劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

東京音楽コンクール 声楽部門本選

2021-08-30 11:04:06 | 音楽
8月29日(日)の夕方に、東京音楽コンクールの本選を聞く。16時開演、20分の休憩を入れて18時5分頃終了。手荷物検査付き。入りは弦楽部門本選より薄く1階席は5割いかない程度に思えた。若い声楽家の卵と中年男性が多い。

声楽部門の本選は5人の出場者で、オペラのアリアから選んだ曲を15~20分程度歌う。伴奏は大井剛史指揮の東京交響楽団。今回はソプラノが3人と、メゾ・ソプラノの1人、バスが1人という割合。声楽部門の総応募者は100人で、そのうち62人がソプラノだから、本選に残ったのが多いのも納得できる。男性はテノール16人、バリトン4人、バス3人、カウンターテナー1人だが、残ったのはバスの1人だけだった。日本では有望なテノールがなかなか現れないので、ちょっと寂しい。

声楽は器楽とは異なり、全体的に応募者の年齢は高め。器楽曲は子供の時から練習するが、声楽は体が出来てから本格的な訓練となるので、コンクールに出てくる頃には30歳前後で、10歳代という人はいない。そもそも、応募資格が20~35歳だ。それに、イタリア語、フランス語、ドイツ語、ロシア語などの歌を歌うのだから、なかなか勉強も大変だという気がする。

今回は、5人ともレベルが同じぐらいで、だれが優勝してもおかしくないと感じた。それは、みんなうまかったというよりも、突出してうまい人がおらず、それぞれが良い点も悪い点も感じられたので、誰を優勝者とするかは趣味のような気がした。

結果は一番年長の梶田真未(ソプラノ)が優勝で、メゾ・ソプラノの花房英里子が2位、バスの奥秋大樹が3位だった。聴衆賞はメゾの花房。僕の受けた印象としては、梶田は声もよく出ていて、これといった欠点が感じられない出来栄え。2位の花房はよいのだが、メゾで求められる低音域が少し弱いと感じた。バスの奥秋は声はとても良かったが、時々音程に不安が感じられた。これから練習すれば、大成しそうな予感もする。揚げ

やっぱり、オペラが好きなので、こうした声楽を聞くとすっかり気分がよくなった。帰りはスーパーで買い物して、家で食事。サラダ、豚ロースのチーズと大葉のはさみ揚げ、飲み物はボルドーの白。

バレエ・アステラス2021

2021-08-29 11:03:27 | バレエ
8月28日(土)の昼に、新国立劇場でバレエ・アステラス2021を見る。「海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えて」という副題の通り、海外のバレエ団にいる日本人ダンサーを夏休みに帰郷させて踊ってもらうという趣。昨年はコロナのために実施されず、今年はどうなるのかなと思っていたら、実施するというので見に行った。28日と29日の2回公演で、人は同じだが演目は少し変わる。1階席は8割程度の入りで、2階、3階にも人が入っていた。

開演前に事務局の人が出てきて、バレエ研修所のメンバーに発熱者が出たが、ほかの人は大丈夫との話があった。バレエ研修所のメンバーは自宅待機せざるを得ないとのことで、それは良いのだが、研修所のメンバーが踊る予定になっていた3演目がなくなるのか、ほかの人に代わるのかなどの話がなかったので、ちょっと不親切。結局は3演目が抜けただけだった。

別に研修所の踊りが目的でないから、ゲストダンサーが踊ればよいのだが、6組の踊りが続けて踊られることになる。そうすると、6組のうち5組がプティパのパ・ド・ドゥで、一組がフォーキンの「バラの精」という形。プティパがいかに偉大な振付家だとしても、前半の「コッペリア」(プティパ版)、「海賊」、「ドンキ」を続けて見せられると、音楽も踊りも似たような感じで、ちょっと芸がない感じ。

後半も「ばらの精」は別として、「タリスマン」と「ライモンダ」とプティパが続く。これでは「プティパ」というよりも「ヌ・グラン・パ」という感じ。

今回のメンバーは、海外から呼ぶのは難しかったようで、プログラムに「3年以内に帰国した日本在住者も含む」みたいな書き方で、過去に海外にいた人が中心。おまけに、一流バレエ団の人もプリンシパルクラスもおらず、ソリストクラスだったので、舞台は全く盛り上がらなかった。

まあ、補助金をもらって実施したというだけで、こんなのならやらなくてもよいのではないかという気がする。井田勝大指揮の東京シティ・フィルハーモニック。それなりによく演奏していたが、「ライモンダ」の伴奏がカーヌーンで演奏すべきところがピアノになっているが、どうもピアノではアラブのムードが出ないなあと思った。まあ、日本にはカーヌーン奏者があまりいないだろうから仕方がない。

新国立劇場のホームページによると、バレエ研修所の発熱者はコロナ陰性だったので、29日は予定通りのプログラムで上演となっていた。

暑い中出かけて行って損した気分だったが、気を取り直してスーパーで買い物して帰り、家で食事。しし唐の焼き物、冷ややっこ、豚肉の冷しゃぶ、飲み物はカヴァ。

東京音楽コンクール「弦楽部門」本選

2021-08-28 10:41:41 | 音楽
8月27日(金)の夕方から、東京文化会館で東京音楽コンクール「弦楽部門」本選を聞く。50パーセント収容、手荷物検査付き。観客を入れたのは1階のみで、2階正面は審査員席。午後4時に始まり、20分間の休憩をはさみ、終演は6時35分ごろ。続いて7時15分ごろから結果発表と表彰式だとアナウンスがあったが、見ないで帰った。

今回の東京音コンは弦楽部門と、木管部門、声楽部門。弦楽部門ではヴァイオリンが過半で61名、ヴィオラは21名、チェロが11名、コントラバスが14名の応募者。本選に残ったのは4人で、ヴァイオリン2人、チェロ1人、コントラバス1人だった。予選はピアノ伴奏の曲だが、本選は欠けるオーケストラとの協奏曲を演奏するので、結構楽しみにしている。

オーケストラは角田鋼亮指揮の東京フィル。角田の指揮はあまり個性を出さずに伴奏に徹していたムード。最初はチェロの西田翔で、ドヴォルザークの協奏曲。今回の出場者では一番若く16歳の高校生。音はきれいだが、オーケストラと共演すると音が小さく、力強さに欠ける印象。続いてヴァイオリンの福田麻子のチャイコフスキーの協奏曲。やっぱりチャイコフスキーの曲は良いなあと思いながら聞くが、演奏のノリというか音楽性がちょっと物足りない印象。この福田は昨年のこのコンクールでも3位に入賞しているので、それ以上の成績を挙げようと出てきたのだろうが、実力は上がっているのだろうかという気がした。

休憩の後はコントラバスの下川朗によるクーセヴィッキーの協奏曲。下川は今回の出場者では一番年長の25歳。初めて聞く曲だが美しい曲で安心した。オーケストラの編成もかなり小さくして、コントラバスの音を聞かせる。それでもコントラバスの特徴の低音部で聞かせるというよりも、かなり無理して出す高音の曲だ。見ていたら、ハイポジションで指版を超えて押さえて演奏していた。それでも音がきれいに出ていたので、すごいと感心した。15分ぐらいで終わる短い曲。

最後は東京芸大在学中の橘和美優のヴァイオリン。サンサーンスの協奏曲3番。これもなかなか聞かないが美しい曲。ヴァイオリンは低音部も力強く、高音の弱音も美しく響かせて、音に乱れがなく音楽的にも一番良かった。

終わって、帰りがけに聴衆賞の投票をする。A5版サイズの紙を投票箱に入れる式だが、投票箱のサイズがA5よりも小さく、小さく折りたたんで入れたが、10人ぐらい投票したら、もう溢れて入らなくなってしまい、後の人は係員に紙を渡していた。どうしてこんな小さな箱しか用意しないのだろうか。大きなバケツかごみ箱でも用意して入れやすくすればよいものを、昨年も同じようなことで疑問に思ったが、改善しないのだろうか。

予想通りに橘和が聴衆賞だったが、審査員が決めた順位は、優勝は昨年も出た福田だった。一般聴衆の価値観と審査員の価値観は違うようだ。

帰りにスーパーで買い物して家で軽い食事。ガスパチョ、トルティージャ・エスパーニャ、マスカルポーネとドライフルーツのバルサミコ酢掛けなどをつまみにして、カヴァを飲む。

読響のショスタコーヴィッチ

2021-08-24 11:19:47 | 音楽
8月23日(月)の夜にサントリー・ホールで、読響のショスタコーヴィッチを聞く。ほぼ50%程度の収容。演目はカバレフスキーの歌劇「コラ・ブルニョン」序曲で始まり、ショスタコーヴィッチのチェロ協奏曲2番。休憩15分を挟み、後半はショスタコーヴィッチの交響曲5番。ロシアプログラムというよりも、ソ連プログラム。

カバレフスキーの序曲は1938年初演、チェロ協奏曲は1966年初演、交響曲5番は1937年初演なので、いずれもソ連時代だ。ソ連時代には、芸術は社会主義リアリズムが基本とされて、労働者賛美みたいなものをわかりやすく表現しないと批判されたようで、どの曲も威勢がいい。恐怖政治をしいたスターリンは50年代半ばに亡くなり、50年代末にはスターリン批判も行われたが、社会主義リアリズムはソ連がなくなるまで生き残ったような気がする。

しかし、そうはいっても恐怖のもとだったスターリンが亡くなると、だんだんと表現の幅は広がりだすようで、今回のプログラムでは、66年初演のチェロ協奏曲がそうした時期の作品だ。66年といえば西側ではビートルズも出てロック全盛になってきた時代だが、ソ連ではムードがかなり違っていたようだ。

労働者賛美を強調するといっても、演劇や映画、絵画などは具象的で表現しやすいが、音楽となると抽象的なので何がリアリズムなのかさっぱりとわからないが、何しろ途中で妙に威勢のいい派手な音楽がやたらと大音響で鳴り渡る。なんとなくこうした音楽を聴いていると、映画「スターウォーズ」のダースベイダーの軍団の出てくるときに流れる音楽を連想してしまうのは僕だけではないだろう。今回は、聞いているうちに、モスクワで見たモスクワ大学などのスターリン様式の大建築も連想した。音楽を聴いてそうしたものを連想できるくらいだから、社会主義リアリズムと認められたのかなという気がする。

いずれにしろ、歴史を紐解くとショスタコーヴィッチなどの当時の音楽家は、形式的であり、社会主義リアリズムに沿っていないと批判された時期があり、苦労の末にこうした音楽を書いたのではないかと思った。

今回の指揮はドイツからやってきたセバスティアン・ヴァイグレで、チェロの独奏はドイツで活躍する若手イサン・エンダースだった。チェロ協奏曲はなかなか面白かったが、一番感心したのはエンダースのチェロの音色だ。チェロは美しい音色を奏でる楽器だが、それは中音域のことで、ハイポジションによる高域や最低音部は響きがよくないことが多いと感じていたが、エンダースは低音域から高音域まで見事に澄んだ音色で演奏していた。特にこんなに美しいチェロの高音は初めて聞いたような気がする。

エンダースはタブレット端末の楽譜を見ながら演奏していたが、ページをめくる足踏み式のスイッチの調子が悪かったようで、途中でページをめくれなくなり、演奏を一度中断して、少し戻って再開した。こんなこともあるのだとびっくりした。確かに重たい楽譜を持ち歩くのは大変なので、全部タブレットに入れてしまえば、どこに行くときも簡単に持ち運べるので便利だが、こうした故障が起きるとなかなか大変だ。思わず、メガバンクで続くシステムのトラブルのことも思い出した。

後半の交響曲5番は、モデラートから始まり、第二楽章は三拍子のアレグロ。それからまたテンポが遅くなって、最後はまたアレグロという構成。37年の作品だから威勢が良いことこの上なく、何度もダースベイダーが登場する。ちょっと笑っちゃいそうな曲だが、ヴァイグレはあくまでも真面目に入魂の指揮で力演したので、思わずその迫力のある演奏に引き込まれた。CDで聞いたら途中で飽きてしまいそうだが、生で聞くとやっぱり面白い。

家に帰って軽い食事。キャベツのサラダ。ツナのペースト、クリームチーズとパン。白ワインをスプリッツァーにして飲んだ。






読響の三大協奏曲

2021-08-15 11:05:54 | 音楽
8月14日(土)の昼に、東京芸術劇場で読響の夏の恒例、三大協奏曲を聞く。三大協奏曲とは、メンデルスゾーンのヴァイオリン、ドボルジャークのチェロ、チャイコフスキーのピアノ(1番)というポピュラーなもの。このシリーズでは、毎年、有望な若い新人が紹介されるので、楽しみにしている。

東京芸術劇場の入り口では、なぜか手荷物検査が行われていた。聞くとオリンピックのためらしいが、オリンピックは終わったものの、これからパラリンピックなので、まだ延々とやるらしい。空港の手荷物検査などに比べるとはるかに簡単なもので、バッグの開けさせて中をのぞくだけ。あんなおざなりな検査ならば、やってもやらなくても同じだろうと思うが、やってます感を出すのが目的なのだろう。

ここでもいちいち検温と手の消毒を求められるのがうっとうしい。新型コロナはエアゾル感染が主体だというのが現時点での衆目の一致するところだろうから、手の消毒などはいい加減にやめたらどうかという気がする。アルコールをつけると手の脂分が失われてがさつくので、アルコール消毒の後はすぐに手を洗ってクリームをつけることにしている。

場内に入ると、ほぼ満席でちょっと驚いた。緊急事態宣言の前にほぼチケットが売り切れていたのだろう。それにしても、満席でのコンサートというのは、1年半ぶりぐらいの感じ。やはり50パーセントではなく、100パーセントのほうが、演奏するほうも聞いているほうも気分が盛り上がる気がする。

ところで、指揮者はドイツの歌劇場で活躍中の小林資典、ヴァイオリンは医学部出身で医師免許を持つ石上真由子、チェロはまだ高校生の北村陽、ピアノは東大情報理工の院を出た角野隼斗という、いずれも新進気鋭のメンバーばかりだ。おまけにコンマスも新たに読響のコンマスに就任した林悠介だった。

最初のメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を弾いた石上は、奇をてらったり、超絶技巧を見せびらかすことのない、きわめて端正な演奏で、さわやかですっきりしていてとても好感が持てた。

ドボルジャークのチェロ協奏曲を弾いた北村は、若いのに物おじしない堂々たる態度で、力強く若々しい演奏ぶりだった。この作品のオーケストラの編成は大きいので、チェロの独奏部分に木管などがかぶさると、時としてチェロの音が聞こえなくなることもあるが、北村はしっかりとした音で、オーケストラに負けない演奏ぶりだった。

休憩15分を挟み後半のチャイコフスキーのピアノ協奏曲1番を弾いた角野は、自由奔放な演奏ぶりで、それゆえにオーケストラとの息が合いにくくなる場面があったように感じられた。また、ペダルを多用するため、音が濁る印象もあった。プログラムを読むと、ブルーノートにも出演しているとのことなので、即興やジャズに強いのだろうが、クラシック系との弾きわけが必要かもしれない。

帰りはスーパーで買い物して家で食事。茶豆を前菜代わりにして、水菜のおひたし、サーモンのムニエルという、和洋折衷的なメニュー。飲み物はフランス産の白でシュール・リー。