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オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新版「日本流行歌史」上を読む

2017-12-03 20:09:24 | 読書
社会思想社から出ている「新版 日本流行歌史 上巻」を読む。1994年の発刊で、古茂田信男、島田芳文、矢沢寛、横沢千秋の共著となっている。「新版」とついているのは、1970年に、2巻本の初版が出て、改訂して3巻本にして出し直したため。

上巻は1868年から1937年までで、明治になってから日本が本格的に戦争に巻き込まれるまでの間となっていて、面白い時代区分だが、実際の記述では戦後まで触れている部分がある。

400ページ弱の本で、3編に分かれていて、歴史的な記述、歌詞、ヒット曲一覧と索引になっている。歴史記述は125ページ、歌詞が210ページ、一覧と索引が50ページという構成。歌詞と一覧を読まずに、歴史記述だけならば125ページなので簡単に読める。

昭和の時代、特に戦後の流行歌については本も沢山出ているが、明治、大正の時代の流行歌としてどんなものがあったのかは類書が少ないのでイメージが湧かなかったが、この本を読んでおぼろげながら雰囲気を掴むことができた。この本を読んでよくわかるのは、いわゆる流行歌というのは、明治・大正の時代と昭和になってからは、ずいぶんと異なるということだ。

それは、レコードの普及、ラジオの放送開始、トーキー映画の登場などが、昭和初期に集中して、それまではメディアミックスによる流行歌というのは存在しなかったものが、その時代に一気にそうした新しいメディアが花開いて、いろいろな流行歌が登場したことがわかる。

それ以前には、マスメディアのようなものが存在しなかったので、流行歌というのはすべてクチコミの世界だったのだ。

一方で、昭和初期は日本が本格的に戦争に突入していく時代とも重なり、この本では丁寧に時代背景が説明されているが、そうした時代のムードが歌にも大きく影響していることが良く分かる。

それにしても、昭和初期には様々な唄が一挙に登場したので、それを整理するのは大変だが、この本では各ジャンルに分けてうまく記述している。

実際に聞いているのは、この本に出てくる歌の半分くらいしかないことに気づいたので、ちょっと音源を探して聞いてみようという気になった。