劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

ウィントン・マルサリス・セプテット

2023-03-25 09:30:18 | 音楽
3月24日(金)の夜に新宿文化センターの大ホールで、ウィントン・マルサリス・セプテットを聴く。場内はほぼ満席で、人気が高い。ウィントン・マルサリスは現在のジャズ・トランペットの第一人者で、自分の楽団を率いてのコンサート。編成はピアノ、ウッド・ベース、ドラム、トランペット(本人)、トロンボーン、アルト・ダックス、テナー・サックスという7人。6時半に始まり、15分間の休憩を挟み、終演は8時20分頃だった。

ウッドベースとピアノは、基本的には通奏低音的な伴奏で、ドラムがリズムを刻み、金管はそれぞれソロ演奏や掛け合いをする。マルサリスの楽団だから、最初と最後はトランペットを聴かせるのが中心。アドリブもマルサリスは派手だが、ほかのプレイヤーはあまり出過ぎないようなムードで演奏していた。

前半はどちらかというと、一人ずつ個人芸を見せるような演奏で、後半は掛け合いが多かった。後半の3曲目は、トランペットとアルト・サックス、ピアノとベース、トロンボーンとテナー・サックスという掛け合いで、聴きごたえがあり、盛り上がった。

最後の締めくくりもトランペットのソロで、超絶技巧的な演奏。確かにすごい演奏だったが、技巧に走りすぎて、音楽的な表現は二の次といった印象。それでも久しぶりのジャズを堪能した。大ホールがほぼ満杯だったが、こうした曲は小さなバーで、酒でも飲みながら聞きたいという感じ。

雨が降っていたので、家にまっすぐ帰って軽い食事。サラダ、イワシのピリ辛オーブン焼き、クリーム・チーズなど。飲み物はカヴァ。

小澤征爾音楽塾の「ラ・ボーエーム」

2023-03-24 06:09:17 | オペラ
3月23日(木)の昼に東京文化会館で小澤征爾音楽塾の「ラ・ボーエーム」を見る。当日券も出ていたが、若い人向けの割引チケットも多く出たようで、8~9割が埋まっていた。この公演は小澤征爾のプロデュースによるものだろうが、ロームがスポンサーについているので、歌手もそろい、オーケストラの水準も確保し、演出もきちんとしていて、楽しめる仕上がりになっていた。

主要な出演者7人はすべて外国から呼んできているので、男性陣がとても良い。特に主役のロドルフォを歌うジャン=フランソワ・ボラスは、声質も声量も申し分なく、久々にちゃんとしたテノールを聴いたという感じ。画家のマルチェッロ役のデイヴィッド・ビジックも立派なバリトンで聞きほれた。対する女性陣は男性陣ほどではないが、それなりの歌手だった。主演のミミ役はエリザベス・カバイエロで、少し線が細くもっと力強い声が欲しい気もしたが、弱って死んでいく役なので、はかなさが出て良かった面もある。ムゼッタ役のアナ・クリスティは、おきゃんな娘的な役柄がうまく出ていた。

小澤征爾の教え子のディエゴ・マテウスが指揮する音楽塾のオーケストラは、若い人が中心で、音がいかにも若々しく、水準の高い演奏をした。また、演出や衣装もオーソドックスで違和感がないものだった。近年のオペラは、奇をてらった読み替え演出などが多くてうんざりするが、こうしたオーソドックスな演出が安心してみていられて、歌に集中できるのでありがたい。

カーテンコールでは、小澤征爾も挨拶に出てきて、場内の観客が総立ちになって歓声を送っていた。自分で指揮するだけの体力はないようだが、後進を指導してこれだけの作品を作ってくれたことには感謝したい。ロームがスポンサーなので、京都では2回の公演があるが、東京は平日の昼間1回だけなので、ちょっともったいない気がした。こうした世界的な水準の公演を見ると、二期会や藤原歌劇団ももう少しレベルを上げてほしいという気がする。

帰りにスーパーで買い物して家で食事。インゲン豆の胡麻和え、マーボーナス豆腐を作る。

N響メンバーによる室内楽

2023-03-23 10:59:31 | 音楽
3月22日(水)の夜に、東京文化会館で「N響メンバーによる室内楽」を聴く。午後7時開演で、20分の休憩を挟み、終演は9時10分頃。行きがけに上野公園で桜を少し眺めた。桜通りは宴会禁止になっていて、右側通行で通行人を分けていたので、人が多い割に歩きやすいが、6時半を過ぎていたので、照明が暗くて桜がよく見えなかった。文化会館の裏のエリアが宴会可能となっていて、会社帰りのサラリーマンや、家族連れ、カップルなどで結構にぎわっていたが、ここも照明が暗いので、ランタンを持ち込んで宴会をやっているグループは用意が良いと感心した。

さて、室内楽の演目は、最初にモーツアルトの弦楽五重奏曲第3番。弦楽四重奏の編成にヴィオラが1本追加された形。モーツアルトらしく、それぞれのパートがくっきりと浮き上がるだけでなく、美しく調和する。続いてルイージ・ボッケリーニの弦楽五重奏曲G.275。編成は弦楽四重奏にチェロを1本追加した形。ボッケリーニはモーツアルトと同時代の人物らしいが、これまで聞いたことがなかった。調べてみると、チェロの名手だったらしく、この作品でもチェロ2本が活躍した。しかし、チェロの迫力が出過ぎるので、全体としての音のバランスは、なかなか難しいと感じた。

休憩の後は、ブラームスの弦楽六重奏曲。弦楽四重奏にヴィオラとチェロが追加された編成。モーツアルトから時代が下っているので、かなり複雑な音楽で、6人が全部別々の演奏で、ロンドなどを奏でるのが面白い。最後の締めくくりに相応しい盛り上がりを見せて終わった。

弦楽四重奏のグループは多いので、たまに聴く機会があるが、五重奏や六重奏というのは、普段あまり聞く機会がないので、こうした公演はありがたい。N響のメンバーの抜粋だが、第一ヴァイオリンはコンマスの白井圭なので、結構豪華なメンバー。美しい音色を堪能した。

帰りはいつものスペインバルで軽い食事。トルティージャ、ハモン、ほうれん草とひよこ豆の煮込み、仔羊のローストなど。

ハイドンのオペラ「漁獲りの娘たち」

2023-03-20 14:26:44 | オペラ
3月19日(日)の昼に昭和音大内のスタジオ・リリエでハイドンのオペラ「漁獲りの娘たち」を見る。スタジオ・リリエは、校舎内の最上階にあり、階段式の座席で250席程度の小ホール。舞台袖はほとんどないようだが、簡単な公演には使える。小さなホールということもあり、ほぼ満席。伴奏はグランドピアノ1台と、小さなチェンバロ1台。主催は日本オペラ振興会(藤原歌劇団)のオペラ歌手育成部。オペラ歌手希望者を2年間研修しての成果発表会の位置づけ、42期の研究生の発表となっていた。

日本初演となっていて、ハイドンのオペラは見たことがなかったので、どんな感じの作品だろうと思って新百合ヶ丘まで見に行った。調べてみるとハイドンは生涯に20ぐらいのオペラを書いているようで、この作品も典型的なナンバー・オペラとなっていて、バスの早口歌や、ソプラノのアジリタ唱法など聞かせどころも多い喜劇作品。パンフレットにも記載がなく、気づかなかったが、コンペティトァの文章の中にゴルドーニと書いてあったので、調べてみると台本がカルロ・ゴルドーニだった。

ゴルドーニは日本ではあまり知られていないが、19世紀のイタリア喜劇の巨匠で200以上の喜劇を書いている。日本では、ミラノピッコロ座が来日した時に「二人の主人を一度に持つと」を上演して知られるようになった。チラシにもゴルドーニの台本と書いておいてくれれば、少しは見に行く人も増えるのではないかという気がした。

研修生が歌うのだから、歌がうまいとか下手とかいうレベルではなく、頑張ってね、という感じ。だが、作品の内容は、肩の凝らない気軽なもので、大いに楽しめる。物語はシンデレラと「コジ・ファン・トッッテ」を合わせたようなもので、複雑な話だが、話が混乱しないようによく整理はされていた。ただし、前半と後半で主人公を演じる歌手が代わったので、おや?と思って、少し戸惑った。

恋人たちが浮気しないかどうか、男性が変装して女性を試すというのは「コジ」そのものだが、製作年代を調べるとこちらの方が20年ほど先行しているので、「コジ」を書いたダ・ポンテがゴルドーニを真似たのだろう。

作品は楽しんだが、スタジオの換気が悪いのか、エアコンの不調なのか知らぬが、ものすごく暑くて閉口した。体感温度は28度以上で、見ているうちに熱中症で倒れそうになった。

帰りにスーパーで買い物して家で食事。ほうれん草のお浸し、豚ロースを使ったすき焼き風の煮物など、余った食材で適当に作った。飲み物は純米大吟醸。

新国立劇場のオペラ「ホフマン物語」

2023-03-16 15:12:30 | オペラ
3月15日の夜に新国立劇場で、オペラ「ホフマン物語」を見る。長い作品で、2回の休憩30分があり、午後6時30分に始まり、カーテンコールが終わったのは10時30分頃だった。3月13日からマスクなしでもよくなったので、観客のマスク比率をざっと眺めたが、まだ9割ぐらいがマスクをしていた。マスクなしはまだ少数派だが、カーテンコールでは、「ブラボー」などの掛け声も結構あったので、しばらくすればマスクなしが増えるのではないかという印象。

観客の入りは薄く、7割程度の入り。作品としては結構面白いと思うのだが、フランス物のためか、キャストの関係かわからないが、満席にならないのは寂しい。

主役のホフマンと敵役リンドルフは外国勢だが、女性陣は日本人で固めており、主役のソプラノ3人の競演、メゾのミューズ役が活躍した。女性陣ではオランピア役の安井陽子が素晴らしい歌唱で観客を魅了した。このところ優れた歌唱を聞かせていたミューズ役の小林由佳だが、今回はフランス語ということもあり、苦戦の様子。外国の男性陣では、バス・バリトンのエギルス・シリンスの歌唱が抜群の輝きだった。

オーケストラはマルコ・レトーニャ指揮の東京交響楽団で、美しくは聞かせたが盛り上がりを欠いた印象。演出はとびぬけて突飛なものではないが、結構現代的にアレンジしてあり、全体としては昔の表現主義的美術を彷彿とさせた。第一話のオランピアの場はポップな美術で、第二話のアントニアはダリの絵のようなムード、第三話のジュリエッタは、懸命にイタリア風というかヴェネチア風をやろうとしていたが、ちょっとごちゃごちゃしただけの印象を受けた。

長いということもあり、退屈しないように10人のダンサーを入れるなどして演出にも工夫を凝らしてはいたが、何となく盛り上がりに欠けた印象で、今一つの出来だった。

遅くなったので、レストランは諦めて、自宅へ戻って軽い食事。キャベツのサラダ、ソーセージ、チーズなど。ボルドーの白。