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今見ると臨場感のある「13デイズ」

2017-10-03 10:55:14 | 映画
2000年の映画「13デイズ」を観る。1962年のキューバ危機を描いた作品で、ジョン・F・ケネディ大統領、弟のロバート・ケネディ司法長官、そして主演のケビン・コスナー扮する大統領補佐官が、危機に立ち向かう。監督はロジャー・ドナルドソン。歴史家アーネスト・メイのキューバ危機を描いた本に基づくとなっているが、映画では本当の歴史とは異なる部分もあるようだ。

発端はアメリカの偵察機U-2が、キューバにソ連製のミサイルが運び込まれて、設置されつつあるのを撮影したところから始まる。ただちに関係者が集められて、対処方針が議論されるが、ミサイルの射程は、ほぼアメリカ全土の大都市をカバーしていて、原爆が搭載可能との報告で、ほぼ2週間で設置完了して、発射可能となることから、それまでに爆撃を実施して破壊が必要というのが、軍部を中心とする多数意見だ。猶予期間は13日間しかないわけだ。

大統領は決断を迫られるが、判断を誤れば第三次世界大戦を引き起こしかねない問題だから、本当に信頼を寄せる弟と、同じくアイルランド系でカトリックを信仰している大統領補佐官の三人で議論する。会話の中で「あの爆撃をしようという連中は『八月の砲声』を読んでいないんじゃないか」という台詞が何度かあるが、これは第一次世界大戦がなぜ始まったかを解析した本で、出版が1962年だから、出たばかりの話題の本だという設定だろう。

大統領が悩むのは、爆撃で当面の危機は排除できるが、それがきっかけとなり、ソ連はベルリンを占拠したり、米国も報復をせざるを得なくなり、戦火がどんどんと拡大するのではないかという点だ。

結局、いろいろとあって、米国はキューバを海上封鎖して、ソ連との非公式な取引によって、キューバからミサイルを撤去すれば、米国もトルコからミサイルを撤去することで合意し、危機は解消する。

緊迫したやり取りや、国連の安全保障理事会での応酬、信頼できるかどうかわからない裏ルートからの情報などがいろいろとあって、タイムリミットに近づいていく。我々は歴史を知っているから、まあ、安心してみていられるのだが、現実の世界でこうしたことが再び起こるとどうなるだろうという恐怖心がある。

当時は、ケネディ大統領が信頼できる相談相手として選んだのは、弟のロバート、そして同郷の補佐官だ。

似たようなことは、現在でも北朝鮮をめぐって起きているわけだが、トランプ大統領は娘婿のクシュナーと相談するのかなあ、などと考えながら見ていると、結構リアリティがあって、怖い映画だった。