで買い物して家に帰って食事。パルマ産の生ハムやサラミ、サラダ、豚リブのビール煮込みなど。飲み物はカヴァ。