劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

サントリー・ホールの読響コンサート

2020-07-22 13:51:51 | 音楽
7月21日(火)の19時から、サントリー・ホールの読響特別演奏会を聴いた。コロナ騒ぎで、定期のコンサートが全部流れてしまったので、特別コンサートとして開かれた。曲目は、前半が三浦文彰によるモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番「トルコ風」、休憩20分を挟んで後半は、ベートーヴェンの交響曲第7番。指揮は小林研一郎。終演は20時50分ごろだった。

コロナ対策のため、入場者はマスク着用で、場内ではできるだけ会話を慎むよう依頼があった。入り口ではサーモグラフィで体温の確認をやっていて、座席は一つ置きに座る千鳥格子、政府の指針50パーセントの入場者を守っていた。ほぼ座席は埋まっていたが、一部は売れ残りもあったようだ。チケットの購入者と、実際の入場者が異なるときは、ロビーでその旨来場者の連絡先氏名などを記入するようアナウンスがあった。クラスター発生時の連絡先の確保だという。

東京文化会館では、案内係がマスクの上にフェイスシールで、完全武装という感じだったが、サントリーホールでは、マスクだけでフェイスシールドはなく、あまり違和感を感じなかった。

オーケストラメンバーも、マスクは任意となっているようで、演奏中もマスクを着用している人は数えるほどしかいなかった。しかし、演奏が終わると皆マスクを着けていた。客席で聞いている観客もただ座ってマスクを着けているだけだが、長くつけていると、暑苦しくてうんざりするので、演奏中には外したいという気持ちはよくわかる。問題はないのではないだろうか。

弦楽器も管楽器もかなり間隔をあけて座っているので、弦楽器の人数は30人ちょっとぐらいで、普段よりも少ない。ベートーヴェンあたりまでならこれで問題ないだろうが、リヒヤルト・シュトラウスやマーラーなどになると、編成が苦しいかもしれないという気がした。

演奏者の間隔が横方向にも空いているので、通常は弦楽器の譜面台は二人で一つの楽譜を見る形式なのだが、一人ずつ譜面台を使う感じになり、舞台を見ていると、やけに譜面台が多いなという印象だった。

指揮者の小林研一郎は、珍しく舞台上から挨拶をして、5か月ぶりに演奏会を開けたうれしさを語った。4月に満80歳を迎えて、記念の演奏会も予定されていたのだが、それも開催できず、80歳の天井日を迎えて以降、初めての演奏会だと言っていた。

オケのメンバーもおそらく気持ちは同じだろうが、5か月間の空白を感じさせない見事な演奏で、久々のコンサートを堪能した。

前半の三浦氏のヴァイオリンは柔らかい音で、ヴァイオリンの高音でキンキンしたところのない、聞きほれるような響き。後半のベートーヴェンも繊細さと大胆さを見事に表現した演奏だった。

驚いたのは80歳のコバケンの元気さで、大きく体を動かすのにずっとマスクをしたままで、座って聞いているだけでも息苦しいのに、マスクをつけてあれだけ動くのはすごいと妙な点を感心した。

サントリー・ホールの後は、ホールのそばにあるお気に入りのビストロでいつも食事するのだが、コロナのためか確認したら営業時間が変わっていて、終演後だとラストオーダーに間に合わずに、食事を断念した。不便な時代になったものだ。

仕方なく、家に戻って軽い食事。モッツァレラ・チーズが冷蔵庫にあったのでカプレーゼを作り、作り置きのタプナードとフランスの田舎パンで食事。ワインはボルドーのクレモンで、おいしかった。



二期会のオペラ・ガラ

2020-07-12 10:23:25 | オペラ
7月11日(土)の15時から、東京文化会館大ホールで、二期会のオペラ・ガラ「希望よ、来たれ!」を観る。二期会のベテランの歌手陣7人が出演して、伴奏は沖澤のどか指揮による東京交響楽団。

生のオケの演奏を聴くのは3か月ぶりなので、それだけで何となくうれしい。おまけに、歌手陣は充実していて聴きごたえもあった。二部構成で、一部は「フィデリオ」の序曲の後、4人が歌った。ベートヴェン、プッチーニ、ロッシーニ。二部は「魔笛」の序曲があり、3人が歌う。モーツアルト、ベルク、プッチーニ。一部は35分で、25分間の休憩、二部は30分だから、18時30分に終わった。贅沢は言えないが、もう少し長くやってほしい。全体で1時間ぐらいならば、休憩なしでやってもらったほうが、時間的にも助かるが、こういう時代だから仕方がないのかと感じた。

客席は、例によって50パーセントまでなので、一つおきの千鳥格子配列。入り口ではサーモグラフによる検温。5階は入れておらず、4階までだが、観客は50パーセントの7割ぐらいの入りといったムード。久しぶりなので、オペラでよく見る顔がたくさんいた。オケのメンバーは、管楽器以外は全員マスクをしていた。白だと目立つので、灰色のマスクだった。

オケの配列は、普段よりも間隔をとってゆったりした感じで、弦5部は全体で30人ぐらいだから、通常の編成よりも小さいが、間隔をとっているので、舞台全体に広がっている。ベルクの「ルル」の歌でコンテの踊りがついたので、オケの前は4メートルほど空いていて、客席の前3列は販売していないので、歌手の立ち位置から、最前列の観客までは8メートル以上の距離があった感じ。

それでも、東京文化会館の音響の響きは良いので、オケも歌手もよく聞こえた。日本人歌手は一般的に声量がないので、こうしたモーツアルトみたいな小さな編成のオケで、うまくバランスがとれるような気がする。

オケの配列がゆったりして間隔が空いたためか、何となく演奏のタイミングが合わないような部分も感じられたが、練習不足もあるだろうし、新しい配置に慣れていないなどの問題があるのかもしれない。マスクを付けるならば、昔と同じような配置で問題ないような気もするが、不便な時代になったものだ。

先日、ミラノ・スカラ座からもメールが来て、オペラ・ガラ再開となっていたが、客席の売り方を見ると、平土間は2席ずつのカップルで千鳥格子となっていた。オペラやコンサートに一人で来るなど想定していないのだろう。日本のように一人ずつの千鳥格子だと、連れと一緒でも離れてしまい、何となく寂しく感じるが、日本では一人客が多いのだろうか。

ロンドンの劇場で、アガサ・クリスティの「ネズミ罠」は秋から再開するらしいが、これは出演者が少ないこともあり、役者の立ち位置も1メートル以上離すそうだ。そして、客席の販売は、2席ずつの千鳥格子となっていた。やはり、欧州の劇場はカップルで行くのが常識なのだろうと思った。

帰りはいつものスペインバルで軽い食事。この店もアクリル板こそないが、社会的距離ということか、客同士はできるだけ離れて座っている。トルティージャ、ピキージョの肉詰めなど。