劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

諏訪内晶子とベルリン放送交響楽団

2019-03-26 11:15:23 | 音楽
3月25日(月)の夜に新宿文化センターで、諏訪内晶子とベルリン放送交響楽団の協演を聴く。午後7時開演で、20分の休憩を挟み、終演は9時25分ぐらいだった。客席は9割を超える入りだったが、空席も残っていた。観客は結構会社帰りのサラリーマンも多かった。

最初は諏訪内晶子がストラディバリウスで弾くブラームスのバイオリン協奏曲、休憩が入り後半はマーラーの巨人で5楽章版。

ベルリン放送交響楽団はウラジミール・ユロフスキーの指揮。今回のジャパン・ツアーでは七回の公演だが、諏訪内晶子との競演が多く入っているわけではなさそうで、オケの練度はあまり高くなくそれなりに伴奏を務めた感じ。一方の諏訪内晶子の演奏は、円熟味が増して美しい音色を醸し出していた。

後半のマーラーの巨人は、1時間ぐらいかかる大曲だが、前半とは打って変わったような活き活きとした演奏で、この曲こそこのオケの真価を見せた感じがする。演奏時間も長いが編成も大きく、コントラバスは8本、4管編成でホルンは7本、ティンパニーも二組という100人近い編成だった。マーラーの曲は、楽器の音色を楽しませる部分があり、CDで聴くよりもやはり生オケが良いなと感じさせた。長い曲だが、まったく退屈せずに最後まで聴かせた力量は大きい。

遅くなったので、家に帰って食事。前日のテレビ番組「男子ごはん」でやっていたさば缶とポテトのサラダを作ってみたが、それほどおいしいわけではなかった。日経新聞の「私の履歴書」で味の素の会長が冷凍餃子の開発に苦労したエピソードがあったので、試にこれも買って焼いてみた。冷凍食品としてはなかなか良くできている。油も引かず、水も入れずにフライパンで焼くだけというのも簡単でよくできていると思った。飲み物はラガービールとエールビール。


ミュージカル・コンサート「I Do! I Do! 結婚物語」より

2019-03-24 12:38:46 | ミュージカル
3月23日(土)の昼に、銀座のヤマハホールでコンサート形式のミュージカル「結婚物語」を観る。14時開演で、15分間の休憩を挟み、終演は15時45分頃だった。あまり大きくはないホールで場内は満席だった。出演は村井國夫と春風ひとみの二人。伴奏のエレクトーンが清水のりこ。

「結婚物語」は1960年代のブロードウェイ作品で、「ファンタスティックス」で当てたトム・ジョーンズとハーヴェイ・シュミットが、ブロードウェイで上演した作品だ。出演者はたったの二人で、結婚した二人の若者が、人生のいろいろな経験を積みながら、老齢になって小さな住居へ移るまでの話。どこの夫婦にでもありそうなエピソードをちりばめて、思わずほろりとさせる場面もあり、日本でも人気の高い作品だと思う。

出演者二人ですむというのも上演しやすいかもしれないが、ブロードウェイでは30人近いオーケストラの伴奏が付いたので、出演者は二人だが、伴奏をどうするのだろうというのが気になる。少なく済ますならば、ピアノ1台。もう少し豪華にするならばピアノを2台、またはピアノにウッドベース、パーカッションというのも考えられる。

今回の公演では、ヤマハのエレクトーンが使われていて、一人でオーケストラみたいな音を出していた。スケールの大きな多彩な音色が出るが、アコースティックの楽器の方が良いという人もいるかも知れない。主催がヤマハミュージックエンタテインメントとなっていたから、エレクトーンの宣伝も兼ねていたのだろうか。

ミュージカルの曲をはじめから順番に歌っていくので、物語の進行がわかった方が良いが、今回のコンサートでは曲の合間に二人の出演者が、簡単に物語を説明してくれたので、舞台公演とまではいかないが、物語を楽しむことができてよかった。まあ、1960年代末以降は、ミュージカルもリズムと大音響の作品が増えてくるので、こうした昔風の作品に接するとなんとなくほっとする。

帰りがけに、ヤマハの電子ピアノやエレクトーンなどをショールームで見て、結構進歩しているなあと感心する。家でビーフストロガノフを作って食べる。



新国立劇場の「ウェルテル」

2019-03-20 13:14:23 | オペラ
3月19日(火)の夜に、新国立劇場でマスネの「ウェルテル」を観る。18時30分開演で、25分間×2回の休憩を挟み、終演は21時40分頃だった。初日の夜だったためか、働き帰りにの人もちらほら。客席は9割程度の入り。

3年前の再演で、今回はシャルロッテ役に藤村実穂子が出演するのが一番気になった点だ。

作品は、ゲーテの「若きヴェルテルの悩み」のオペラ化で、好きだった娘シャルロッテと結婚できなかった男が自殺してしまうというだけの話だが、見ていると、その娘は早く諦めて他の娘と恋愛した方が良いのだと思えてくる。シャルロッテでなければいけないという必然性がオペラではわかりにくい。ウェルテルの中ではシャルロッテの方も自分に好意を寄せていると感じているので粘るのだろうが、そこら辺が良く描けていない。

まあ、ゲートのドイツ語の作品をフランス語で演じるのだが、フランス語の歌詞が詩的過ぎて本人の気持ちだとか物語の展開がわかりにくいように感じる。イタリア作品のようにレチタティーヴォで話を進めて、アリアで気持ちを独白するというスタイルではなく、会話もアリアみたいに歌うので、物語の展開がわかりにくいのだ。4幕構成だが、各幕の幕切れは、まるで芝居を観ているような感じの終わり方で、オペラのムードではない。

例えば2幕などはウェルテルとシャルロット、シャルロットの許婚アルベルト、ウェルテルに密かに心を寄せるソフィーがそれぞれの気持ちを独白する4重唱なので締めくくれば、いかにもオペラらしいと思うのだが、まるでラシーヌの芝居みたいな幕切れだ。

舞台美術は美しくできていて、特に一幕のセットなどは美しいと思うのだが、子供たちが食卓の上で土足のまま立って並び歌を歌うのはお行儀が良くない。おまけにその後にその食卓でおやつを食べたりするのも気になる。

肝心の歌の方は、シャルロッテ役の藤村実穂子が抜群の存在感を示した。声量、声の美しさ、歌のうまさ、フランス語の発音とどれひとつとっても抜群で、世界で評価されるということはこういうことなのだと、改めて感心した。

ウェルテル役のサイミール・ピルグの立派な経歴だが、藤村に比べると若干ムラがあった。1幕と2幕は高い声が少し不安定だったが、3幕では立派な歌唱を見せた。最初からあの調子で歌ってくれたらと感じた。

アルベール役のバリトン黒田博は、声量は申し分ないのだが、フランス語のディクションが悪く損をしている。もう少し丁寧に歌えば、もっと高い評価を得られると思う。

ソフィー役の幸田浩子は、まあ、そつなく歌ったが、藤村の前ではかすんでしまった。

やはり、見ていると、どうしてあの程度の失恋で自殺してしまうのかというのが気になる。二幕には牧師夫妻の金婚式の祝いみたいなエピソードが絡んでいるので、プロテスタントの地方で、神と自分とが直接向き合っているという感覚なのだろうか。ドイツの特に北の方はプロテスタントが多いが、フランスではカトリックが中心で、神と人との間に教会が入っているので、結婚までは純潔を守っても、結婚したら遊びまくっても良い、みたいな感覚もあるのではないかという気がする。

このようなキリスト教的な意識が深く物語に絡んでくると、どうもよくわからない点が多い気がした。

遅くなってレストランがあまり開いていなかったので、家に帰って食事。オリーブのマリネ、野菜ス―プ、サーモンのソテーに白ワイン。

東京バレエ団の「海賊」

2019-03-18 11:07:10 | バレエ
3月17日(日)の昼に、東京文化会館で東京バレエ団の「海賊」を観る。14時開演で、20分の休憩を2回挟み、終演は16時30分頃。場内は満席で、入り口には大きな「大入」の看板が出ていた。バレエの公演でも「大入袋」が出るのかなあと気になった。観客層は女性が圧倒的で、かなり若い年齢層が多い。やはりバレエをやっている人が多そうな印象。

「海賊」は、ガラやコンテストでいつも男性のダンサーが踊る演目で、よく知られているが、全幕の通しの公演は少ないので、ビデオでは見ているものの、生の舞台で見るのは今回が初めてだった。なかなか全幕通しで上演されないのは、ギリシャの娘メドーラが、奴隷商人に誘拐されて、それを海賊がまた誘拐して、また奴隷商人が誘拐して、また助け出すみたいな話であり、詰まらない話だからなのだろうか。

今回の公演では、物語を整理してわかりやすくした版だとチラシには合ったが、最初のプロローグの海賊船が難破してギリシャの娘たちに助けられてメードラと海賊のコンラッドが恋に落ちるところが省略されていて、奴隷市場で一目惚れする話になっていた。どうせつまらない話だから、短くした方が良いかも知れないが、なんとなく寂しい感じがして賛否両論だと思った。

踊りの方は、主演のメドーラを上野水香、その友人の娘ギュルナーラを川島麻実子という、東京バレエ団の看板バレリーナが踊る。海賊のコンラッドは柄本弾で、その召使(奴隷?)のありを宮川新大が踊った。

一幕の奴隷市場では、奴隷たちの踊り、二幕の海賊の洞窟ではコンラッドとアリとメドーラの有名なパ・ド・トロワ。そして3幕はパシャの宮殿で、パシャの夢の中で出てくる花飾りを持ったコールド・バレエの群舞と、見どころ満載で、面白い演目だった。

特に、主演の上野水香の踊りは、切れがあって安定しており、立ち姿のポアントも美しく、見惚れてしまう。満員になるのも道理だと思った。男性陣では、アリの踊りはジャンプが見ものだが、宮川新大のジャンプは高く、歓声が上がっていた。ジャンプでは奴隷商人役の樋口祐輝のジャンプも高いだけでなくふんわりと滞空時間が長く美しいジャンプだった。

衣装、装置も違和感なくきちんと作られていたが、オーケストラが東京ニューシティ管弦楽団で、管の響きが少し貧弱に感じた。

夕方だったので、家の帰って食事。黒オリーブのマリネ、フォアグラのソテー、栗のリゾットなど。ワインはボルドーの白。

エトワールへの道程2019

2019-03-17 11:07:55 | バレエ
3月16日(土)の夜に、新国立中劇場で「エトワールへの道程2019」を観る。これは新国立劇場のバレエ研修所の14期生の修了公演となる。14期生6名のほかに、15期生6名と予科生6名(3名×2期)が参加するので、18名が踊る。このうち男性は2名しかいないので、ゲストで4名の男性ゲスト・ダンサーが参加していた。公演は午後6時の始まり、途中25分間の休憩を挟み、終演は8時40分頃だった。観客層はとても若く、一見してバレエを習っていそうなお嬢様が沢山いた。随分小さな娘さん方も多かったが、それは日本ジュニア・バレエのメンバーが20人ほど参加していたからだろう。ジュニア・バレエのメンバーたちは、コールドバレエのような群舞を見せるほか、研修生が踊る間もポーズを取り、舞台を豪華にみせた。

前半は90分ほどのプログラムで、牧阿佐美の振付による「ダンス・ダンス・ショパン」から始まる。クラシック・バレエの技法を使った群舞で、物語はない。ショパンのピアノ曲に合わせて踊られる。バランシン風か。

続いて名作バレエからのパ・ド・ドゥが踊られた。「ジゼル」からの「ペザントのパ・ド・ドゥ」で、まあ村娘の踊り。続いて「バヤデール」から、「影の王国」の中の幻想のパ・ド・ドゥ。つい先日に新国立劇場の本公演で見た演目だが、この踊りは入っていなかったような気がする。

そして「白鳥の湖」から、「黒鳥のパ・ド・ドゥ」。これは定番の踊り。

その後に、ビデオで研修所での研修風景などの紹介があり、前半の最後が島地保武による新作「彩雲」。ヘンデルの音楽を使ったコンテンポラリー作品。具体的な題名が付いているが、内容は物語があるのかどうかよくわからない。コンテは登場人物のキャラクター、背景、プロットがないので、ただ動きを見るだけとなってしまい退屈する。

休憩の後は、コッペリアの第三幕の抜粋。いろいろなディヴェルティスマンが踊られて、日本ジュニア・バレエがコールド役を果たした。

バレエ研修所は全日制で2年間の訓練を受けるので、高校を卒業して研修所に入るとちょうど20歳ぐらいの若い人。研修所を出ても必ずしも新国立バレエ団に入れるわけではないだろう。だが、プログラムに記載されたカリキュラムなどを見るとなかなか充実した2年間の訓練を受けられるのではないだろうか。

修了生のレベルは、それほど高いわけではないが、数年に一度はこうした中から、未来のエトワールが誕生するのだろう。ということで、それほどレベルの高い踊りではないが、皆きちんと踊っていて、見ているとそれなりに面白い。

何よりも、ショパンの踊りは生のピアノ伴奏で、そのほかはオケ・ボックスに東京フィルハーモニーが入り、アレクセイ・バクランが指揮するのだから、ぜいたくな公演といえる。生のオケでの公演というだけで、僕などは心が躍ってしまった。

帰りはいつものスペインバルで軽い食事。生ハム、トルティージャ、アヒージョなど。